ストック写真に花火が詰まってるんだよ。
花火。
なんだかすごく好き。
火薬の匂い。
響く音。
人のざわめき。
明るい夜。
引越し前に住んでいたところの花火はほぼ真下みたいなところで見れて、空いっぱい花火だった。
たまに見返して『この喧騒から離れた時の空気好きだ』とおもったりする。
いい夢を見終わって、心地よくさめるような帰り道。
過去の日記を漁っていたらみつけたよ。
1場面にしてあるけど、これも本当は長編にしたかったやつ。
《過去の1場面物語。題名はない。》
『結局、死んだほうが諦めなきゃいけないんじゃない。結局、私はずっとこのままなんじゃない。』
彼女の絞りだす声が夏の夜に静かに溶けだす。
『それでも、私は私が居た事覚えていてほしい。だから、だからこうして頑張った。間違いかもしれないって何度も思って、何度も…………でも、やらない選択肢なんてなかったんだよ。』
僕は、自分の無力さを思い知る。
僕は生きた人間で、どうしょうもなく子供で、持ち合わせているものが少なすぎたんだ。
打ち上げ花火が夏の夜を照らす。
あんなに美しいのに、たった一瞬で散っていく。
まるで、彼女の命みたいに。
命を咲かせて、儚く散った一人の少女を
僕は救うことなんて出来やしないんだ。
それでも、これだけは、
『僕が』
大きな花火が弾けて光る。
人の喧騒から離れた丘の上には
僕と彼女の二人きり。
『僕が覚えてる。君と過ごしたコノ夏を。今日に散ってく花火のこと。』
出来る事しか出来やしないんだ。
無力な僕の精一杯を君に渡すことしか出来やしないんだ。
『覚えてるよ。忘れないよ。ずっと…』
『君を好きになった僕の事を。』
彼女の瞳から流れる美しい水滴に
花火の色が映し出され
それは今までみた景色の中で一番綺麗だと、そう思った。
今年は見れそうな気配がするよ。
燃え尽きていくその光の下で
誰かたちの熱い夏は始まるのかな…
誰かたちの熱い夏は終わるのかな…
ほんの一部の花火ストック。
ほんの一部の1場面物語。
どれもきらきら消えていく。
けれどこうして遺ってる。
夏っていいよね。
夏も好きだよ。
(どうして予測変換は残すじゃなく、遺すを出してきたのかな。え、私の押し間違い?まぁいいや。残してみて遺るかもしれないもんね)