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きっかけは17歳
人生の転機は1年間の海外生活。そのきっかけを聞かれたら、私はアメリカのコラムニスト、ボブ・グリーン氏の本「17歳」と即答するだろう。
この本とは、私が16歳の時に出合った。図書館で何気なく手に取ったピンクとグリーンの綺麗な表紙の本は、1964年のアメリカの若者の日々を描いた日記風エッセイ本だ。ピンクが春編、グリーンが秋編の2冊。数ページで心を撃ち抜かれた。図書館で立ち読みして、帰ってすぐに両親に「17歳の誕生日プレゼントにこの本を買って欲しい」と頼んだ。この年でこの本と出合えたことに運命めいたものを感じた。
海外ものが好きだった父の影響で、子どもの頃好きだったテレビ番組は「名犬ラッシー」「大草原の小さな家」「奥様は魔女」「スパイダーマン(アニメ)」など。幼い頃から、自分の生活とは言葉も様子も学校生活もまるで違う世界に興味津々だった。
そして、この「17歳」の中で自分と同世代の少年がアメリカで経験している毎日に、もっと大きな衝撃を受けた。テレビで見るよりも、文字で読む方がなぜかよりリアルに感じた。
受験を控えてはいるものの、自分が何をしたいのか全くわからなかったあの頃。まだ情報が少なく、自分が見ている世界だけが全てだった17歳の頃。そんな私に揺さぶりをかけるように「もっと広い世界を見ようよ」と動かしてくれたのがこの本だった。私の中にはいつしか「海外で全く違う文化に囲まれて生活をしてみたい」という夢が生まれた。
大学は英語学科を受験し、大学卒業後はアルバイトで貯めたお金で、ニュージーランドに飛んだ。
子どもの頃から、どんどん湧いてくる疑問を見てみぬ振りをしながら周りに合わせることに必死だった私は、ニュージーランドで「たった一つの常識に縛られる必要はない」ことを悟った。現に、私がそれまで「こうあるべき、こうするべき」と信じてきたことのほとんどが、そこにはなかった。それでもみんな普通に暮らしている。この当たり前に私は、日本を出て初めて気付いた。
みんながしていたとしても、自分がどうしても苦しいこと、嫌なことは断ってもいい。みんなが出来ていて自分だけが出来ないと感じても、自分を責めたり絶望したりしなくてもいい。私には私の生き方があるはず。それをゆっくり見つけよう。海外でそれを知ることになったのだ。
帰国後、自由なマインドで味わう日本の空気はまた一味違った。あれから30年以上が経ったけれど、私のマインドは自由なまま。いろいろな職を転々とした後、我が子のために作った小さな英語教室を経営しながらマイペースでのんびり暮らしている。
少しシミがあるピンクとグリーンの本2冊は幾度もの引越しを経て、今も本棚で私を見守っている。
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