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オーガニック給食って何?
私はオーガニック給食を広めたいな、と思って活動してるのですが、「オーガニック給食」って、一体何?というところは、明確な定義はありません。
何を目指しているの?
私自身は、子どもを産んで、この子に本当に良いもん食わせたい!という思いが出発点でした。自分が作る家庭料理はもちろんですが、保育園や学校の給食も、本当に良いものにしたい、という思いです。
もちろん、既に日本の給食って、世界一だと思います。
栄養士さんが栄養満点で楽しい献立を考えて、衛生環境が整った調理場で調理員さんが作った給食。三大栄養素が摂れるのはもちろん、郷土料理や世界の食文化も楽しめる素敵な給食ばかりです。
イギリスで食料政策の修士課程で学んでいた時、アメリカの給食ってひどい状況だ、日本の給食と家庭科の授業は素晴らしいぞ!という授業があって、あれ、はるばるロンドンの大学院で、自分は何を学びに来たんだっけ、という思いになったことがあります。
ただ、もっと子ども達にとって、良い給食にしたいな、という思いがあります。
有機農業は、地球温暖化対策にもなるし、生物多様性も守れる、水も土も守ることができる農業です。最近はパタゴニアがリジェネラティヴ農業(環境再生型農業)を激推ししていますが、環境を良くしていける農業を、給食で食材を使うという形で応援したい、子ども達に良い環境を残してあげたい。
農薬や添加物、動物用医薬品、海の環境ホルモン、ミネラル不足、勉強するほど、日本の食の現状は、心配なことが増えていきます。子ども達に、本当に安全なものを食べさせてあげたい。
土を触ったことがない、食べ物がどうやってできているか知らない子ども達がいる。そういう子達は平気でご飯を残すし、この先、自分達の心と体を作る食を選ぶ力を培うことができるのか。給食が地域の農業とつながることで、学校給食がどうやって作られているのかを子ども達が実際に体感することができる、日々、これはあそこの農家さんが作ったんだ、と感じながら食べることができる、そんな食育に繋がる給食がいい。そして、地域の農家さんも子ども達の顔を直接見て、この子たちのために作ろうと嬉しくなる、そんな関係が地域にできたらいい。
子ども達が生きる環境と、子ども達の健康を守り、食育に繋がる給食。
それが、私が目指すオーガニック給食です。
有機JASとの関係は?
日本には有機JASという規格があって、第三者機関の認証を得ないと「有機」や「オーガニック」と名乗ってはいけない決まりになっています。ただ、名乗る対象は農林物資である米とか野菜とかなので、「給食」は規格の対象外。有機JAS食材100%でなくても、「オーガニック給食」という呼び名を使うことは、有機JAS違反にはならないので大丈夫です。
JONAという認証機関が、オーガニックレストラン認証と同じ考え方でオーガニック給食の規格を作って認証している例はあります。
千葉県いすみ市では、学校給食のお米は100%有機米ですが、お米は全て有機JASか特別栽培米とのことです。いすみ市は、市で給食用に買い上げて余った分は、JAを通じて他で売っているので、有機JASは有効ですし、JAS認証のものを高く買い上げることで、農家さんにJAS取得のインセンティヴを高める素敵なモデルになっていると思います。
呼び方は地域それぞれ
ただ、やっぱり市町村などの行政が「オーガニック給食」という呼び名を使うことはなかなか難しいようです。化学農薬・化学肥料を使用していない農家さんでも、有機JAS認証を取ってない方がたくさんいるので、そこの食材を使っている場合に、有機と言えないよね、とか、有機食材は、米だけとか、人参だけとか、米も月1回だけ有機のものを使うとか、有機JASの食材100%を使った給食はなかなかないので、「オーガニック給食」って呼べないよね、とか、慣行栽培の人との対立を生みたくないよね、とか、真面目な行政官が真面目に考えてしまうと、「オーガニック給食」と呼べなくなってしまいます。
「オーガニック給食」は、地域によって、いろんな名前があります。
・素性のわかる安全給食(東京都武蔵野市境南小学校)
・ときめき給食(大阪府泉大津市)
・エシカル給食(ナチュラルスクールランチ、神奈川県葉山町)
・ほんまもん給食(大分県臼杵市)
などなど
「オーガニック給食」という名前にこだわるべきか?
オーガニック給食って、単に有機JAS食材を使うということだけではないのです。そして、「オーガニック」「有機」も、単に化学農薬・化学肥料を使わないという意味ではないのです。
「オーガニック」って、IFOAM(国際有機農業運動連盟)が4つの原理を示していますが、単に農薬を使わないことにとどまらない意味があります。オーガニックビジネス研究所のレムケなつこさんは、「全ての生命を幸せにする仕組み」だと解説しています。
「有機」という言葉は、一楽照雄さんが、「天地有機」という言葉からとったものですが、「自然」の摂理に則ることが基本との思想で、経済合理的な近代農法ではなく、「豊かな地力と多様な生態系に支えられた土壌から生み出された健康的で食味の良い食べ物を通して, 自立した生産者と消費者が密接に結び付き, それにより地域の社会や文化の発展と,安定した永続的で幸福な生活の実現を図ること」という考えがあります。
https://core.ac.uk/reader/199685080
「オーガニック」も「有機」も、JAS規格に留まらない本来の広い意味があるので、そこを大事にしたいなと思っています。
もちろん、「オーガニック」という言葉を使うことで逆に対立が生まれるなら、違う呼び方をどんどん使っていけばいいと思うのですが、本当は「オーガニック」ってもっと広い意味があって、目指しているのはもっと広いところなんです。
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有機農業が大事にしているのは、人と人との信頼関係。
有機農業は提携という直接の関係が基本の考えがあります。
顔が見えない市場流通を前提にすると、有機JASが必要なのですが、人と人との信頼関係があれば、規格はなくてもよくなるのですよね。
私が今年9月にお話を聞いた韓国のハンサリム生協では、PGS(参加型認証システム)を大事にしていて、そこでは、例えば、有機農家さんのじゃがいも畑に、空中散布の農薬がかかってしまって、有機認証は取れなくなるんだけど、生産者と消費者との信頼関係の中で、そこを理解した上で買うという関係がある。
慣行から有機に転換中の農産物も、JASがなくても給食で支えることができる。
農家さんと給食の調理現場、そして子どもたちが直接繋がる関係ができて、虫食いの小松菜でも感謝して受け入れられ関係ができるのも、オーガニック給食の魅力だと思います。
「オーガニック給食」の定義や呼び方は、まだまだこれから色んな議論が出てくるかと思いますが、今時点で私が目指したいものはこんな感じです。