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2016年 52冊目『若者と労働』

独立行政法人労働政策研究所の濱口桂一郎さんの本です。

先日読んだ『日本の雇用と労働法』も良かったですが、この本も若者を取巻く問題点の全体像が把握でき、学びの多い本でした。

ドッグイヤーをつけたところを書いておきます。

●仕事に人をはりつける欧米型のジョブ型労働社会ではスキルの乏しい若者に雇用問題が集中するのに対して、人に仕事をはりつける日本のメンバーシップ型労働社会では若者雇用問題はほとんど存在しなかった。

・欧米企業の採用原則は「必要な時に、必要な資格・能力・経験のある人を、必要な数だけ採用する「欠員補充方式」。

・日本の就職とは、学校を卒業する時に、特定の会社に「就く」ことを決める1回限りの選択。

・日本の企業は、(大学が職業能力向上をしないこともあり)大学で何を学んだかはあまり意味を持たず、大学銘柄で示される大学入学時成績が、入社後教育訓練に耐えうる「能力」を示すものになっていた。

・日本のみ内定時に労働契約が成立したとしている。(入社もしていないし、就業もしていないが、内定取り消しがあると学生がとても不利だから)

・日本のメンバーシップ型雇用契約では、職務だけではなく、働く時間や空間も限定されていない(幹部でもない一般従業員に転勤が当たり前にあり、拒否できないのは日本だけ)

・日本では、自分の仕事と他人の仕事が明確に区別されていない。だから「それは私の仕事ではない」という言葉は無く、自分の仕事が終わったからと言って、さっさと帰る事は難しい。

・日本企業は社員解雇は難しい。1.人員整理の必要性2.解雇回避努力の履行3.被解雇者選定の合理性4.解雇手続きの妥当性が求められる。

・日本の大学生は、希望するところには入れない事があったとしても、どこかには就職できた。

●しかし、1990年代以降「正社員」の枠が縮小する中でそこから排除された若者に矛盾が集中し、彼らが年長フリータとなりつつあった2000年代半ばになってようやく若者雇用政策が始まった。

・「正社員」の枠が減っていく中で、入社の「入口」ではそれほど重要性を持たなかった「人間力」が求められるようになった。

・日本のキャリア教育は、特定の職業を前提としない、「望ましい職業観、勤労観」を身につけるものであり、欧米のジョブ型社会から見ると、空疎なものである。

・大学教育は、従来の「素材が良いから採用して下さい」から「これだけ勉強してきた学生なので採用して下さい」に変わる必要がある。

しかし、そのためには学生の職業展望に何の利益ももたらさない大学教授を入れ替える必要があります。これこそ日本教育からの「不都合な真実」。

・各国では、若者雇用政策は「職業訓練によって技能を身に着け、採用されやすくする以外に旨いやり方はない」事を学んだ。

・ドイツのデュアルシステムでは、高校3年間週3日は学校で座学、2日は企業で実際に作業をする。しかも、卒業時にその会社に就職するかどうかは決まっておらず、職業選択の自由はある。

・近年には正社員になれた若者にもブラック企業現象と言う形で矛盾が拡大しつつあります。

・従来の正社員は若い間は大変でも、長期雇用の保証がありました。現在のブラック企業は、残業代を払わないとか、長い労働時間と言った典型的なものに加えて、不安定。

低処遇なのに「義務だけ正社員」や「やりがいだけ片思い正社員」といった様々な形で拡大。これらは、経営者自身もブラックだと感じていないのが問題なのです。

・つまり、働き方だけ見たらブラックだけど、長期的に見たらブラックじゃない古き良き無限定的な働き方を担保していた「長期的保障」が、この保障無き「義務だけ正社員」を生み出しているのです。

・増えたのは、臨時型の非正規雇用ではなく、常用型の非正規雇用。

・日本の新卒は基本全員総合職(7割くらい)、非正規が3割くらい。欧米では2割強が幹部候補、2割強が職務限定職、2割強が地域限定、2割強が非正規。

●今後は、長期蓄積能力活用型グループ、高度専門能力活用型グループ、雇用柔軟型グループの3つに大別されるべき。

日本の就職状況はかなり特異性があります。ただ、この新卒一括採用は高い若者就業率を実現しているのも事実です。問題は何か、大学卒業時に、就職に失敗すると、他に道がないわけです。

これをどうするか。
別の道を創るべきですね。

また、日本では企業内教育が中心ですが、はじかれた人にはその機会が与えられません。ここを担うのは誰なのかと言う問題があります。大学なのか。職業訓練校なのかという事です。

また、非正規あるいは低所得社員職(介護、保育、飲食)についての問題は2つあります。

一つは最低賃金の向上です。
加えて、昇給の仕組み作りです。

これらの職業は低賃金も問題なのですが、それ以上にキャリアを積み重ねても給料が上がらない事があります。

ここの解決が重要ですね。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。


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