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『人生を変えたコント』の感想
以前より気になっていた本、せいや(霜降り明星)の半自伝小説『人生を変えたコント』を読了した。
"5万字の原稿を手書きした"という現代のデジタル化社会に反するおもしろエピソードがあるものの、その熱量がじかに伝わってくる文の数々は、一気読みできるほどだった。
でも、私には一気読みできなかった。
話ごとに手を止めて噛み締めないと、その内容があまりにリアルで涙が止まらなくなりそうだったからだ。
語彙力に乏しいが、本当によかった。
買って、読んで、泣けて、笑えて、また泣けて、同じ時代に生まれて、よかった。
本編ももちろんだが、"石川 晟也"が書いた本編読了後のエピローグは、今後の人生を楽しむための教訓になりうるような内容が書かれており、ここだけでもせいやの人柄を感じられる。
1回でも"自分がなぜ生きているのか"を自問したことがある人、いじめられた経験がある人、いじめた経験がある人、まだ善悪の判断が不十分な年齢の学生、お子さんを持つ人……
こんな人たちが読むべき作品だと感じた。
著者であり主人公である"イシカワ"は、とにかく責任感が強く、周囲を誰も悪人にしないための努力を惜しまない。
この一本筋の通った試行錯誤、屈しない姿、これをいじめにあっている渦中、想像を絶する脱毛症になっている状態であっても1人冷静に考え、周りの人たちを誰ひとり不幸にしないために"高校1年生"が"笑い"を武器に奮闘する姿が、あまりに美しい。
何度も彼のトークの中で"いじめられてた" "禿げてた"と笑い話にしていたのを聞いたことがある。
しかし、その背景や唐突さ、リアルさを描写してくれている。
壮絶な中で、彼の元来の人柄や美学を自分自身で守りつつ、今こうして様々な創作物を生み出し、世に出てくれていること、1人の人間としての人生を公開してくれたことに感謝せざるを得ない。
『人生を変えたコント』に人生を変えてもらえそうな本でした。
本当に出会えてよかった。
せいやさん、10万部おめでとうございます。
この本が、いろんな人に伝染しますように。