今夜、世界からこの恋が消えても
三木孝浩監督作品、道枝駿佑氏、福本莉子氏W主演の「今夜、世界からこの恋が消えても」を見た。
アカデミー賞でこの作品の存在は知っていて、なんとなく見てみたい作品だと思っていた。
でも、どこの配信サイトにもなくて半ば諦めていた。
でも、やっと配信された。
U-NEXT様々。ありがとう。
キービジュアルにある“消さなきゃいけなかったのは君と過ごした一年だった”という言葉の意味。
これは果たしてどういう意味なんだろうか?
あらすじ
以下ネタバレあり感想
真織の秘密
主人公の1人である真織が抱えている秘密。
それは眠ってしまったら昨日までの記憶をまるっと忘れてしまうこと。
真織が事故で前向性記憶障害となってしまったことは、彼女の両親と学校の一部の関係者、として親友泉にのみ明かされており、それ以外の人たちにはバレないよう必死に真織は頑張ってきた。
「わたしは事故で記憶障害になりました」「毎日日記を書きましょう」「起きたらこの日記を読む」部屋にはこれでもかというくらい今日の自分に向けた張り紙がされていて、真織は朝起きるたびに自分の現状に絶望し、落胆する。
ただその絶望と落胆を他の人には知られないように、明るく天真爛漫に振る舞う彼女の健気さと、可愛らしさは心にグッとくるものがある。
福本莉子氏のキャラクター性と、演技の純粋さが相待って、劇中でもすごく魅力的な人物となっていた。
心癒されるデートシーン
この映画の魅力的なポイントとしては、真織と神谷のデートがとにかく楽しそうで、キラキラしていて、お互いがただただ純粋に相手を想いあってるのが伝わるところにあると思う。
数々のデートの中でも、私がグッと来たデートは初デートのとき。
ピクニックとして公園でサンドイッチを食べた後、不覚にも真織はシートの上で眠ってしまう。
目覚めた時にそばにいた神谷に思わず「誰ですか?」と聞いてしまい、パニックになる。
いきなり飛び出していった真織を探し出した神谷は、真織から自分の記憶障害についてを打ち明けられ、別れを切り出されるも、神谷はそれを拒否する。
この一言に神谷の良さがギュッと詰まっている。
純粋に目の前にいる真織を楽しませたい、美しく楽しい思いでいっぱいにしてあげたい。
そんな神谷の優しさに真織は救われ、惹かれていった。
ここは映像の綺麗さもあるけど、登場人物の心の綺麗さと温かみも、そこにリンクしていて、劇中屈指の名シーンになっていた。
約束が破られた日
もう一つグッと来たデートがある。
それは夏祭りの日、花火を2人で見に行った日。
たくさんのデートを重ね、真織は必死に神谷との思い出を日記に書き連ねた。
でも、それは文字の上での記録であり、記憶ではない。
今こうして幸せな気持ちに浸っていたとしても、この記憶も明日になれば記憶から記録となってしまう。
楽しければ楽しいほど、幸せであれば幸せであるほど、真織は自分が辛いことに気づき、涙を流してしまう。
そんな真織の涙を神谷が拭う。
そう言って、優しく真織の手を握る神谷。
いい奴すぎる……!
このシーン花火越しの2人のキスが初々しく切なくて、セリフのエモさも相まって、胸にジーンときた。
この幸せな時間が永遠に続けばいいのに……
おそらく2人も同じ気持ちだったに違いない。
突然の別れと失われた記憶
これは最大のネタバレになってしまうのだけど、物語の最後の最後で、神谷は突然の心臓発作で亡くなってしまう。
それは本当に突然で、亡くなる直前に神谷が「心臓が悪いかもしれない」と泉に話して次のシーンではもう亡くなっている。
それまで彼の母親が心臓の病気で突然死したのは描かれていたけど、神谷自身の心臓についてはほとんど描かれていなかった。
伏線もなく(おそらく、私が見逃しているだけ?真織の部屋の張り紙が最初印刷されたものだったけど、過去回想の時は手書きだったからおや?とは思ったけど、それが神谷の心臓発作に繋がるとは思わんやん?)本当に突然だったから、鑑賞者も心の準備をする間もなく、神谷はいなくなってしまった。
欲を言えば、その辺の伏線というか、心臓が悪い描写をちょっとでもしてくれたら、もっと神谷の方にも感情移入出来たのになぁと思ってみたり……。
神谷との突然の別れ、でも彼は天に旅立つ前に真織から自分の記憶を消して欲しいと泉に頼む。
神谷の姉と、真織の両親の協力もあり、泉は神谷の記憶を自分に置き換えることに無事成功。泣きながら真織の日記を持ち去る。
ここのシーン、泣く。
どんどん日記から「透くん」の文字が消えるたび、神谷の姿が薄くなり消えていく。
あんだけ幸せで楽しかった記憶が、自分の知らない間に消えていく。
そのことも知らずに、真織は日常に戻っていく。
「今夜、世界からこの恋が消えても」
これは、真織の記憶のことだけではなく、神谷がこの世からいなくなることを指していた。
たとえ貴方がいなくなっても、私の体は貴方のことを覚えている。
大人になった真織が記憶を忘れないようになったのは、過去の神谷の記憶が起こした奇跡だったのかもしれない。
最後に
すごく初々しく、切なく、そしてキラキラと美しい今作。
(その分タクシーの乗り方とか、真織の爪が伸びっぱなしだったのは、ちょっと惜しいと感じたけど、それはきっと私が気にしすぎてるせい)
恋愛ものとしても、青春ものとしても心癒される綺麗な作品。
あの頃のピュアな気持ちに戻りたい貴方に、是非。
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