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ポジティブ洗脳② 〜親を洗脳〜
前回の心の準備編に引き続き、「褒め方」に進もうと思っていたけれど、大事なことを忘れていたので、「親を洗脳」と題してお届けする。
うちの子ってこんな子
子どもが産まれたら、この子にこんな風になって欲しいと願うのは親の愛情。子どもの幸せを心から願ってのことだから。
でもその気持ちとは裏腹に、子どもには元々の性質がある。それは性格、こだわり、趣向...親の手の届かない、子どもの脳や心に生まれつき刻まれているもの。
私がお伝えしたいのは「それらが子どもの中に存在する」ということ前提で考えていただきたいということ。即ち、自分がコントロールしたくても出来ない部分が子どもの中には既にある。と常に心に刻んでいただきたいということだ。
子どもが赤ちゃんの頃は「そんなことわかってる。この子らしく生きていってくれたらいい」と思うだろう。でも既にこの時点で「この子は他の子よりよく泣いている」「この子は夜なかなか寝てくれない。お隣の子はよく眠っているのに」と他の人と比較して不安になったり恨みがましく思ったり...が始まる。
そう、これがどんどん今後広がっていくのが「子育て」だ。
だから今お伝えしたいのは、「うちの子にはこういうところがあるね」と思う「だけ」に留めておく方法。それが「うちの子」だとまず受け入れること。
目的が変わる
もし親が「子どもの性質は親の心がけで変えられる」と思い込んでしまったら、悲劇の始まり。子どもはありのままの姿を一番好きな人に否定されることになるからだ。それこそ、その子自身を否定すること以外のなにものでもない。そして他の誰かみたいになれ、とはいかに酷な話ではなかろうか。
親が「数学者になって欲しい」と願っても、子どもがそこに興味がなければ難しいだろう。まずは子どもが「数字に興味を持たない」事実を受け止めよう。でもどうしても諦めきれなかったら何をすべきか。
なんとしてでも数学の力を伸ばしたいから、厳しく指導するのか、言って聞かせるのか、有名な数学塾に入れるのか。
そこでの判断基準を「この子は数字に興味を持っていない子」前提で考えると、そこに無理やり厳しく数字を押し付けたところでどんどんその子の興味が離れていくことは確実で、そこに更に無理を強いるとどちらかの心が折れてしまい親子関係に影を落とすことになる、ということはご理解いただけるだろう。では「数字に興味がない子」を数字に向かわせるにはどうしたらよいか、答えは明確。
子どもの気持ち
「数字って楽しい」という気持ちを持たせることだ。
無理やり引っ張って数字を見せて結果に対して叱ったりダメ出ししたら、大人だって嫌になる。子どもだからってそれが許される訳が無い。
ゲームや外遊び、テレビに子どもが夢中になるのはただ「楽しい」から。それだけだ。数字を楽しいと思えたら、希望は見えてくるだろう。
そこで親が新しい指導法を学んで「楽しさ」を伝える努力をすれば、万事OK。それが時々うまくいっている人たちがテレビなどで紹介されている人たち。親が笑って楽しそうにしている姿が子どもは大好きだ。それを「数字」と結びつけるから楽しみながら伸ばすのだ。
しかし大抵の親はうまくいかなくて、途中で諦める。なぜか。
私は英語講師だからそれがよくわかる。私も英語が話せることの楽しさを我が子に伝えたかった。でもご存知の通り、いくら教えるプロだからといっても我が子を教えるのは、他のご家庭同様かなり難しいのだ。
「教えること」は難しい
我が子を教えることの難しさは、宿題一つとってもご理解いただけると思う。「上手になって欲しい」と思うあまり熱が入り過ぎたり、何度説明しても伝わらないことに苛立ったり。これが仕事なら相手がわかるまで教え方を変えて伝えようとするし、上達した方に目が向いて励ましたり褒めたりと上手に指導出来るのに、きっと家族だからの甘えは実は親の方なのだろう。とにかくうまくいかない。
私自身も、我が子3人に家庭で英語を教えることは諦め、教室生としてそれぞれをクラスに入れた。教室の中で笑い、楽しそうにしている私の姿が一番のモデルになることに気付いたのだ。
プロに教わるということは、そういうことだと思う。自分が指導するのは難しいと思ったら、その楽しさを存分に伝えてくれる指導者を探し、伴走してもらうことも大切。
また、音楽や釣りなど趣味の世界ではよく親が好きなことを子も愛することがある。やはり子どもは大好きな人の楽しそうな姿、笑った顔が大好きで、それがモチベーションに繋がるのだということだ。
困りごとについて
これまで何か「伸ばしたいこと」へのアプローチについてお話ししてきたが、最後に一番大切なことをお伝えしたい。
最初に示した「ありのままの子どもを受け止める」ことの大切さは、その子が困りごとを抱えた時に、明暗を大きく分ける。周りの子と比べて「人並みに仕上げたい、それが親のあるべき姿だ」と信じている人は、子どもが出来ないことを無理やりさせる、という選択肢を取る。結果その子は出来ない自分を責め、やがて自分のことを放棄するだろう。
同じ困りごとを持っていても、それも「その子の一部なのだと受け止める」気持ちがあれが、その子の心に寄り添うことができる。
「出来ないの、しんどいね。じゃ、どうしたらいいだろうね」と一緒に考えてその子ができる範囲や、人と助け合えることを考え出すだろう。その子に残るのは「出来ない自分を責める気持ち」よりも「何か出来る方法を探す力」。それが人生で一番大切な力であることは言うまでもない。
「受け止めること」から生まれる寄り添いや創造、生きる力にもっと多くの親が気付いてくれたらいい。人と比べてありもしない優劣を競うよりずっと自分自身も幸せで、幾つになっても人は成長するんだということを子育てを通して感じることが出来るだろう。
幸せな親になろう。その第一歩は「受け止めること」
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