初夏の隣人
初夏になると毎年現れる隣人がいる。モリアオガエルだ。
モリアオガエルの特徴は、樹の上で卵塊と呼ばれる泡の中に産卵することだ。卵塊中で雨を待って孵化したオタマジャクシは樹の下の池に落下し、池で成長した成体は森へと帰って行く。モリアオガエルはかつて日本中にいたが、環境の変化で数を減らしているといわれている。
初夏になると、しい茸園の園内の湧き水の湧いている小さな池で卵塊の泡をみかける。帰省時に原木の入れ替え作業を手伝うことがあるが、モリアオガエルをあちこちで見かける。比較的大きなカエルで、七~八センチメートルくらいはあるだろうか、しい茸のハウスの壁面についていたり、原木の間に隠れていたりする。
五月から六月にかけて、雄は雌に求愛し雄同士が喧嘩している場面を見たことがある。その後、カップルが成立すると、雌が雄を背負い産卵場所となる樹上へ上がっていき、大量の粘液を分泌し、後ろ脚で掻き混ぜて泡立てて、その中に卵を産みつける。(※オスの方が体が一回り小さい)泡の中の卵に雄が精子を放つのだが、他の雄が便乗しようと集まってくるため、産卵した雌を中心として団子のような状態になることもしばしば。
モリアオガエルの特徴は何といってもその産卵の方法だが、それ以外にも、樹上での生活に対応するために指の先に吸盤があることや、赤褐色の可愛らしい目も特徴だ。カエルが苦手な方もいるかもしれないが、近くでみるとよく見かけるアマガエルとは一味違う可愛さがある。
樹上に卵を産みつけるカエルは非常に珍しいらしく、日本ではモリアオガエルだけの特徴とも言われているそう。こうした環境が近くにあることが、猪名川の良さだと思うし、残していくとともに多くの方にも知ってもらいたい。