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ガリガリ限界OLを救った国、インド
ある日、noteから通知が届いた。
「1月中に投稿すれば、7か月連続投稿!」
三日坊主になるかな~と思いながら始めたnoteも、
気が付けば半年も連続投稿していたのか。
連続投稿なんて意識していなかったのだが、
こんな煽られ方をして、黙っているわけにはいかない。
せっかくなら12か月連続投稿を達成したい!
さて、2025年最初のnote。なにを書こう。
2月に海外旅行へ行くのだが、今回は行き当たりばったりの旅で
特に下調べもしていないので、書くことがない。
趣味の宝塚歌劇のことでも書こうかと思ったのだが、
わたしなんかが語るなんておこがましい…と怖気づいて書けない。
うじうじ悩んでいたとき、いつか書きたいと温めていたネタを思い出した。
わたしが命を救われた国、インドでの経験を書きたかったのだった。
7年前のことなので、記憶が曖昧なうえ、
レジャー旅行ではなく、会社からの研修旅行だったので
有名観光地などにはほとんど行っていない。
つまり今まで書いてきた旅行記とは、異なるテイストになるが
インドという魅惑の国での出来事を記録してみよう。
ガリガリ限界OLになった理由
まずは、わたしがガリガリ限界OLになった理由を書こう。
心身の不調は上司からのパワハラが原因だった。
無視されるのは序の口、ありもしない噂を流されたことも度々あった。
くぅ~許せん!!!
パワハラ上司以外、同僚や他部署の上司は本当にいい人たちで
わたしの味方になり、守るためにたくさんの方が動いてくれたので
いまでも本当に感謝しています。
パワハラに思い悩んでいたある日、
突然耳が聞こえなくなった。
過度なストレスが原因による低音難聴だった。
その後も、朝が来るのが怖くて眠れないまま夜を明かし、
やっとの思いで乗った通勤電車で涙が止まらなくなったり、
身体が鉛のように重くなって動けなくなってしまったり、
会話の内容がまったく理解できなくなり、
ひとの声が耳から滑り落ちるような感覚を味わったこともあった。
ごはんものどを通らなくなり、呼吸が苦しくなるほど痩せて
そろそろ限界かも…と思い始めたときには、適応障害になっていた。
わたしが上司の癇に障ることをしたのかと思い悩んでいたのだが、
結局、上司の個人的な事情による八つ当たり、嫌がらせだった。
なんやそれ!当時のわたしはそんなことを知らず、とても苦しんだのに。
いま思い返しても、はらわたが煮えくり返りそうだが
当時のわたしは反応する気力も失っていた。
そんなある日、突然降ってきたのがインド研修。
2018年夏、心身ともに限界を迎えたガリガリ限界OLはインドへ向かった。
いざインドへ
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インド研修の主な目的は、
取引先へ訪問、現地視察、現地駐在員との交流、
そして最後に異文化コミュニケーション研修というのがあった。
わたしの個人的な目標はただひとつ。
「生きて日本へ帰る!」
会社の意図なんて考える余裕はなく、この目標のみを胸に
インドでの数日間を生き抜こうと心に決めていたのだが、
実際は、インドがわたしの命を救ってくれたのだった。
インドの日常編
インドの洗礼、水問題
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約10時間のフライトを終え、到着したニューデリー。
現地駐在員と合流して、空港近くのホテルで
夕食を食べたのだが、ここでまず現地駐在員に教えられたのは、
絶対にミネラルウォーター以外の水は口に入れないこと!
水道水を使って洗ったであろう生野菜や、
口をゆすぐときも、シャワーの水も危険とのこと。
よくインドに行くと、「おなかを壊す」というイメージがあるが
その原因が水にあるらしい。
実際、前年度のインド研修に参加した先輩たちは
全員下してしまったらしく、帰りのフライトは地獄だったと聞いていたが
ここまで警戒すべきものだとは、びっくり!
レストランの氷も警戒した方が良いらしく、ドリンクを頼むときは
必ず語尾に「No Ice Cube!」と伝えたうえで、厨房を覗くよう言われた。
そこまで疑わなくても良くない?と思ったが、
言われたとおり厨房に消えていくウェイターさんを見て納得。
しっかり氷を入れている!!!
遠くから「No Ice Cube~~~!!」と叫ぶと
へらへらしながら、スプーンで氷を出してくれる。可愛いやつめ。
これはインドで入ったレストラン、マクドナルドすべてで
同じ事件が発生したので、もはや最後の方は期待してしまっていた。
一度間違えて「No Ice」と伝えると、灼熱のインドで
ホットティーが出てきたことがあったので、「Cube」も伝えた方が安心。
シャワーの時もぎゅっと口を閉じ、
歯磨きのときもミネラルウォーターでうがい、
そして魔法の呪文「No Ice Cube!」のおかげか、
だれひとりお腹を壊すことなく、元気に生還した。
もしインドに行かれる方は、魔法の呪文「No Ice Cube!」をお忘れなく!
ちなみに、駐在員はインドの水に慣れているので
特に警戒せず、インド人と同じように生活しても平気らしい。
(駐在開始当初は、苦しんだようだが)
だが困ったことに、インドの水に慣れ過ぎて
日本に帰って来た時、日本の水道水や生魚のお寿司を口にすると
水がきれいすぎて逆にお腹を壊してしまうらしい。人体の不思議だ。
乗り心地最悪のバス
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現地滞在中に乗っていたバスは、
見た目は普通の観光バスだったものの、少し変なところがあった。
もともとトラックだった車体を改造したバスだったようで、
簡単に言えば、トラックの上に箱とシートを取り付けたようなものらしい。
あとから取り付けられたシートだからか、海外仕様だからか
座面がとても高く、身長150cm台半ばのわたしでも床に足が届かない!
足がブラブラして、快適とは言えない乗り心地。
さらにインドの道路は舗装されていない道も多く、
激しくガタガタ揺れるのでシートベルトをしても
吹き飛ばされそうだったので、もうひとりの小柄な同期と励ましあいながら
シートの上に体育座りをして踏ん張る日々だった。
もともと車酔いしやすい同期は、あまりの乗り心地の悪さにダウンし
訪問予定地をキャンセルせざるを得ないほど。
酔い止めは多めに持っていた方が安心だろう。
毎日頻発する停電
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インドでは、頻繁に停電が発生する。
わたしたちも滞在中、1日に2~3回は停電した。
たいていは数分で解消するのだが、まれに10分以上止まることも。
最初は「停電!大変だ!」とソワソワしたが、
慣れてるインド人は、停電に気づいていないのか?というほど
暗闇でも変わらずに動き続ける。
部屋の電気が消えるくらいなら、全然いいのだが
ホテルのエレベーターが止まり、数分間閉じ込められた同期もいた。
会議中に停電が発生した時も、動じるそぶりも見せず
話し続けていたのには、びっくりした。
かく言うわたしたちも、2日目からは停電しても
構わず話し続けられるようになった。人間の慣れってすごいな~。
インドの子どもたち
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インドでは、たくさんの子どもたちの姿も見た。
ボロボロのスクールバスに、定員以上と思われる人数が
ぎゅうぎゅうに詰め込まれていたり、
大人に挟まれ、バイクを3人乗りで移動する姿もよく見た。
ちなみに大人でも3人乗りは普通にいる。
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そして最も印象的だったのが、物売りをしている子どもたちだ。
信号で車が止まると、どこからともなく物売りの子どもだちが
車の間に飛び出してくる。
そして車の窓を叩き、インド国旗や果物を買ってくれと言ってくる。
ほかにも、小さい輪っかに身体をくぐらせたり、ダンスを披露し、
チップをくれと窓を叩く子たちもいた。
あの日から7年。
彼らは、今ごろ10代後半を迎えているだろう。いまどうしているだろうか。
いろんな野良動物がいる国
インドでは、街中に様々な動物が歩いている。
わたしが滞在中に見たのは、犬、牛、豚。
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普段は犬が大好きなわたしでも、
インドのガリガリで、目がギラギラした野良犬は恐ろしかった。
ある観光地で、野良犬がずっと後ろをついてくるので
恐ろしくなってバスに戻ろうと、バスとバスの細い隙間に入ると
正面から野良豚がやってきた。
細い隙間で、豚と犬に挟まれ絶体絶命か!?と思ったが
幸いバスのドアが開いていたので、危機一髪。
豚と犬に挟まれるなんて、一生ない経験だろうな~。
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犬と豚以上に、牛は何度も見た。
インドはヒンドゥー教徒が多く、
ヒンドゥー教では牛は神聖な生き物なので、常に牛さんファースト。
街中で渋滞に巻き込まれて、窓の外を覗くと
牛さんの大群が道を占領してるなんてことも。
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そしてヒンドゥー教は、殺生を禁じる教えがあり、
どんな生き物にも優しい。
ただインドには、あらゆるところにハエや蚊がいる。
日本人はついつい手で払ったり、蚊だったら反射的に叩いてしまうだろう。
実際、わたしの同期もレストランで蚊を叩いてしまった。
すると周りのインド人たちは、「マジで?信じられない!」という顔で
びっくりしていた。
一方、インド人は虫を見つけると電気が流れているラケットで
ハエでも蚊でもジュっと焼いて退治する。
叩くのはダメだけど、電気で焼いてしまうのはOKという感覚なのだろうか?
インドの文化編
カースト制度の名残
インドでは、かつてカースト制度があり
生まれながらに、職業や結婚相手を制限されていた。
現在、カースト制度は廃止されているのだが、
いまだにカースト制度の名残を感じた。
「この仕事に就くのはこの階層のひと」「自分はこの階層じゃない」
という意識が、深く根付いている様子だった。
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空港でカートを返す場所が分からず、
近くにいたスタッフに「カートはどこに返せばいいの?」と尋ねると
「それは自分の仕事じゃない。
そこらへんに放っておけば、その仕事の人が回収するよ。」と言われ
びっくりしてしまった。
日本であれば、自分の担当の仕事でなくても
分かる範囲で質問に答えたり、手伝ったりする人が多いと思うが、
この国では、カースト制度の名残のせいで
「この仕事はわたしの階層にふさわしい仕事ではない!」という
意識が強くあるようだ。
反対に言えば、日本人の感覚で何気なく「この仕事をお願いね」というと
「そんなことをわたしにお願いするなんて!」と
相手のカーストによっては、失礼になる場合もあるということだ。
そんな意図はなくとも、相手の文化背景を知らなければ
相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるということは、
日本でもあり得ることなので、とても勉強になった。
ティーボーイの絶品ミルクティー
カースト制度で思い出したのが、ティーボーイだ。
「ティーボーイ」という言葉をご存じだろうか?
その名の通り、お茶を淹れてくれる男性なのだが、
彼らはそれを主な仕事としている。
一昔前の日本であれば、お茶くみは女性の仕事なんて言われていたが、
インドでは、男性の仕事だ。
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インド人は、お茶をしながらおしゃべりするのが大好き。
仕事中でも、1日に数回ティーブレイクの習慣があり、
そこで出会ったのが、ティーボーイであった。
会議中、ティーブレイクの時間になると
ティーボーイがポットやカップを載せたカートを押して登場し、
ひとりずつに、何を飲むか聞いてくれる。
チャイor紅茶で、コーヒーは基本的にはない。
紅茶を選ぶと、ストレートと伝えない限りミルクティーが出てくる。
ティーボーイの淹れるミルクティーは絶品なのだ。
間違いなく人生最高の一杯だった。
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あまりに美味しかったので、淹れてくれるところを
近くで見せてもらったのだが、特別変わったことはしていない。
普通のアールグレイのティーバックに、お湯を注ぎ
温めてあるミルクを注ぐ。最後にお砂糖をたっぷり入れ、
カップのふちで、ティーバックをスプーンでぎゅっと絞って完成。
これといって特別なことはしていないはず。
強いてあげるなら、最後の一工程だろうか。
ティーバックを絞ったら、渋みが出てしまうのでは?と思ったのだが
これが美味しさの秘密としか思えない。
それ以来、何度同じように淹れても
ティーボーイのミルクティーほど美味しくならない。
やはりプロの成せる技なのだろうか。
いつかまたティーボーイのミルクティーが飲みたい。
紅茶ではないが、ドリンク絡みでもう一点。
暑い国なので、訪問先の会社でもホテルでも
ウェルカムドリンクの代わりに、必ずペットボトルのお水をくれる。
誰もが知る有名企業のインド支店へ視察に行ったとき、
お水に続いて、黒い液体の入ったグラスを置いてくれた。
アイスコーヒーだと思い、飲むと吹き出しそうになった。
なんとコーラだったのだ。
思わずびっくりして、どうしてコーラなのか聞いてみると
暑い国なので、スカッと爽快感のあるコーラが恋しくて
みんな常飲しているらしい。
日本だったら、取引先に訪問してコーラを出されたら
なかなか変わった会社だな~と思うかもしれないが、
郷に入っては郷に従えということなのだろう。面白い体験だった。
日本人女性がモテる国
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インドでは、どうやら日本人女性がモテるらしい。
そもそも日本人自体が珍しいようで、観光地などでは
男女問わず「一緒に写真撮って~!!」と囲まれることもあった。
日本人は小柄で色白なので、可愛く見えるそうだ。
ニコニコ手を振ってくれるだけならまだしも、
熱烈にアピールしてくれるインド人男性もいた。
バスで移動中、信号待ちで隣にローカルバスが停車。
ローカルバスのなかのインド人男性と目が合うと
ニコニコとこちらに投げキッスしてきた。
ローカルバスの中にいたほかのインド人男性たちも
わたしたちに気づくと、次々投げキッスをしてくれる。
いま考えれば、ありがとうと手を振り返せばよかったのだが、
当時のわたしたちは何が起こったのか分からず、
びっくりして固まってしまった。
バスが動き出すと、見えなくなるまで車内を走って
熱烈な投げキッスを送り続けてくれた。
あんなにアピールしてもらえることは、二度とないだろう。
もしかすると、あの中にマハラジャがいたかもしれない。
惜しいことをしたな~。
わたしが滞在中に出会ったインド人たちは、
ニコニコと親切で優しく、控えめな印象であった。
みんな小顔で、大きく零れ落ちそうなほどキラキラした瞳で
美男美女ばかり!!本当に美しい人たちだったな~。
巡礼者専用便
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「巡礼者専用便」という飛行機が運航されているのはご存じだろうか?
インドにはヒンドゥー教のほかに、
イスラム教を信仰している人たちもいる。
イスラム教の信者が「ハッジ」と呼ばれる、メッカ巡礼の旅に行くために
利用する巡礼者専用の飛行機が運航される期間がある。
インドから帰国する日、ニューデリーの空港で
保安検査に並んでいると、男女別に分かれるよう指示された。
指示に従い、女性のレーンに並んでいると
「あなたはこっちに来て」とひとりだけ違うレーンに招かれた。
同期に見送られて、向かった先は
どうやら巡礼者専用便に搭乗する女性たちが多く並ぶレーンだったようで
わたし以外はみんな全身真っ白の装束を身にまとっていた。
え~!このままわたしも巡礼者専用便に乗せられたら大変だ!と焦ったが、
保安検査が終われば、ほかの人たちと合流できたのでひと安心。
こんなことがなければ、知ることのできなかった文化だろう。
インドのなにがわたしを救ったのか?
インドから帰るころには、心がすっきりし
ごはんも食べられるようになってきた。
トランジットの間、羽田で食べた卵かけご飯ほど美味しかったものはない。伊丹空港に迎えにきてくれた家族も表情が変わった!と驚いていた。
インドでは当然、パワハラ上司はいない。
翌朝起きてもヤツに会うことはない。
そう思うだけで心が軽くなり、久しぶりにぐっすり眠れた。
でもわたしが元気を取り戻した理由はそれだけではない。
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ここまで読んでお気づきだろうが、インドと日本は、常識が全く異なる。
だからわたしはインドに救われたのだ。
インドでの経験は、未知の連続。
日本での辛い日々とは全く違う刺激的な数日間を過ごしたおかげで、
心がリフレッシュでき、出国前とは見違えるほど
元気を取り戻して帰国できたのだが、それ以上に
インドで出会った人たちが、わたしに素晴らしいことを教えてくれていた。
インドで出会う人たちは、外国人なので
当然、わたしたちとは文化背景が異なる。
普段生きている自分の小さな世界で見れば"非常識"なことも
彼らの文化では"常識"かもしれないし、そういう考え方もありだな!と
当たり前のことだけど、日常生活では
なかなか気づくことができない学びを与えてもらった。
これは外国人だからという話ではなく、
人間ひとりひとり育った環境や文化が異なるので、
日本人に対しても同じように考えることができる。
相手の文化背景に目を向け、相手の常識や思考を尊重し
広い心で受け入れることが、うまく生きるコツなのだろう。
帰ってからも、上司のパワハラは続いたが
インドで身につけた異文化を受け入れる寛容な心で
「そういう文化背景の方だから、仕方ない」と割り切れるようになった。
もちろんパワハラには変わりないので、許すことはできないが
以前よりはダメージを受けにくくなった。
これがわたしにできる最大限の防御だろう。
あのタイミングでインド研修がなければ、今ごろどうなっていただろう。
インドは、わたしを救ってくれた国だ。
タージマハルにも、ガンジス川を見ることも叶わなかったが
実り多き、思い出深い旅になった。
世界を広げたい方は、ぜひインドに行って
異文化に身をゆだねてみてほしい。
帰ってきたら、きっと心がほぐれて豊かな人生になりますよ!