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ただしい人類滅亡計画
品田遊著「ただしい人類滅亡計画」を読了したのでその感想を綴ろうと思う。
品田遊氏とこの本との出会い
その前に、この品田遊氏について少し触れておこう。
もともと、この著者のことは別の名前の方を先に知っていた。
ダ・ヴィンチ・恐山
それが彼のもう一つの名前
オモコロチャンネルや匿名ラジオなどのYouTube活動を始め、オモコロというWEBメディアでライターとしても活躍してる。
わたしがオモコロチャンネルを見始めたのは、
去年の秋頃で、それに伴いこのダ・ヴィンチ・恐山(長いので以下、親しみを込めてざんっち)の存在を知ったわけだが、数々のオモコロの動画見てきた私のざんっちへの印象は、インターネットの片隅で、ため息混じりにこちらを眺めているかと思いきや、たまに自分を犠牲にしてまでも鋭い刃を振りかざしてくる、ちょっとズル賢い、愛すべきポンコツ坊っちゃま、という感じだった。
だから、まさか小説家活動をしてるとまでは思わず、初めてそれを知ったときは、信じられないと言う気持ちとともに、こんなネットの具現化ともいえる人物が紡ぐストーリーがどんなものなか知りたい!と言う好奇心に掻き立てられた。
思い立ったが吉日と、早速本屋に駆け込んだ。
それは、すぐに見つかった。
だって、ポップな表紙に反して「人類滅亡計画」なんて物騒な文字が並んでるのだから。
否が応でも、すぐ目についた。
あと一冊しかなかったそれを、わたしは誰にも盗られまい、と素早く手にとり、レジに向かった。
さて、前置きはこのくらいにしていよいよ感想を述べていこう。
ちなみにこの著者がどんな本なのかは、ググればすぐに分かることだし、この記事はあくまで私の感想であって本の紹介ではないので、あらすじを書くことは省略させていただきたい。
感想
読み終えて思った感想、それは
「私は何主義者に当てはまるのだろう?」
物語には、10人の◯◯主義者が出てくる
例えば、悲観主義者のブルーだったり、懐疑主義者のパープルだったり。
中には、神の教えを何よりも重んずるホワイトなんてのもいて、理論が全く通じないホワイトの存在は読んでて、純粋なかわいさの中に狂気を感じてゾッとした。
そして何よりこの物語の中心人物とも言える反出生主義のブラック。
様々な主義を唱える10人の議論の中で、自分はどの主義者の意見に賛同し、どのスタンスの人間なのかを考えながら読んでいた。
正直物語の最後の最後まで、私は自分のスタンスを明らかにできなかったし、時にはパープルに染まり、時にはブルーに染まったりと、読み進めていけばいくほど、私の心はどんどんカラフルになった。
ただ、ブラック。
彼の色には染まりきれなかった。
物語の中で1番強い力を持っていたのはブラックだったと思う。
理路整然としていて、どんな意見が来ても自分なりの信念でロジカルに応える。
この中の登場人物の中で、最も私が好むタイプの人間だった。
けれども、どうしてだか彼の意見には100%賛同ができなかった。
もちろん、上手く反論出来るほどの意見がある訳でもないから、どうして人間は生まれてくるべきでないと言われて素直に頷けないか、答えがわからず正直困った。
でも最後にシルバーが言っていた。
「生まれてくることの意味をこれから探究していく機会を失いたくはないし」
この言葉を見た瞬間、私は「自分がこの世に生まれてきても良かった」とずっと思いだがっていたと気づいた。
私たちは答えを見つけ出せないから、生きてるんだ。
答えがわからないから、命を紡いでいくんだ。
反論ができないから間違い、と言う訳ではなく
反論はできないけど、それでもいい。と言ってくれている気がして、シルバーの最後の言葉にすごく救われた気がした。
何も分からなくても、生きていてもいいんだと、安心することができた。
人類滅亡を謳った著者で、自分は生きていてもいいんだと思えるなんて、こんな不思議なことがあるのかと思ったけれど、それが真実なのだからしかたない。
「ボクが感じている「これ」だけが本当」
なんて言うグレー。
全くその通りだ。
この著書を読んで、様々な価値観に触れることができた。
でもそれはほんの一部で、結局はまた自分で新たな価値観をきっと見出していく。
そうして見出した価値観でいつか人類が滅亡するべきではない理由を見つけることができると、私は信じたい。
それが私じゃない、未来の誰かだったとしても。
「正しい人類滅亡計画」↓