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2024年 28冊目『図解 人的資本経営 50の問いに答えるだけで「理想の組織」が実現できる』
中尾塾の課題図書にもした『スタートアップ芸人』の中で受注率9割の勝率を誇るコンサルタントとして登場する岡田さんの本です。
人的資本経営について50の問に答えるだけで理想の組織ができるとあります。
人的資本経営とは何か?
自社で開示する場合に、具体的に何をすれば良いのかが分かります。
具体的には
自社にとって人と組織のありたい姿は何か?
このありたい姿を実現するために、自社に必要な取り組みは何か?
を50の考えるべき問いに回答することで、見つけることができるという優れたコンセプトです。
問という形式を活用することで、
1それぞれの会社にあった答えを見つけることができ
2環境変化に合わせた考え直しができ
3思考を深め、固定概念から抜け出しやすくなる
とあります。
その通りだと思います。
1章は人的資本についての説明パーツです。
2章が実践編という位置関係です。
7つの領域に分割しています。
1ありたい人と組織の姿はどのようなものか?
2どのように人を調達するのか?
3どのように人を育成するのか?
4どのように人の活躍を促すのか?
5どのように人の維持を行うのか?
6どのように人が抱えるリスクを低減するのか?
7これらを実行する人事体制を、どのように整備するのか?
です。
人的資本開示に限らず、興味のある領域を読むだけでも学びになりますね。
UNIPOSの田中さんが統合報告書を読みまくって、現在この分野の日本の第一人者になっています。
アプローチは帰納法的ですよね。
岡田さんは、無理やり対比すると演繹的に全体像を見せてくれている感じです。
私は、この分野5年間くらい前から興味を持っていてISO30414やアメリカの上場企業が開示することが決まった後に経産省がどうする?と考えた内容も興味深く読んでいました。
そもそもリクルートの前社長が統合報告書の非財務の箇所にとても注力していたので、とても注目していました。
その観点から見ても、網羅的に、しかも実践的に書かれている本だと思います。
個人的に興味があったのは
経営戦略整理のための7×7Factorsですね
戦略要素として
1顧客、2株主・投資家、3社会、環境、4事業ドメイン、PF、5経営管理・ガバナンス、6資本政策マネジメント、7リスクマネジメントを挙げていて
それの実現要素として
1機能・組織、2アライアンス、3ハード(インフラ・IT)、4ソフト(人材、文化)、5調達、6オペレーション、7プロダクト・サービス
という整理が上手だなって思いました。
昔RMSであったIC(人的資本)マネジメントとマッキンゼーの7Sを統合した感じだなと思いました。
また人的資本ですので、投資に対してリターンを測定する際に3つのレベルで整理しています。
1投じた人件費に対しての利益
2分子分母を拡張して測る
⇒エーザイの例で、従業員へのインパクトとして(賃金の質、従業員の機会)労働者コミュニティへのインパクトとしてダイバーシティと地域社会への貢献を加えています。
3経営戦略の蓋然性の高まり
⇒日立製作所の事例が載っています
経営目標・KPIー経営戦略ー人材戦略ー人的資本KPIが連関しているのです
最後事例を紹介しましたが、この本は、他社から学ぶというよりも、上述の50の問いに答える。つまり自社で自問自答することで回答を見つけるという骨太の本です。
骨太なだけに、50の問いがあり、本気でやる場合は、岡田さんたちのサポートがあった方が確実に進められるんだろうなって気もします。
▼前回のブックレビューです。
▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。