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ポニーとのふれあいを通して動物園獣医師の仕事を知ろう!@秋田市大森山動物園

秋田市の自然科学学習館が主催し、秋田市大森山動物で2024.5.12(日)13:00〜15:30に行われた
『どうぶつサイエンスⅠ』
テーマ:どうぶつのお医者さん

という企画に参加したので、レポートを残しておく。
今後同じような企画に参加してみたい、動物好き、獣医師の仕事に興味がある、動物園のバックヤードが気になる…そんな方々に届くと嬉しい。

馬が私を呼び、私が馬を呼ぶ。

これまでも同様の学習企画は何度も行われているようだが、タイミング良く興味ある企画の存在に気付いて応募・当選できたのは今回が初めてだった。
参加したことのある人は勝手がわかっているから大丈夫だろうが、初めてなのに具体的にどんな内容なのかは全く事前に知らされないまま当日を迎え、受付へ。ドキドキ。

テーマは動物のお医者さんだというので、動物病院で説明を受けながら仕事の様子を見学する感じを想像していたが…実際は、ある1種類の動物に焦点を当てて体の特徴やふれあい方を学びつつ、動物病院の見学を含めて動物園獣医師の仕事の解説を聞くという流れのようだ。
そしてなんと今回焦点を当てる動物は…

ポニー!!!

ウマ!!!

ワタシ的に大当たりすぎて変な踊りをするところだった(グッとこらえた)。
ちなみに前回はモルモットだったらしい。
それはそれで当たりだったので参加したかったな(馬と兎と鼠が好き)。


ミルヴェ館での座学(1)

●獣医師の仕事について

まずは市政広報番組で動物園獣医師が取材を受けた際の映像を観て、動物園獣医師がどんな仕事なのかをざっくり理解する。

大森山動物園の獣医師は飼育との兼務。
獣医師としての健康管理や治療に加え、掃除・給餌なども行うし、このようにお客さん向けの動物解説も行う。

獣医師の一番の仕事は「いつもと違うところがないか気付いてあげること」

そのために、病気や怪我の治療だけではなく、普段から飼育員とコミュニケーションを密にして、いつもと違う様子はないか観察したり、便や血液を調べて「いつもの状態がどうであるのか」データを蓄積したりしている。

●ポニーの体の特徴や習性について

ステージ1.ポニーを知る

ミルヴェ館内のあちこちに掲示してあるポニーの体に関するヒントを読んで、穴埋めクイズに答えながらポニーについて学ぶ。

★ポニーはウマの仲間であり、体の大きさでウマ/ポニー/ミニチュアホースなどと呼び分けているだけ。ポニーという種類の動物というわけではない。アラブとかサラブレッドとかは種類ではなく「品種」。

★目:目が顔の横についているから、振り向かなくても350°くらいは見える。逆に真後ろ10°くらいは見えないので、真後ろから急に近づくと驚いてしまうので気をつける。

★耳:耳を動かす筋肉がたくさんついていて、前後左右に自由に動いてよく聞こえる。感情も表現する。耳がいいので、大きな音が苦手。声をかけるときは静かに。

★臆病なので、急に触られるのが苦手。視界に入るところで名前を呼んだり声をかけたりしながらゆっくり近づき、やさしく触る。

ふれあい体験

●実際にポニーに触れて観察

ステージ2.ポニーに近づく

参加者全員で外に出ると、馬舎からはるばる出張して来てくれたエニフさんが登場!

ニンジンを食べるポニーのエニフ

エニフさん:21歳(2003年生まれ)の女子。園にいる3頭のうち一番体は小さいが、リーダー格。もっとも頭がよく、飼育員の指示をよくきいてくれる(飼育員担当者談)。

“飼育員の指示をよくきく=頭が良い”という表現について私はちょっと引っかかるところがあるが、ここでは一旦置いておく。

ステージ3.ポニーの好きなものを探す

★アイテム1:ブラシ

【解説】ポニーは撫でられるのが好き。でもお腹はイヤだから、お腹の方まで下ろさないように!先程学んだことを活かして、静かにゆっくり横から近づくことを意識してね。

参加者みんなで順番にブラシでやさしく撫でる。

【解説】「グルーミング」といって、単純に抜け毛の掃除だけでなく、コミュニケーションや健康状態を観察する意味もある。

★アイテム2:ニンジン

「餌やり体験はありません」と募集要項にかいてあったが、実質これは餌やり体験だったかな。
子どもたち中心に全員順番に1切れずつニンジンを与えてみる。

【解説】ニンジンが好きってよく言われるけど、本当かな?結果、このように食べてくれた。しかもぜーんぶ食べてくれたということは、ニンジンが好きということになるね。
でも普段の食事でニンジンを与えることはない。甘いものは好きで、ニンジン・リンゴ・角砂糖も食べるけれど、あくまでも「おやつ」。

ステージ4.ポニーにさわる

獣医師が聴診器をポニーの心臓部(脇の下あたり)に当て、スピーカーにつないで心音を聞いてみる。
獣医師自身の心音も聞かせて比較し、ポニーの方がヒトより拍動がゆっくりであることをみんなで確認。
子どもたち中心にみんなに聴診器が配られ、順番にポニーにやさしく触れながら実際に心音を聞いてみる。
順番待ちの間には保護者や自分にも聴診器を当ててみて、ポニーの拍動とどちらが早いか確認する。

【解説】ポニーの脈拍数は1分間に20〜50回。ヒトは60〜100回くらいなので、それに比べるとゆっくり。
触ってみて暖かく感じたであろうこの体温。獣医師はポニーのおしりの穴に体温計を入れて測る。普通は37℃台といわれていて、そう聞くとヒトより少し高いと思うかもしれないが、ヒトは腋下で測るでしょう?もしヒトもおしりの穴に体温計を入れて測ったら、37℃以上あるかもしれないね。

私も本当はこれらのふれあい体験を全部やりたかったのだけれど、保護者含めて30人もいるし、なんとなく「体験は子どもだけ」みたいな空気が醸されていたので遠慮してしまった。
ただ大人でもお一人、全部体験されてる方がいたので、おそらく子ども限定ってことではなかったのだろう…(自分のいくじなし!!)

●ポニーのレントゲン撮影のようすを見学

動物病院の中にX線撮影室はあるけれど、そこに連れて入れないような大動物などはどうするかというと…ということで、ポータブルX線撮影器が登場!
これは私も初めて見た。

飼育担当者が手綱を引き、左前脚を高さ20cm位の台に乗せ、別の人が例の分厚い板をその脚の背景に差し入れて持つ。

ポニーの左前肢のレントゲン撮影

準備万端であとは撮影スイッチを押すだけ!と思いきや…
普段そんなに頻繁に使うものでもないようで、実演しようとしてボタンを押してもなかなか撮影が実行されず、慌てる獣医師。
どうやらスイッチを挿すジャックの位置が違っていたもよう。
4〜5回目?でようやくピピピッという撮影実行を知らせる音が鳴った。
ここで撮影したレントゲン写真は、このあと動物病院の方で見せてもらえるとのこと。

動物病院見学

2班に分かれて動物病院に移動。
普段見えている「森のびょういん」の正面側ではなく、裏側の入口にまわる。
いわゆる、バックヤードというやつである。

ここから班ごとに左右の部屋にそれぞれ入り、「顕微鏡画像の解説」と「レントゲン写真の解説」を交代で聞く。

我々の班は先に顕微鏡画像の解説を聞くため、顕微鏡や血液の遠心分離器(すごい高いから触らないで!と言われた)などがある部屋…室名を確認し忘れたが、病理検査室的な部屋へ。

●血球や細菌の顕微鏡画像を見ながらの解説

【解説】肉眼で見えるのはせいぜい0.1mm。細菌は0.001mm、ウイルスは0.0001mmと、とても小さすぎて目には見えない。
だから手がきれいかどうかは見た目ではわからないので、しっかり手を洗わなくてはいけないということなんだよ。
血液や傷口の組織を取って観察することもあるが、一番手に入れやすくていろんな情報がわかるのが糞便、すなわちウンチ。
イヌ・ネコは飼育の歴史も長く個体数も多いので「いつもの状態」がとうであるのかのデータがたくさんある。だから「いつもと違うかどうか」はデータ比較のしようがある。
一方、動物園の動物たちはそのようなデータがとても少ない。病気や怪我の症例はほとんどが初めて出会う症例。少しでも「いつもと違う」に早く気づけるよう、普段健康な状態のときがどうであるかのデータを蓄積しておくことが大切になる。
そのために便を採取する機会は多い。

顕微鏡画像データの解説

ここで細菌の顕微鏡画像をいくつか見せてもらう。

【解説】ボーリングのピン型のもの、丸が2個くっついたようになっているもの、球体が連なっているようなもの(連鎖球菌)、ブドウの房のようになっているものなど…ある程度は細菌によって形状が決まっていて、獣医師はどんな形のものがどんな細菌かわかっていないと、治療も投薬もできない。
それでも見たことのないようなものに出会うこともあるから、一生懸命調べる。

円形のほとんど染色されないツブツブの画像が呈示される。

【解説】では「コレは何だろう?!」となって一生懸命調べたら、植物の花粉だった。便に花粉が交ざっていることは結構あって、こうして一生懸命調べた結果なんにも悪さしないものだったということもある。

次は、ウニョウニョとおしりをふって動き回る何かの顕微鏡動画。

【解説】これは細菌でも花粉でもなくて、原生生物…アメーバとか聞いたことあるかな?そのようなもの。何らかの悪さをするのかしないのかはわからないが、たまにこういうのがいることもある。

次は、血液の顕微鏡画像。

【解説】ドーナツ型の赤血球、その中に少しだけ濃く染まっているのが白血球。
哺乳類の赤血球はだいたいドーナツ型で薄く染まって見えるが、鳥類の場合は楕円形で、中心に濃く染まる物質が残っている。
それとは違う、なんだかグチャグチャと変に濃いところがある…これが寄生虫。

寄生虫感染した鳥の血球画像データ

【まとめの座学での解説】寄生虫は寄生している動物の栄養を持っていってしまうので、寄生虫が増えると動物の具合が悪くなったり、最悪死んでしまったりする。だからこの時は、寄生虫がいなくなる薬を使って治療した。

●レントゲン写真を見ながらの解説

奥にX線撮影室がある診察室へ移動。

動物病院内のX線撮影室

中央には主に小動物向けの手術台がある。
モニタには先程撮影を見学したポニーの左前肢のレントゲン写真。

ポニーの左前肢レントゲン写真

【解説】外見で「いつもと違う」がわかることもあるけれど、さらに何がどう違うのかを調べるために顕微鏡を使って細菌や寄生虫がいないか詳しく見たり、骨など体の中のようすがわかるレントゲン検査をしたりする。
ポニーのレントゲン写真の真ん中あたりの骨がいっぱいある所は、ヒトでいうと手首にあたる。
こうして骨がいっぱいある所は「関節」といって、曲げたり回したり、よく動かすことができる。

次に、過去に撮影したカンガルーの子どもの尻尾のレントゲン写真。 

子カンガルーの尻尾のレントゲン写真

最初の1枚は痛々しく、骨が1箇所大きく斜めにズレているのがわかる。
はしゃぎ回っているうちに大人のいざこざに巻き込まれて怪我を負ってしまったらしい。

次の1枚では骨の位置が正しい場所に戻っていて、モジャモジャとした影がその横に写っている。
まさにこの手術台で切開手術を行い、そのモジャモジャは縫合した糸の影だという。

【解説】いつもとどう違うのかを知るためにレントゲン検査をするし、さらに治療した後でそこがきちんと治っているかを確認するためにもレントゲン検査をする。このカンガルーは今は元気に群れに戻っていて、もしかしたら尻尾に小さな手術痕が残っているかもしれないので、探してみてね。

次は先程ポニーのレントゲン写真を写したモニターに戻り、過去に撮影したミーアキャットのレントゲン写真を見る。

ミーアキャットの腹部レントゲン写真

獣医師「お腹の部分に何かが写っているのがわかるかな??ちょっと獣医さんじゃないと難しいかも…」
というので、私は胆石とか何かの病変があるのかと思っていたけれど、ひとりの児童が「赤ちゃん!」と答えて大正解。天晴。「すごーい!将来獣医さんになれるよ!」と褒められていた。

【解説】頭や心臓はよく見えないけど、背骨が写っていて、おそらく3〜4頭の赤ちゃんがいることがわかった。こうしてレントゲン検査をしてみないと、果たして赤ちゃんがいるのか、ただちょっと太っちょになってきただけなのかがわからないので、検査をする必要がある。

ちなみに、残念ながらこの時の出産はうまくいかなかったそう。
日々そういう生き死にと向き合うのが、獣医師という仕事なのだ。

ミルヴェ館での座学(2)

まとめの解説

動物との関わり方を解説する獣医師

★レントゲンや顕微鏡検査以前にも「いつもと違う」に気づくポイントがある。
便の状態(量/下痢)、エサの食べ方もそうだし、目に力があるかどうかで気づくこともある。

★獣医師は動物にとってイヤなことをする存在(痛い場所を触ったり、注射をしたり)。
イヤなことはなるべく少なくしてあげたい。そのためには動物と仲良くなることは大事で、それによって獣医師の一番の仕事と言える「いつもと違うところがないか気付いてあげること」ができるようになる。

★相手とコミュニケーションをとって、思いやりを持って、イヤなことはしない・好きなことは何か考えて行動する、というのは何も動物に対してだけではなく、友達など人間関係においても同じように大切なこと。ぜひ、人にも動物にも思いやりを持って接することで仲良くなってほしい。

「いつもと違う」に気づくのが獣医師の一番の仕事!
と語る、動物園獣医師

感想

写真や動画の撮影・SNSなどへの投稿に関する案内がなかったので、どうしよう…と思いながらも、制止されることもなかったので、要所要所でのみおそるおそる写真や動画を記録。
最後に自然科学学習館スタッフに確認したところ、他の参加者の顔が写っていなければ内容含めてネットに載せてもOKとのこと。
本当はずっと動画を回していたいくらいの充実した内容だった。

ずっと立ちっぱなしで休憩もなく、途中具合が悪くなって退席する子も発生していた。
運営側から飲み物の携帯や休憩を案内するタイミングがあれば良かったと思う。
私は自分の子どものフォローもせねばならず、メモをとる余裕がなかったので、この記事は記憶の限りで書き出したものだ。

時間が長いのはわかっていたし、具体的な職業に関わる内容だから注意欠如多動・癇癪持ちの小1男児には早すぎるかな…と参加を迷ったし、実際ウチの子だけでなく低学年の子は途中から疲れた〜飽きた〜でグズる子もいた。
それでもある程度動物好きの方向に育てている故、わが子に参加意思はあったし、獣医になりたいかどうかは関係なく良い経験になると思ったので応募した。

そして子より何より、獣医になりたかった過去をもつ自分自身が参加したいと思ったから、参加できて本当に良かった。

獣医さんになりたかった無職の人間の本棚

誤解のないよう、人間の子どもと動物を倫理的に同一視しているわけではないということを先に言いおいておくが、子育てにおいて「動物に対する接し方」として学んできたことを適用する場面は多々ある。
言葉だけではコミュニケーションが取れない相手をなんとかして適切な行動に導きたいと思う時、それはかなり有効だ。
「いつもと違う…に早く気づくこと」を重要と話す獣医師の言葉は、まさに人間の子育てにも通ずるところではないだろうか。

動物園発信のこうした体験学習については情報収集しているが、今後は自然科学学習館の情報収集も見逃せない。

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