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歴史小説「Two of Us」第2章 J-3

~細川忠興父子&ガラシャ珠子夫人の生涯~
第2章 明智玉のお輿入れ~本能寺の変


J-3

  正面上席から、珠子どのが花を生ける姿を、ただただ眼を細めて眺めている、信長様
「これはこれは、愛い(うい)華じゃ。のう❔藤孝殿よ❔」
 此方にお顔を向けもせず、信長様は己れに回答を振って来られた。
「いかにも」
 己れが回答は相変わらず、当たり障りはない。

 未だ、足利家側用奉公衆である己れには、それでも「殿」と付けて呼んで下さるが、今回の婚姻関係が成立すれば、己れも「万吉!」と呼び捨てかもしれない。

 口角を持ち上げて笑顔を作ってから、明智家とは反対側の脇席に座する。すると、次の間から嫡男の忠興が音も立てずに現れて、己れの隣下座に落ち着いた。
 本人同士も招集されたとは知らなかったが、自身は段取りが一つ省けて、信長様には今日初めて「かたじけない」と感じた。

「おお。忠興殿。
まもなく珠子どのの生け花が完成する。そちらにて、待たれよ。
藤孝殿。その山桜のしだれ咲きの枝は、忠興殿が持参したものゾ❔
 十兵衛。珠子どのは、その蒼い桔梗の花を持って来たのじゃ。まだ季節には早いが、青々とした蕾のうちに吉備国から取り寄せたそうじゃ。

 明智の家紋の花を授ける。
 つまり珠子どのは、藤孝殿が嫡男与一郎忠興殿へと嫁がせる時期が、来たようじゃ。 のう❔ 十兵衛❔」

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