🇱🇰#1 森に飲み込まれゆくホテル Heritance Kandarama
深夜、スリランカのバンダラナイケ国際空港に着くと、予約していたガイドさんが「目にジャムが入った」という謎の理由で現れず、その友達のAshanという人が私たちを出迎えてくれた。
「ほらね」って感じでジャムの写真が送られてきたときは「いやいやいや」と生真面目日本人は思ってしまったけど、ひとまずAshanは運転がゆっくりだし、優しそうな人だったので、それ以上追求するのはやめておいた。
(その後スリランカに滞在中、何度か友達のガイドに代わるということが起きたので、スリランカのガイドというものは友達同士で都合に合わせて出動するということみたい。日本の当たり前は世界の当たり前ではない。)
約3時間、深夜のドライブ、何も見えない真っ暗な車窓に意識が遠のく。
普通ドキドキするような場面でも、安心して眠れるのが私の便利な機能。笑
ちいさな島国スリランカのほぼど真ん中に、ジェフリー・バワの名作『ヘリタンスカンダラマ』(Heritance Kandarama)という宿はある。近づくにつれて、虫の鳴き声と動物の鳴き声がどんどん大きくなって、徐々に目が覚めた。
「この道は象の通り道だ」とAshanが運転の速度を緩める。時速15kmで真っ暗闇の森の中をそろりそろりと進む。「野生の象は凶暴だから、出会ったら道を譲るしかない。」時には何時間も足止めをくらうこともあるらしい。
突如始まったナイトサファリ🐘
怖い、と、ちょっと見てみたい・・・という気持ちが行ったり来たりしながら、無事にホテルに到着。結局象は現れず。
車から降りて、空を見上げると、圧巻の星空!!
そして目の前に、巨大な国立公園か何かの入口のような、ホテルの入口が。建物だけど建物じゃない。扉や壁はなく、大きな岩を後ろに背負ったフロントではこんな時間なのに3人のスタッフが出迎えてくれた。
暗い森の中の廊下を進むと私たちのお部屋があって、壁には猿のイラストのステッカーが貼ってある。インドはヴァラナシの宿を思い出す⋯。とりあえず窓を開けちゃいけないんだということだけ把握して、へとへとだったのですぐにベッドに吸い込まれた。
朝目が覚めると、視界は昨晩想像した以上に、森だった。
まだ寝てるの?とさっそくお猿さんのお出まし🐒
部屋の外に出て、やっと今自分が置かれている状況がわかった。
ホテルは森に侵食されて、木や石や崖がホテルの一部になっている。
廊下の壁は地層も感じるほどの大きな岩、プールの底も岩、ちょっと迷うと森の中。大きすぎる石が廊下のど真ん中から突き出していて、ふつうに通れなかったりする。(岩優先)
もちろん猿も鳥も虫もみんな一緒に過ごしている。
”自然を味わえるホテル”とよくガイドブックには書かれていたけれど、ここまでくるともはや”こちらが自然にお邪魔しているだけ”だった。
その日は朝たっぷり雨が降って、午後はその分晴れた。
夕方、猿の大家族がこっちこっち🐒ととっておきのスポットに連れて行ってくれて、大きな夕陽を一緒に見た。
私たちがスリランカを旅先に選んだきっかけは、ジェフリー・バワという人の建築を巡るため。スリランカの自然や気候、文化を色濃く反映した手法が特徴的で、今や世界のリゾートホテルで当たり前になったインフィニティプールだってバワが生み出したもの。
代表作であるこのホテルは、バワがヘリコプターで視察してこの場所に建てることを決めた。「緑に覆われ、いずれ自然と一体化するようなホテルにしたい」というバワの願いは今確かに、私の目の前で叶えられていた。
虫が入ってくるとか、空調が効かないとか、暗いとか、東京にいたら気になるようなことが、何も気にならない。むしろ、その居心地の良さったら。
おしゃれな音楽が流れていなくても、ぴかぴかに掃除されていなくても、心はずっと穏やかだった。
朝ご飯も夜ご飯も森の中で🌿
特に夜ご飯は事前予約が必要な、洞窟ディナーが本当におすすめ。
想像を超えてくる大きさの洞窟の下でプライベートディナー。ぽたぽたと雨のしずくが岩から滴り、ゆらめく炎の灯りが料理を照らす。
一品一品出てくるたびに「オイシカッタデス?」って聞いてくれるウエイターさん。心配されてるのかと思うくらい。スリランカの人たちはみんなすごく優しい。
一泊目にしてすでに、スリランカの虜になりつつある。
旅立つのは名残惜しいけれど、ここにはきっといつかまた来るだろうな、そんな気がしていた。
その頃にはどのくらい森に飲み込まれているんだろう…🌳
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