歴史小説「Two of Us」第4章J‐5
~細川忠興とガラシャ珠子夫人の生涯~
第4章 Foward To 〈HINOKUNI〉Country
J‐5
1600年、慶長七年八月の終わり。
大阪玉造細川屋敷の大炎上後、ガラシャ珠子はイト(清原マリア)を連れて、淀川を北上した。
大坂城の外堀から淀川へ抜け出して、木津川で待機していた廻船問屋の渡し船に乗り換え、伏見の船宿に辿り着いた。
着のみ気ままな出で立ちとはいえ、矢絣(やがすり)の着物に武家らしい女袴を履いていた。
後年、幕末志士の宿として知られた船宿〈寺田屋〉で、細川邸では女官であったシモ(霜)と落ち合った。シモは、この船宿で配膳の仕事に就いていた。
挨拶もそこそこに、シモと再会出来た感無量の珠子。落ち着いて出迎えたシモが伝える。
「お方様。そのお姿では、間を置かずに武家の姫様と判ってしまいます。白ハチマキと袴をまず、お取りになってください。
シモが今から町娘のお召し物をお持ちいたします」
「ありがとう。恩に着ます」
あなた珠子とイトは、矢絣の着物で一旦くつろいだ。
「お方様。今晩はここでお休みになりましょう。明日、木津川を登りまして、桂川付近で、オクと落ち合います。
このイトにお任せくださいませ」
「承知いたしました。申し訳ないです。お願いいたします」
翌朝、二人はシモに連れられて、物集女街道(もずめかいどう)から沓掛(くつかけ)の一つ手前の四ツ辻で、街道茶屋に待たせていたオクと、落ち合う。
ここから先は
531字
¥ 200
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?