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【第26回】転職した後に待っているキャリアとは?
ついに転職を決意した私は、あの日の夜、オフィス街の一角にあるビルの一室で、ソファに腰かけてある人物を待っていました。
「やあ、久しぶり!いつ以来かな?」部屋に入って来るなり笑顔で迎えてくれたのは元同僚で、会社を辞めた後は人材コンサルタントとして活躍していました。
「そうだね、数年ぶりになるかな」しばらく会わないうちに想像を超えてたくましくなっていたので、少しびっくりしました。
「実はね、僕もそろそろ転職しようと考えているんだ」すると友人は「お前は転職なんかしちゃだめだよ。そもそもする理由がないじゃないか」と言います。
彼は、私が30代も半ばを過ぎて、はた目には順調な会社員人生を歩んでいるのを知っていたので、強い口調で切り返してきました。
「でもね、その後いろんなことがあってね。もういいかなって思っているんだ」「そうなんだ、いったい何があったんだい?」
それからどんな話をしたのかはよく覚えていないのですが、少なくとも「切羽詰まった状況」にあることだけは理解してくれたようです。
「よし、分かった。それでは、君のライフキャリアプランを教えてくれ」「え?何それ?」
「君の将来の姿だよ。10年後、20年後に何をしているのか、何をしていたいのかを教えてくれ」
「そんな先の事なんか、考えたこともないよ。どんなに頑張ってもせいぜい半年、1年先かな」
「それじゃ、転職しないほうがいいよ。仮にしても先が大変だと思うよ。とにかく、転職は自分のキャリアプランをしっかり作ってからだね」
新卒で入社してからは、ひたすら目の前の仕事に追われる日々だったので、正直「10年、20年先のこと」など考えたことはありませんでした。
そのまま会社に留まるのであれば「社内でもっと上を目指して、将来は部長や役員を目標に!」なんて、ありきたりの答えをしていたのかもしれません。
でも、会社に見切りをつけて、転職を真剣に考え始めた自分にとって、10年、20年先のイメージなどまったくありませんでした。
むしろ、古い体質の企業風土から「一刻も早く抜け出したい」という、ある種「逃避的な気分」に支配されていた、というほうが正しいかもしれません。
「そんな先のことをイメージしないといけないんだ」「そのほうがいいと思うよ。それからでも全然遅くないからね」「分かった。今日はありがとう」
お礼を言ってから久しぶりに一杯やったのですが、まさかこの再会が自身のキャリアに大きな影響を及ぼすとは、その時点では夢にも想像できなかったのです。
次回につづく(毎週月曜日または火曜日に投稿予定)
(本文は、弊著『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』<幻冬舎ルネッサンス新書>より一部抜粋編集し、シリーズ化したものです)
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