2024年 63冊目『リーマンの牢獄』
2008年6月、アスクレピオス事件で巨額金融詐欺の主犯として逮捕された方の手記です。
名門一族を巻き込み、替え玉の偽部長を仕立てて丸紅本社の会議室に登場させ、リーマン幹部を手玉に取ったのです。
総額1500億円(詐欺としては371億円)の事件が、リーマンショックのトリガーの1つとなったと言われています。
こんなことが起きるのか?
まさに現実は小説より奇なりです。
彼はもちろん詐欺をしました。
しかし、この本の内容が真実の一部だとしても371億円は彼のもとに来ていません。
詐欺事件で詐欺師をだまし、その儲けを全部取るのをクロサギと言いますが、まさにクロサギだらけです。
小説だとしても、こんなこと起きないだろう!って話です。
例えばこんな話が載っています。
クレディ・スイスNY支店の6000万円を口座凍結されてしまった著者は、次第に追い詰められていきます。
逃亡先の香港で現金を手に入れるため、リモート操作によって日本に指示を出します。
みずほ銀行丸の内支店に投資信託として預けていたものを解約してシティバンク大手町に振り込み、
一部をシティバンク香港へ送金し、残る全額を日本のATM(現金自動預け払い機)からおろす
シティのATMには一日あたりの限度額がないんです。
問題はシティのバンクカードが香港の僕の手元にあったことです。
そこで香港から帰国する彼女にカード入りの封筒を託し、六本木のホテルのレセプションに預けてもらう。
封筒を受け取ったのは黒崎氏(投資顧問会社社長でクロサギ)です。
現金化して地下銀行で送ってもらうはずでした。
彼はATM引き出し役を著者の前妻に任せて、監視カメラに映らないようゲンナマの包みだけ盗んでいたのです。
電話をつなぎっ放しにして著者が香港から指図し、検察の取り調べには口を割らなかったのに、
後になって黒崎氏は授受などなかったような顔をしています。
頼みの綱だった3000万円の裏ガネは、
齋藤の海外逃亡生活を支援しているかのように見えたクロサギにネコババされてしまったのです。
巻き込まれたくないというのが読後感です。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。