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三浦 さかな
2021年11月28日 10:59
ある少年が、一頭のクジラに出会った。 月光の欠片が海面をきらきらと漂う、静かな夜だった。 少年は真っ暗な海底のような表情をしていた。 クジラのほうも、月のように穏やかな瞳で少年を見つめていた。 少年が口を開いた。「人間の世界はつまらない。窮屈で、貧しくて」 少年の言葉が泡になって上っていく。「もう、嫌になったんだ」 少年は、目を伏せうつむく。「あなたは何もかも知っているん