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或る恋の話 第4話

『これは或る企画の応募作品』

まずは素敵なこちらからどうぞ❀
第1話 第2話 第3話

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今日は天気が良い。
きっと彼が来る。
いつもサイダーばかりの…

名前は確か…そうそう安住君。
前に同僚らしき人が彼をそう呼んでいたもの。

そしてきっと彼女も来る。
私から丸見えだが、彼からは見えない位置で何時も何だが、まごまごしている人。

確か名前は…詩織ちゃん。
そう呼ばれてるのを聞いた。

頭上の雀が
「ねぇ!来たよ!」
と教えてくれた。
わかってるわよ。

あら?
今日は2人で揃ってきたわ。

私は目の前にやって来た2人の会話に耳を澄ませた。

「あ、安住さん…あの…この前の案件の時は…スミマセンでした。」

「この前?……あぁ!青山さんまだ気にしてたの?大丈夫!前にも言ったでしょ?カンペキを目指さなくてもいいんじゃない?」

「でも…いえ、有り難うございます。」

なるほどね。
2人は上司と部下なんだ。
どうりで詩織ちゃんの方が遠慮がちなわけだ。

でも、うん、そうね。

このシュワシュワした感じ。
きっと、それだけではないのね。

詩織ちゃんがさっき選んだサイダーがきっと答え。

私は続いてお金を入れる安住君をじっとみた。

安住君は爽やかなイケメンだけれど、ちょっと鈍そうよねぇ…。

そして、半歩後ろで立つ詩織ちゃんに目をやると…サイダーを握り締めていた。

詩織ちゃんの視線が安住君から外されることが無いのを見た私は、やれやれとため息を付く。

これは、一肌脱ごうかしら?
「塗装を剥がすってこと?」
うるさいわね。ちがうわよ!

頭上の雀にツッコミを入れつつ
私は私に集中する。

安住君にはちょっと悪いけれど、私は乙女の味方なの。まぁ、結果きっといいでしょう?

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会社の後ろの小さな公園にある自動販売機にあなたと私はいた。
お昼休みも終わりかけ
「疲れたからサイダーでも飲もうかな」 
とあなたが言うので
「買ってきましょうか?」
と言ってみた。

「あ!青山さんもサイダーのみたいんでしょ?いいよ。一緒に買いにいこうよ!」
なんていうものだから、おもわず
「はい」
なんて言ってしまった。

直属の上司となって暫く日が経った。

その背中を沢山みた。
やっぱり素敵で、誠実で、頼りになって………

私を自動販売機に誘ったのは、私が先日案件でミスしたのを気にしているのを知っていたからに違いない。

優しい人。

『カンペキを目指さなくていい』ってまた言ってもらっちゃったなぁ……。嬉しいなぁ……。


ガコンッと音が聞こえ、彼が少し屈む。

一緒に自動販売機でサイダーを買う。
そんな事も、ちょっと嬉しい自分が子供っぽくて恥ずかしい気がする。

「あれ?おかしいな…」

「どうしたんですか?」

振り返った彼は困惑した表情で手に取った物を見せてくれた。
それは彼の大好きなサイダー。
ではなかった。

「サイダーのボタン押したはずなのに…缶コーヒー出てきた…しかもブラック……」

「えっ!そんなこと…あるんですね」

苦いのは苦手なのかな?
何時もは大人で頼れてカッコイイ爽やかなサイダーの人だけれどなんだか可愛いく思えて、
私はこっそり心の中で微笑んだ。

「………あ!そうだ!私が買ったサイダーと、その缶コーヒー交換してくれませんか?」

何故か自然にそう言った。

「え?でも、青山さんもサイダー飲みたいんじゃないの?最近、飲んでるよね?好きなんでしょ?」

私のこと、見てくれてるんだ。


でも、別にサイダーを好きなわけじゃないよ……。


「いいんです。何時も色々貰ってるから……たまには安住さんにお返し…させてください。」

私の心が、まるでサイダーの泡みたいに弾けていた。
甘くて爽やかで、透明な気持ち。

「有り難う。じゃあ青山さんにサイダー奢ってもらおうかな」

あなたは爽やかな笑顔でそう言った。

「奢りって言っても…缶コーヒーもらうんですけどね?」

手渡された缶コーヒーを私はギュッと握りしめる。

何時か、もらった名刺の番号に仕事で落ち込んでない時にも、電話をかけられる私になりたい…。

目の前で開けられたサイダーが陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

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松下友香さんが素敵な企画をしてくれたので参加しました(*´艸`*)
考えてるとき、とーても楽しかったです!!

私は自分が恋心激薄なので自動販売機目線も書きました。笑
自動販売機はこの私『koedananafusi』の化身です。
恋は応援する側が楽しいの。

自動販売機が商品を間違うなんてご法度な気がしますが、乙女のために丹田に力を込めて缶コーヒーをだしました。笑

他の方の作品がどれも素敵で、私の文書なんて…という感じですが参加できて嬉しかったです。

この度は素敵な企画を本当に有り難うございました✨

或る恋の話の二人と松下友香さんに幸あれ💕

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koedananafusi
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