[映画感想] ドント・ウォーリー・ダーリン
フローレンス・ピュー主演のスリラー作品。
映画「ブラック・ウィドウ」で大好きになったフローレンス・ピュー。彼女の主演作とあらば観るしかないよ!と公開初日に映画館へ。
観終わってからしばらくはドキドキして考えもまとまらなかったけれど、すごくいい映画だった!映画を観てる最中も鑑賞後も、色んな思いが巡る。こんな映画を観た日には友人と夜通し語り合ったりしたいのですが、あいにく叶わないので感想記事を書くことにします。
あらすじ
1950年代のとある街。フローレンス・ピュー演じるアリスは、レトロモダンな装いのその街でキラキラした暮らしを送っている。愛情深い夫がいて安全で何不自由ない生活、隣人たちとの関係性も良い。絵に描いたような幸せな生活。
しかし、ある出来事をきっかけに彼女の平穏な生活が徐々に崩れていく。
こうして改めてあらすじだけ読むとありきたりな雰囲気だけれど、なんてったってフローレンス・ピュー。彼女がやる意味のある映画であり、アリスを演じる俳優が彼女でなければこんなにも響かなかったかもしれないとすら思う。
※以下、若干のネタバレを含む感想になりますので鑑賞前の方はご注意ください。
感想
あたりまえを疑うこと
映画を観終わったときに、自分という存在の認識が揺らぐ感覚があって不安になった。一人で鑑賞したこともあって誰かに確認できない分、それは強く残ったのだと思う。そして「あたりまえだと思ってることは本当にそうなのか?」と色々なことを疑いたくなった。
この感覚、何だか覚えがあるなぁと振り返ってみると映画「サトラレ」だ。あの映画を観た時に感じた自分もそうだったらどうしようという不安。それに加えて、自分の生き方・考え方に対する疑問。あれは本当に自分の頭で考えたことだった?誰かの受け売りじゃないのかな…。欲しいと思っていたあれは本当に自分自身が欲しいと思ったのかしら…などと色々な思いが巡って鑑賞後は頭の中がぐちゃぐちゃに。
あたりまえを疑うというと陰謀論などに繋がってしまいそうですが、もっと日常的なことで。今の時代、失敗が許されなかったり正解を選ばないといけない空気がある気がする。そんな”普通”や”常識”にとらわれて苦しい思いをしている人にはこの映画観てほしいなと思った。
設定のよさ
1950年代のとあるコミューンというこの舞台設定がとてもよかった。古き良き時代の”しあわせ”を2022年に描く意味。善し悪しではなく、それを通して何を感じるのか問われている気がした。
性別に関係なく、今と昔では求められる社会的役割は違ってきていると思う。それが良いか悪いかは置いておき、寿退社をして専業主婦になり家庭を守るというのが一般的な女性の生き方だった時代がある。
本作のアリスも専業主婦であり、掃除・洗濯・料理と家事をこなし習い事や友人とのショッピングなどを楽しむ姿が見られる。
そんな彼女たちの交通手段は巡回バス。決められたルートを走るそのバスは、社会のルールから外れることが許されないというメタファーのようにも感じる。
形は違うけど存在する暴力
この映画の最大の謎が明かされたときに、その圧倒的な暴力を目の当たりにすることとなる。その謎については言及しないけれど、形は違えどそれは確実に存在しているよなと思った。それを自ら望んで選ぶ人もいると思うけど、私自身はその暴力と闘う強さを持っていたい。
フローレンス・ピュー
彼女を好きな理由は、底抜けに明るい雰囲気と芯の強さを感じるところ。
そして走り姿がとても良い。
本作でも観ることができるのだけど、彼女は足が速い。そしてその走り姿は強く逞しく美しい。そして泣きたくなる。映画の内容ともあいまって彼女に希望を重ねてしまう。
色んなことを繋げて考えてしまう性格なので、ボディ・ポジティブを体現し、SNSでの発信などでも”自分のままでいる”ことを公言し大切にしている彼女がこの映画の主演であることに大きな意味を感じた。
思い返すと…
なぜそこまで?と気になったシーンと不謹慎にも笑ってしまった2つのシーンがあったんだけど、最終的にはちゃんと理由があったんだなと腑に落ちてよかった。
最初のきっかけとなるアリスの行動とその動機
笑ってしまった2つのシーン(壁/ラップ)の謎
最後に
ユートピアスリラーという世界観にはハラハラドキドキさせられるし、謎解きサスペンス要素を欲する人も楽しめる映画になっていると思う。また社会について思いを巡らせることが好きな人にもオススメです。
公開前に映画の内容よりもゴシップで騒がれてしまった本作だけれど、そういうの一旦忘れて観てもらいたいなぁと感じた映画でした。
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