【読者レポート】三田国際学園のキャリアエスのグラフィーからキャリア教育を考える
ご無沙汰してます!
キャリアデザイン学部のなかのっちです。
長らく更新しておりませんでしたが、久しぶりに書きたいと思う内容に出会いましたので書いていきます!
今回はタナケン先生と三田国際の内田先生が執筆された「プロティアン教育」の感想になります!現在はAmazonの提供するKindleのみで閲覧可能ですが、来月にはPODでの配信も始まるようです(^▽^)/
では、本題に行きましょう。
三田国際学園とは?
三田国際学園について簡単にまとめると以下の通りだ。
2015年、戸板中学校・戸板女子高等学校から「三田国際学園中学校・高等学校」と改称し、共学化。学校改革の一環として「キャリア教育」の見直しが行われ、国内でも有数の広義なキャリア教育を実践する学校の一つ。
書籍「プロティアン教育」は、当校で現在教頭を務める内田先生が、共学化に伴うキャリア教育の改革の一途を当事者の声を踏まえながらまとめた日本初キャリアエスノグラフィーである。
三田国際学園のキャリア教育
書籍「プロティアン教育」では、三田国際学園のキャリア教育の実践と生徒のポートフォリオによる内省から報告が行われている。
※三田国際学園HPより引用
三田国際学園におけるキャリア教育実践で評価軸におかれているのは、生徒が書く「ポートフォリオ」であった。このポートフォリオを書く過程を通じて生徒は自己の内省を行っているのだろう。
三田国際学園が中高一貫校の最大の特徴である6年間の継続教育を活用したキャリア教育が行われている。中学1年では自己理解、中学2年では職業研究、中学3年では学問研究…というように自分を中心にキャリア探究が行われているようだ。
キャリア教育の実践そのものにも非常に興味があったが、本書で最も感銘させられたのは、保護者へのインタビューである。
キャリア教育の実践は学校単独では成功しないことは本書からも明白であろう。
三田国際学園のキャリア教育では、保護者の協力もある。
同級生の保護者の講演や親の職業探究など…。
三田国際学園を選ぶ保護者は従来の価値観で学校を見ていない(あるいは、進路決定をしていない)。例えば、子どもの自主的な判断に任せていたり、学校の方針(教科教育よりもコンピテンシー教育を重要視する方針)に強く共感しているなどがインタビューから読み取れた。
三田国際学園の実例を踏まえて
三田国際学園での実例を踏まえて、広義的なキャリア教育を行っていくために必要な要素が見えてきた。
①キャリア教育に精通する人材
三田国際学園でのキャリア教育成功の理由の一つは、企業出身の教員を採用したことであると思う。
今日の教員の多くは、新卒から何らかの形で学校教育に関わっている人である。公教育は非常に閉鎖的である。学校内で全てが完結する社会でキャリア形成をする教員のキャリア観はあくまで学校レベルであり、社会一般のキャリア観とは明らかな差がある。
一方、三田国際学園は中学教頭であり、本書の筆者である内田先生を始めとする民間企業出身の教員が多く採用されている。
加えて、内田先生はキャリアコンサルタントの有資格者でありながら、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科で修士課程を終えられている。
つまり、キャリアに精通した人材の存在が三田国際学園にはある。
②本気の改革意識
学校教育は改革を苦手とする。これは次項にもつながる内容である。
私が参画しているインターン先は教育サービスを提供している。サービスの導入に際し、種々聞き取り調査を行なっている中で強く感じたのが「改革を好まない」ということである。
ただこれは学校や教員が悪いわけではない。教員の過重な労働状況は明白である。これに改革が加われば教員の業務をさらに増やすことになることを考えれば、上記の状態になるのは当然とも言える。
ただ、三田国際学園には改革に熱のある教員がいた。それは前項で説明した民間企業出身の教員の存在が支えていた。民間企業で事業開発や改革に関わってきた教員が、そのノウハウを活かして三田国際学園のキャリア教育にメスをいれた。
今の学校教育に足りないのは、こうした「教育改革への熱」もあるのかもしれない。
③外部の取り込み
当校では、クラウドサービスClassiの導入を始めとした外部企業や、NPO法人の取り込みを行った。その一例として、法政大学キャリアデザイン学部における特別授業も挙げられる。
※Classiサービス詳細ページより引用
法政大学キャリアデザイン学部の特徴の一つである、体験型学習「キャリアサポート実習」は中高生向けキャリア教育プログラムを行う年間科目だ。
三田国際学園は、法政大学の付属校であるわけではないが、キャリア教育の一環として実習を2020年から受け入れている。今年、2度目となる実習に私もプログラム提供者しとて参加する。
視野を広げ、多くの学校を見てみたい。
学校単位で外部企業を取り入れる学校は少ない。今でこそ、Classiなど有名サービスの導入は増えている。ただ、それをうまく活用できている学校は少ない。
まだまだ、「外部企業を導入した」「ICT教育に関するサービスを使用している」という段階にとどまり、学校がそれを有意に活用できるところに達していない。
一方の三田国際学園は、熱量ある改革により、教員一人ひとりが導入したサービスを存分に活用したキャリア教育をおこなっているのだ。
④保護者の理解と支援
三田国際学園の改革成功の最大の秘訣はここにあると私は本書を通じて感じた。学校と生徒の間だけでなく、家庭の要素が加わったことで短期間で大きな成果を上げる結果となったのだろう。
保護者が求めるのは「学力」であろう。
そのため、多くの学校は説明会にて進学実績を大々的に語る。
早慶に〇名現役合格!MARCHは〇名!!
そんな学校説明会が散見される。ただ、時代は着々と変化してる。4年制大学に進学すれば将来が保障される安定の時代は既に終わっている。
こうした時代に求められるのは、一人ひとりのコンピテンシーなのだろう。こうした視点に共感した保護者が三田国際学園には集まっているようだ。
こうした保護者の理解は必須なのだろう。
三田国際学園では、保護者の支援にも支えられている。
私が本書の中で個人的に驚いたのは生徒の保護者による講演も時より行われているということだ。
親の講演を聞く我が子、親の講演を聞く友人…あまり想像できない。ただ、刺激的であることは確かだ。
彼らが話すのは単なるキャリアの一途ではない。なぜ今の自分があるのか。キャリアの用語で言えば、キャリアアンカーを明確にした上でキャリア形成を送ったという話が本書には書かれている。
保護者による教育方針への理解だけでなく、こうした関わり方(支援)にも三田国際学園のキャリア教育は支えられいる。
これからのキャリア教育への学び
三田国際学園のキャリア教育はこれからの日本のキャリア教育を大きく変えると確信してる。だからこそ、これから教師になろうとしている教育を学ぶ大学生、大学院生の手元に本書が届いて欲しいと願う。
私が「プロティアン教育」から学んだことを最後に話したい。
①キャリア教育は生徒を変える
まず第一に挙げなくてはならないのはこれだろう。
三田国際学園の進学実績は非常によい。これもキャリア教育の賜物であろう。
キャリア教育によって自分の軸を考えることでやりたいことが明らかになる。それにより、自分の学ぶ意義が明確となり、学習に動機付けられる。
他にもキャリア教育から得られることは多い。
今の学校教育は学力育成のプライオリティが高く、偏差値至上主義の中にどっぷりだ。いかに偏差値を上げるか、進学実績を上げるか。ここが大切にされている。
それは生徒のためになるのか?
三田国際学園の教育は、「生徒のために」行われていると強く感じた。教員のため、学校のために行われてきた教育ではない。
生徒主体の教育はまさにコンピテンシー教育のような気がした。偏差値や学力、成績を振りかざす教育のあり方は抜本から変えていかないといけない。
ゆとり教育がまた始まる。内容はかつてと異なるものの、教科教育よりも人間性をはじめとした生きる力の育成に文部科学省は舵をきった。私は新ゆとり教育と呼び、新しい教育のあり方を模索していきたいし、模索していってほしいと思う。
②一人の力では変わらない
なにもキャリア教育の改革に限ったことではないが改めて感じた。学校改革は試練の連続である。
とある教員が改革を打ち出したところで、そもそも他の教員がそれを受け入れるだろうか。さらには保護者の理解は得られるだろうか。三田国際学園には理解してくれた教員たちや、コンピテンシー教育への保護者の理解が少なからず見られた。
学校の中から教育を変えていこうとする時、理解者が必要であろう。自分が現場に入り、教育を変えていこうとする時にはこうした理解者を作ることや保護者の理解を得ることを忘れずに行いたい。
終わりに
私がキャリア教育というテーマに出会ったのは児美川先生の書籍「キャリア教育のウソ」との出会いだ。そして今、児美川先生のゼミナールに所属してキャリア教育を研究テーマに掲げている。
これからの日本のキャリア教育を変えていきたい。その想いを胸に研究を進めていく。
そして、書き残しておきたいことは、書籍「プロティアン教育」を読んで感銘したということである。
それはなぜなのか…。
私の目指すキャリア教育が既に三田国際学園で実践され始めているから。
それに尽きる。日本の多くの学校が狭義的なキャリア教育を行っている中でキャリアを広義に捉えた教育に舵をなかなか切れずにいる。だからこそ、三田国際学園のキャリア教育には感銘した。
キャリアデザイン学部での学びを踏まえ、学校教育のキャリア教育を変えていきたいという想いが強い。内田先生は、キャリアコンサルタントの資格を取り、法政大学の大学院でキャリア教育を学ばれ…とキャリア教育を軸に歩まれてきた尊敬する先輩である。
12月、三田国際学園でのキャリア教育を行う機会がある。その際に学生からいろいろなことを吸収しつつ、学ばせて頂こうと思う。個人的に一番楽しみにしている。内田先生にお会いできたらいいなぁ…とも思う。
さて、これから先、多くの学校がより広義的なキャリア教育を行っていくことが求められる。こうした中で、本書や本研究はその先行事例として有意なものになるだろう。しかし、キャリア教育の評価は未だに難しさがある。
学力という「ものさし」しかない日本の教育に新しい「ものさし」が誕生することを願いたい。
感謝を込めて
本書に出会えたこと、三田国際学園という学校に出会えたことを感謝したい。キャリアデザイン学部に進学していなかったら…と考えると、恐ろしい。自分にとって楽しいと思える学問に出会えたこと、そして学びある生活を送れていること。
環境に甘えず、これからの学びを深めていきたい。
それではまた次回に。