【図解】Sales Enablementとはいったい何なのか
みなさん、こんにちは!
株式会社マツリカ、セールスサイエンスラボ(Owner)、ZENFORCE講師、法人営業デジタル化協会の中谷(@midvalley2nd)です。
「セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする」をモットーにしております。
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(『セールス 中谷』もしくは『セールス サイエンス』でGoogle検索ください)
今回はSales Enablement(セールスイネーブルメント)の概念について日米から計10の書籍やレポート(論文)等の文献よりインプットしたことを自分なりに咀嚼し、共通して言われているポイントを中心に書かせていただきました。少しでも、日本の営業ナレッジの遅れを巻き返し情報格差の解消に貢献できましたら幸いです。
まだSales Enablement(セールスイネーブルメント)という言葉を聞いたことがなかった方は、詳細説明は後述しますがまずは”世界最先端の営業強化の仕組み(役割)”と捉えてください。
この仕組みがいったいどのようなもので、日本企業においても有効なのか?という点をこのあと書いてまいりますのでぜひ読んでみてください!(10分くらいで読めるかと思います)
日本の営業職を取り巻くマクロ環境
Sales Enablement(セールスイネーブルメント)という概念はアメリカで生まれ、先行して広まり、実践されてきました。
ここ数年は日本でもこの言葉を耳にすることが多くなってきたのではないかと思います。この言葉自体は、1998年頃からあると言われていますが、実はアメリカでも2017年になって爆発的に広まった新しい営業組織強化の手法です。
さて、そんなSales Enablement(セールスイネーブルメント)ですが、日本経済にとって非常に重要な役割を果たすのではないかと私は考えています。(いきなり結論)
その理由を示すために、まずは日本の営業職を取り巻く環境について触れたいと思います。
言わずもがなですが、日本のGDP成長率はこの30年低迷し続け、更には少子高齢化の現状と直近の出生率をみても今後益々厳しい将来が待っていることは明らかです。
こちら(下)のスライドのように、資本(設備投資)も労働も減速し、全要素生産性(技術革新)も停滞してきました。これらを鑑みると、テクノロジーへの投資を加速し、人材の生産性を高めることでしか、経済の再加速は見込めない、とも言えるのではないでしょうか。
営業パーソンに限って就労人口をみていっても、今後20年で20%の営業パーソンが減り、更にはマネジメントクラスに多いの40-55歳の就労人口はなんと30%も減少してしまいます。ただでさえ生産性が低いと言われている日本の営業パーソンは果たしてこのままでいいのでしょうか。
この20年後の未来に今と同等以上のアウトプットを出すには25%も1人当たりの生産性を向上させる必要があります。今後少子高齢化が益々加速するかもしれないことを考えると、それ以上かもしれません。
今さまざまな日本国内の調査結果でも営業職の業務量が多すぎることが問題視されていたりするように、多少の効率化や根性論では全く太刀打ちできないレベルであり、抜本的な変革が求められます。
こちら(上)のスライドのように試算すると明らかですが、日本の営業現場の「匠の技術」を早急に「継承」するだけではなく、「進化」させていく必要があります。そうでなくては、日本がビジネスを創り出す力は失われて行ってしまいます。
これらの問題を解消する重要な打ち手の一つが、Sales Enablement(セールスイネーブルメント)なのではと考えています。こちらを、次の章にて深掘りしていきたいと思います。
Sales Enablement(セールスイネーブルメント)とは
全世界においてSales Enablement(セールスイネーブルメント)の定義は未だふわっとしており、さまざまな解釈が存在するのが実情です。
「営業(セールス)」自体アメリカの方が数年先を行っているとよく言われますが、実はそのアメリカでも、正確な定義や機能が確立されていないと言われております。日本ではSales Enablement(セールスイネーブルメント)についてGoogle検索をすると多くの記事がヒットしますが、さまざまな解釈が存在し、全体像を理解するのはなかなか難しいのが現状のように感じます。
日本においては、Sales Enablement(セールスイネーブルメント)に関する専門的な研究や調査は(ほとんど)なされておらず、全体像を掴むためにはアメリカのレポートなどから情報を取得する必要があります。
今回はさまざまな研究結果をもとに日本企業の営業組織にとってどのようなSales Enablement(セールスイネーブルメント)があるべき姿なのかを私なりに考察してみたいと思います。(参考文献は最下部にまとめて記載しております)
Sales Enablement(セールスイネーブルメント)の定義については、2019年にCSO Insightsによって発表されたレポートにあるこちらの定義がもっとも新しく、正確に表現されているように感じました。
こちらを日本語にて表現すると(けっこう難しいですが)、
というように表現できるのではないかと思います。
一言で言うと、「狙って成果を向上させ続ける仕組み」という捉え方ができます。ただ、これではまだ抽象度が高く、構成要素がとらえきれません。なので、今回はCSO Insights, Gartner, HubSpot, IDC, その他のレポート(論文)から構成要素を読み解いていきます。
各種レポート(論文)から共通して読み取れるポイントを私なりに咀嚼して、このように図にまとめました。(※今回のnoteで一番重要な図解です!)
図にあるように、Sales Enablement(セールスイネーブルメント)を構成するものは多岐にわたります。(2つの前提と6つの要素、そしてPDCAの仕組み)
日本ではよく営業のトレーニングや資料管理ばかりフォーカスして語られることが多いですが、それはごく一部の機能にすぎません。
それでは、ここから各構成要素のポイントについて、個人的な考えをご説明します。
【大前提】
Gartner社のレポート(Win More B2B Sales Deals)にもあるように、顧客の購買プロセスや購買難易度が大きく変化している時代において営業活動のプロセスをバイヤージャーニーに最適化することは必須になります。
B2Bにおける購買の難易度が増している現代において、顧客に目を向け続けないと変化を捉えられないですし、自社目線・営業目線だけだと顧客ニーズとの乖離は大きくなるばかりです。(上図左側の△)
そして、この取り組みは片手間での取り組みでは効果が出ないことも明らかになっています。会社全体、もしくは経営管理層が強くコミットしなければ全てをやり切れず、効果は薄まります。(上図右側の△)
広く大きな定義だからこそ、優先度を上げて会社としてリソースをアロケートする必要があるのです。(なので、今読んでいただいている皆さんもこのnoteを読んでわかった気になっても成果は出ませんので取り組む場合は気合いを入れて取り組むことをお勧めします。)
つまり市場(顧客)に合わせて自社の動きを変化させ、そこに対して大きなリソースを投下するということなので、営業戦略の一部としてとらえられるかと思います。
一つ一つについて詳細を説明してしまうと日が暮れそうなので(笑)ポイントを絞ります。
これまでの自社都合で定義された営業プロセスをもとに営業活動や管理を行っていくと必ず顧客の社内意思決定との乖離が生まれ、正しく営業の状況が把握できなくなってしまいます。そうすると、営業売り上げ見込み(Forecast)が報告と実態で差が出やすくなります。
例えば、「見込み→アポイント→ヒアリング→提案、、」という売り手が主語になった営業プロセスを顧客社内の購買プロセスに合わせて再設計することができれば現場で起こっている正確な状態を掴むことができるようになります。(下図参照)
次に、CRMを中心とした顧客情報の管理、営業情報の管理、その他業務の自動化、をテクノロジーの力によってより効率的に、且つ高度な分析が可能な状態のデータとして保持することが重要です。
例えば、HubSpot社のレポート(HubSpot Research Global Sales Enablement Survey, October 2020)によると、売り上げ目標を達成できているマネージャーがそうではないマネージャーと比較した際に最も意識していたことが「案件受注までのリードタイム」だということが明らかになっています。こうした高度な分析はテクノロジーの力を活用しないと非常に難しいでしょう。(下図:成果創出イメージ ※営業プロセスは便宜上わかりやすい形で記載)
日本で言うと、この数年でThe Modelの概念が浸透してきています。
かつてマーケティング要素から既存顧客フォローまでが対象範囲であった「営業」という職種がマーケティング、インサイドセールズ、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分割されたように、営業プロセスを細分化し、それぞれの専門性を高めた組織、人材、を配置することによって目標やKPIを細分化し、専門性を高めることによって組織全体の生産性を向上させる取り組みが主流になりつつあります。
このようにして、営業組織は進化を遂げてきていますが、一方で、各役割の組織や人がバラバラに動くことによって情報連携がうまく為されなくなると言う弊害が出ています。
これらのリスクを未然に防ぐには上記の営業や顧客の情報プラットフォームとしてCRMを中心としたセールステックツールを活用して、ひと繋ぎのデータによる共通認識の上でのコミュニケーションを実現したり、組織ごとの目標をオーバーラップさせる(意図的な重複)等によってバトンを落とさない仕組みを作らなければなりません。(下図参照 ※営業プロセスは便宜上わかりやすい形で記載)
コーチング、トレーニング、コンテンツ、これらは今まで必要に応じて場当たり的に行われてきました。前述のように、顧客の購買プロセスを正確に把握していればどのタイミングで何を営業が伝えるべきか・成すべきか明確に定義されますし、顧客、競合、自社営業のデータ、が活用可能な状態で保持されていれば課題の特定や打ち手も明確になります。
例えば、担当者と合意をするために把握しなければいけないこと、提示すべき資料、管理すべき数値(活動件数、突破率、等)を体系的に整備するなど、各営業プロセスごとに俗人化を徹底的に排除した再現性並びに予測可能性の高い営業体制が築かれます。
このような取り組みを通じて成果創出した事例に関してはこちらの私の過去記事をご覧ください。
このような取り組みによって、受注確率が向上する、計画達成確率が向上する、のみならず新人の育成期間は短縮され、離職リスクも低減され、売上予測の見込みブレが低減されます。(下図参照)
セールスイネーブルメントツールを作りました
買い手の顧客とデジタルに繋がり商談情報(資料、議事録、タスク等)を共有し、その中でチャットコミュニケーションし、営業と購買をスムーズに成功させることが可能になります。
ご興味をお持ちの方は上記画像クリック先からデモ・お問合せ頂けましたら幸いです。
日本の営業が進化するために
ここまで述べてきたような仕組みを以てSales Enablement(セールスイネーブルメント)に取り組むと、見込み案件の受注確率の改善や、売上目標達成率の向上などに大きなインパクトを与えられることが明らかになっていますし、このような仕組みは世界中で60%以上の企業において導入されていると言われています。
では、日本にフォーカスしてみたいと思います。
ここまでマクロ環境からみた日本の営業組織が置かれている現状と、アメリカを中心としたSales Enablement(セールスイネーブルメント)と言う世界で最も進んでいる取り組みを書かせていただきました。
「日本の営業組織」の特性に対してSales Enablement(セールスイネーブルメント)は有効な手立てとなるのか、考えていきたいと思います。
まず、日本の営業の特性をまとめてみます。
このように、先ほどから述べているSales Enablement(セールスイネーブルメント)の概念とは大きな違いがあることに気づいていただけたのではないしょうか。「Sales Enablementはうちの会社には合っていない」と思われる方もいらっしゃるでしょうし、一方で「まさにこれを求めていた!」と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
Sales Enablement(セールスイネーブルメント)の章でも多くのポイントをあげましたが、日本の営業組織と照らし合わせた際に特に足りていないのが「型」と「データ」だと考えています。
先にも述べましたように日本では元々「営業」というマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの一部までを包含した職種として顧客対応の全てを担当するという形を基本に組織運営をしてきました。
ですから、先に挙げたような業務プロセスの細分化による連携ミスは比較的起こりづらい土壌はあります。それは、今まで日本企業の中では明確に定義されていない業務を「思いやり、助け合い」という文化によって運営してきた風土があるからです。(日本企業では、直接売上に繋がらない社内業務でも助け合いながら行うところが良さでもありますよね)
このような日本の営業組織において、顧客の行動を反映した営業プロセスが定義され、各プロセスにおける営業のスキル要件・必要なコンテンツ、が整備され「型」が出来上がれば営業スキルの俗人化解消と生産性向上に大きく寄与するでしょう。
また、日本はアメリカに比べるとIT化が7年以上遅れていると言われ、営業領域においてもテクノロジーの活用がまだまだ浸透しきっていないのが現状です。
先程の「型」を検証する手段としてテクノロジーは活用(定量化)され、さらに付帯業務を削減し、情報連携を滑らかにすることができれば効率化だけでなく新たな課題を発見し修正しPDCAを回すことができる基盤となります。
つまり、「型」によって「データ」を有効化するということです。
(私がSales Enablement文脈でいつも言っていること↓)
このように「型」と「データ」を日本的営業組織において浸透させるだけで大きく営業組織の文化は変わるのではないでしょうか。
営業の「型」と「データ」についてもっと知りたい方はこちらの私が過去に書いた記事をご参考にどうぞ。↓
さいごに
ここまでご高覧いただきありがとうございました。
今回お声がけいただき、「日本の営業をアップデートする」ことを個人的な大きなミッションとして持っており、少しでもお役立てに立てればと記事を執筆させていただくことにいたしました。
みなさま、私のSales Enablement(セールスイネーブルメント)への見解をご高覧いただき、いかがでしたでしょうか。まだふわっと定義されているタイミングだからこそ、見解を発信し、議論を重ねて日本に沿ったSales Enablement(セールスイネーブルメント)の適応方法を試行錯誤することが大切だと日々感じております。
私個人としても、Sales Enablement(セールスイネーブルメント)で圧倒的にブレイクスルーを感じた瞬間、初めてクリエイティブな営業ができたことで「なんて営業は素晴らしいんだ!」と感じ、営業がさらに大好きになりました。
ぜひ、我こそ営業大好きぞ!と言う方私とMeetyでお話しませんか?