どんぐりとしい茸
幼い時、どんぐりでコマを作って遊びましたよね。久しぶりに子供たちと昔を思い出しながら、どんぐりゴマ相撲をしました。
「わぁー、めっちゃ回る!」
「やったぁ、パパのより僕の方が長く回ったよ」
普段はゲームで遊んでいる我が子たちも、目を輝かせて自分のコマを作って夢中になっていました。どんぐりって何か子供の心をひきつける力がありますよね。実はそんなどんぐり、しい茸ととっても深い関係があるんです。
■「しい茸ってどんぐりのなる木からできるんですよ」
ファーマーズマーケットなどに出店する時には、原木にしい茸がなっているディスプレイをマモちゃんに準備してもって参加しています。意外としい茸が木からなっていることを知らないお子さんが多いので、実際に木からなっているところを見てもらう為です。時々、「それ本物ですか??」とおっしゃられるお客さんもいらっしゃいます。確かに、スーパーでパック詰めされた姿しか目にしませんし、市場に出回っているしい茸の九割以上は菌床しい茸ですので、しい茸がどんなふうにできるのか知る機会も無いのだと思います。そういう事もあるのだと思いますが「しい茸ってどんぐりのなる木からできるんですよ」と声をかけると、皆さん驚かれます。「そうなんだー、どんぐり無くなったらしい茸食べられなくなるね」なんて、会話をしているのですが、そもそもなんでどんぐりのなる木からしい茸が採れるのでしょうか。他の種類の木ではだめなのか?話している自分も良く分かっていないので調べてみました。
■しい茸は枯れた木からしか生えない
調べてみるとしい茸を含むキノコなどの菌類は、自然界の食物連鎖の役割でいうと『分解者』という役割なんだそうです。植物がいわゆる『生産者』で、動物が『消費者』、でキノコなどの菌類は、植物や動物自体やその代謝物を分解して自然に戻す役割があるというわけです。
そのキノコにも大きく分けて、二つの種類があります。『菌根菌』と『腐生菌』です。
『菌根菌』の代表的な例はマツタケです。マツタケはアカマツの根と共生関係を保ち、お互いで水分や養分をやり取りし合っています。
『腐生菌』の代表的な例はしい茸やマイタケです。腐生菌は生きている木を分解することはできず、枯れた木しか分解して栄養素を得ることができません。その為、しい茸の原木を調達する時に、伐採して『葉枯らし』と呼ばれる二か月以上しっかり木を放置し水分を抜くことが、しい茸菌を植え付ける前の準備で重要なのだといいます。
■どんぐりのなる木はしい茸にとって分解しやすい
それでは、死んでいる木であればなんでも分解できるかというと、そうでもないようです。腐生菌にも大きく分けて二種類あります。植物のセルロースを主に分解してエネルギー原とできる褐色腐朽菌と、植物のリグニンと呼ばれる成分を主に分解する白色腐朽菌です。セルロースとリグニンの違いは、動物で言うと骨格と筋肉です。植物には骨はありませんが、硬い骨格を持っています。これがセルロースです。一方細胞の中で筋肉のような役割をしているのがリグニンと言われています。
しい茸は、リグニンを主に分解する白色腐朽菌に分類されています。
杉やヒノキなどの針葉樹は、この白色腐朽菌から身を守るために、菌糸伸長阻害成分(フェルギノールなど)を持っており、分解者であるキノコによる分解を受けず、長く持ちます。その為、建物の柱などには昔から、杉やヒノキが使われているとの事です。一方、菌糸伸長阻害成分を針葉樹ほど持たない椎の木やクヌギやコナラは、白色腐朽菌により分解されやすく、しい茸栽培に適しているという訳です。
地球の生物の循環の中のしい茸とどんぐり。それぞれの役割があって、うまく繋がっていくんだという事を知り、何かだけを極端なやり方をせず、支えあっていく事が大切だと感じました。