2015年 22冊目『世界で闘う仲間のつくり方』
トレンドマイクロ社のCCO兼共同創業者のジェニー・チャンさんの本です。
ジェニーさんは、会長兼共同創業者のスティーブ・チャンさんの奥様で、肩書きのCCOはCOOなどの誤植ではなくて、CCOの2つ目のCはCulture文化のCです。
企業文化の継承と文化と企業の融合の責任者と言うことです。
一般企業には無い職種ですね。
RMS時代の同僚のIさんからトレンドマイクロ社人事担当執行役員のNさんをご紹介頂きました。
その際にIさんから課題図書としてこの本を頂きました。
ある意味、偶然手に取った本なのです。しかし、この偶然とIさんに感謝です。
本当に良い本です。
そしてトレンドマイクロ社はとても素敵な会社だなと思える本です。
それは、自分自身のマネジメント感と類似のものが多いからかもしれません。
構成は1章で創業期の話、2章で停滞期と拡大期の話、3章で有名なトラブル対応の舞台裏 そして4章はCCOの仕事について書かれています。
トレンドマイクロ社は創業者の出身地台湾と学生として学んだアメリカ、そして市場シェアの高い日本、そしてセンターのあるフィリピンの4箇所が主要拠点になるグローバル企業です。
いわゆるITベンチャーの創業物語や創業者のカリスマ、ユニークなマネジメント哲学も学べます。
また、東洋的な支出を抑えて、成長を志向する考え方と西洋的な大規模投資を行い、競合よりも早く市場奪取を図ると言う考え方の融合と葛藤も学べます。
カリスマ創業者夫婦から技術責任者の奥さんの妹と言う身内への継承とその時の創業者の取るべきスタンスも知ることができます。
そして3章、起承転結の転がハラハラドキドキです。
この継承直後に、同社起因のシステムトラブルにより全世界の様々な会社のシステムをダウンさせてしまうと言うアクシデントを起こしてしまうのです。(画期的なウィルス対策システムを作ったのですが、そのテストに漏れがあり、導入するとシステムが無限ループに入り、ダウンしてしまうのです。
この導入についてお国柄が出ていて面白いです。
アメリカは金曜日夜にリリースしたので、皆帰宅していたので、影響は軽微だったのです。
ところが、日本はリリース直後にウイルス対策ソフトなので少しでも早く対応すべきだと、顧客各社独自で全ての端末に導入するシステムを保有しているケースが多く、一気に被害が拡大したのです。(日本企業の勤勉さが被害を拡大したわけです。)
このトラブルにより、同社は大きなダメージを受けました。
企業存亡の危機です。
にも関わらず、創業者は、後継者を信じ、前線に立ちません。
後継者は周囲の期待に応えて、このトラブルを解決します。(社内ではトラブルとは言わずにプロジェクトと言っていたそうです。トラブルと言う言葉によりネガティブになったり、犯人捜しをするのではなく、プロジェクトとして、解決することであると言うプロアクティブな言葉に変えたそうです)。
彼女が日本のマスコミに対して話したスピーチは感動ものです。
さらに、彼女はリーダシップを発揮し、この根本原因を突き止め、画期的な新商品まで開発します。
これらにより名実ともにリーダー継承を成功させたのです。
4章の文化との融合も新たな着眼点を与えてくれます。
小説として読んでも面白いし、マネジメント向けのノウハウ本としても秀逸です。
ぜひ読んでみてください。
お勧めです。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。