2024年 60冊目『人はどう死ぬのか』
うちの父は、11年ほど前の1月末日に亡くなりました。
父は会社定年後に会社から電車のフリーパスを支給されていたので、週に3回、大阪、京都、神戸の美術館や博物館に通っていました。
高齢になるとそのような施設もかなり安く利用できました。
いつものように美術館から帰ってきて、いつものように最寄り駅から母に電話をしました。
夕方でした。
母は、その電話をきっかけに夕ご飯の準備をするのです。
いつもならば10分ほどで自宅に着くのですが、20分経っても帰ってきません。
ご近所のおばさんと一緒に見に行くと、雪の中、杖をつきながらゆっくりと歩いていました。
タクシーを呼ぼうかと言ったのですが、自分で帰ると歩き続けました。
家についた父を母がバスタオルで拭き、疲れていたのでそのまま2階の寝室に上がっていったのです。
そして、翌朝、父は寝室で他界しました。
翌朝早朝に母からの連絡でそのことを知り、弟と新横浜で待ち合わせて、新幹線の中で何をしないといけないのかパソコンを並べてTODOを洗い出しました。
正月に大阪に帰省した際には、一緒にビールを飲み、お節料理やすき焼きを一緒に食べました。
その月末の話なので、本当にびっくりしました。
母が家族葬にしたいと言うので、会社のメンバーの手伝いや葬儀への参列をすべてお断りしました。
父のカバンを見ると
昼ご飯にお寿司を10皿と茶碗蒸しを食べたレシートが出てきました。
重いハイターも有ったので、家を掃除しようと思っていたのでしょう
板チョコが2枚入っていました。
ヘルパーさんに1枚。
もう1枚は自分用だったのだと思います。
春から始まるドラマの小説も入っていました。
父自身が死ぬとは思っていなかったのだと思います。
こんな死をピンコロ(ピンピンだったのが、コロリと死ぬ)というそうです。
驚きましたが、父自身は最後まで元気にやりたいことをやっていて幸せだったのだと思います。
羨ましい亡くなり方だったと尊敬してもいます。
この本の冒頭に、90歳まで健康で、ゴルフで良いスコアを出した日の夜、妻や息子、そして孫たちと食事を楽しみ、ビールを飲んで、のんびり風呂に入って、その後、本人も気づかないまま就寝中に息を引き取った方の話が記事にあったとあります。
著者は、なんと恵まれた人生の幕引きで、自分もそうありたいと思っていると書いています。
著者の久坂部羊さんは、大阪のがんセンターの外科医、麻酔科医として多くの患者の最後に接しているそうです。
久坂部さんの目から見ると、人工呼吸器や透析機で無理やり生かされ、チューブだらけになり、あちこち出血しながら、最後を迎えた人をたくさん見て、それを悲惨だと表現されています。
死は一発勝負で、練習もやり直しもできないので、自分が好ましい最後の迎え方を、他の人の事例で参考にしたらどうか?
というのがこの本の趣旨です。
事例から学ぶのであれば、事例は多い方が良いのですが、医療が進歩し、死が病院の中に隠されるようになって、死はどんどん世間の目から遠ざけられています。
死は必ず訪れるので、あらかじめしっかりと準備しておけばよいというのが久坂部さんの伝えたいことです。
冒頭に延命治療の話があります。
ご自身が(医師として)延命治療を選択したために、患者に大きな苦痛を与えた上に、死に至らしめてしまったと書かれています。
延命治療により助かる人も増えた代わりに、助からない場合は悲惨な延命治療になる事多いのです。
では、延命治療を拒否すれば、悲惨な状況が避けられるわけでもないのです。
高齢で自宅で脳梗塞や心筋梗塞、あるいは誤嚥性肺炎になりました。
自宅に居れば亡くなる可能性が大です。
しかし、病院に行けばわずかだけれども助かる見込みがあると言われても行かない選択ができますか?
行って、助かれば良いのですが、そうでない場合に悲惨な延命治療になるのです。
助かりそうな時は病院に行き、そうではない時は行かないで死にたいは、両立しないのです。
心臓マッサージは、骨が折れるくらい強くマッサージをしないと回復する可能性がないそうです。
救急車を呼ぶと、延命措置をしないといけないそうです。
家族が来るまでを重要視すると、医師は無駄だと分かっていても延命措置をするそうです。
意識が無くなっている時に点滴するのは、本人はおぼれているような感覚になるという報告もあるそうです。
一方でポジティブな新老人力を高めてはどうかという事も書いていました。
老人になって、衰えていくことを新たについた力のように考えてはどうかというのです。
記憶が落ちる→忘却力がついた
動きがおそい→ゆっくり力がついた
効率が落ちた→のんびり力がついた
その他、受け入れ力、感謝力、満足力、期待を下げる力などですね。
求めない力を高めるのもおすすですね。
→今で十分だと思うってことですね
自分の時にどうしようか
考えるきっかけになる本でした。
今年、母が亡くなりました。
母は、数年前に病院に入院している時に足を折り、歩けなくなりました。
それがきっかけで特別養護老人ホームに入りました。
コロナになり会える頻度は制限があったのですが、
弟と手分けして、週に1回どちらかが会いに行っていました。
少し調子が悪くなった際に病院で、老衰だと診断されました。
延命措置はしてほしくないと事前に聞いていました。
医師からは、それならば看取りにしましょうとアドバイスを貰いました。
病院か特養か選べたのですが、母が楽しく過ごせていた特養を選びました。
最後は特養のベッドで穏やかに亡くなりました。
父の最後の顔も、母の最期の顔も穏やかでした。
いつか分かりませんが、そんな最後を迎えたいものです。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。