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リアル市場サービスとネットをつなぐ試み 【さかな一代の成績表】

こんにちは、さかな一代の中乃一です。

8月からnote投稿を開始してまるまる4か月が経過、このオウンドメディア「さかな一代の大人たち」で紹介するネット通販サイト「さかな一代」も、4か月が経過しようとしています。今回は、ネット通販サイトの4か月の振り返りを記したいと思います。

結果、簡単ではなかった

今の時代、ネット通販サイト・ECを立ち上げるだけなら、それほど難しいことではありません。でも、豊洲市場の中の人が、思い描いた流れで、ダイレクトコマースに挑戦して、それを商売の軌道に乗せるのは、そんなに甘いものではなかった、というのが今のさかな一代の実力です。一言でいえば、惨敗

市場が市場に乗れない?!一般的な流れを志向しなかった

ECの定石としては、楽天などのモール型のECサイトへの出店で、ショップ認知を高め、いづれは顧客数とモール手数料を鑑み、カート型で作った自社ECサイトへ顧客を徐々に誘導、カートサービスの中で自社の登録者を増やして、そこから先は、カート型ECでそのまま行くか、パッケージなりフルスクラッチなりで自社独自のECサイトへ移行する、の順で進めるのが今の時代の一般的な進化だと思います。

商品集めの自信から、定石とは別の選択を

さかな一代は、自社ECサイト方式(ただし、香取慎吾でお馴染みのカート型ECのBASEを活用)でスタートしました。

あえての選択。モール型からスタートせず、短期間で頻度高く新商品をアップ・更新して、独自のプロモーション、SNSで拡散。日々新しい商品が店の売り場に並べ、通りかかる人にたえず目新しさを提供、いわゆるフラッシュマーケティングで十分行ける。このお店は更新頻度が高く、情報の鮮度が高いと印象付けるために、短期間で取り扱い商品数を増やせばお客様はついてくる。営業日ベースでほぼ2日に1商品というペースでの新商品の掲載は、日ごろ多くの食材を扱う市場ならでは。市場からものを出すのだから、他には負けない、自信がありました。それから、サイトはスタッフで作る。素のままの「素人感」が漂うテイスト、良く解釈すれば、その分商売への正直さが伝わる(?!)、狙うはギャップ萌え。

そもそも、ぼくたちリアル市場人が、「ネットの市場」も奪還するのに挑戦するのですから、あえてそこ(モール街)へ売って出る選択は、初めからありませんでした。

結果は冒頭の通り、案の定「てやんでい!」となりました。
※「何言ってやがんでい、全然違うじゃんかよ、べらぼうめ!」

スタートしました、さてどうする?

気まぐれなお客様の消費モチベーションにどう挑むか? 市場らしい商品選び・品ぞろえで、ネットスーパーを含むリアル量販店に挑む、という(無謀な?)思惑で、とにかくECをスタートしました。

晴れの日、非日常での使われ方にフォーカスするのでなく、どうやって、お客さんの日常へ忍びこむのか? 現在の嗜好品主体の飲食品ネットショップに、ぼくたちはあまり興味がありません。

とはいえ、今のさかな一代は「お買い物できる場所が新しく追加された」にすぎません。それだけでは、お客様がそこで「買い物をする」強い理由にはなりません。

さかな一代の大人たちのねらい

「食べたい料理がある」の次のアクションで、「食べられるお店を探すのか、自分で料理するため買い物が出来る場所を探す」の流れは自然です。そこに、ぼくたちは「食材に興味を持つ」からの入口を提供したい、次のアクションが食材を使った「もーれつに食べたい料理」になることを志向していきたいと思っています。

意識の変革を促し、ぼくたち自身が変わること

その上でまず、ECでは「商品」という考え方をやめました。なぜかというと、ぼくたちさかな一代は、生産者さん、漁家さんの代理という考えを持っています。これはオーソドックスな市場的な思考なのですが、産地から大切な荷物を預かり、良さがわかるプロへ引き渡す、引き取る相手も、引き渡す相手も、「商いのための品」として扱います。

これは、ぼくたちなりの小売業に対する最大級のリスペクトですが、「俺たちは流通のハブにいて結びつけてるだけ、売るのはあんたらだ」で、これまでぼくたちは来てしまった。モノも情報も、ぼくたちが持つ以上のものは何もないはずなのに、小売業の方はその使い方を磨いて、どんどん成長しています。

他業種、例えば生活用品メーカーのナショナルブランドが小売店のPBに取り替わるように、加工品を除いて、水産業では、漁家さんの獲る魚が小売業のPBに取り替わることはないとは思いますが、中央市場が取り残されることは大いに考えられることです。ぼくたちには、なにか新しいことを始めるのに十分な、そして明確な危機感がありました。

もちろん、基本的には生産者さんの代理であるという、この考えは変わりません、事実ですから変わりようがありませんが、ぼくたち自身の意識を変えないと。これまでも見落としてはいけない大事な事があったに違いないが、これからもそれに気付けないんじゃないかと。

お客様はプロじゃない方がほとんど、プロを相手にする時のままでいいはずがありませんでした。食材として使うお客様が知りたい情報を提供していかなければ、興味すら持っていただけない。当たり前のことですが、「価値を伝える努力」が、まだまだぼくたちに足りていないのだと痛感しました。

だから、ぼくたちの商いの品を購入して「食材」として使うお客様の気持ちになるために、ぼくたちも「食材」と呼ぶことにしました。

日本の四季折々の旬を大切に、食材への興味を持ってもらおう

では、豊洲市場の人の、ぼくたちなりの「価値を伝える」とは、具体的に何をしていくのか? もちろん、商品のスペック的なことや、産地・トレーサビリティ的なことは当然として、食材の「旬」をもっと大切にみなさんにお伝えしてくことだと思っています。

暑い、寒いだけじゃないはずの日本での生活で、いまひとつ季節を感じられなくなっている理由の一つに、食というテーマも関係しているように思います。だから、四季折々の多様な食材との接点が、より鮮明に作り出せるように、さかな一代では工夫していきたいと思っています。

また、海のある国に生まれ、だれもが誇りに思う日本の魚食文化ですが、はたして誇れるほど豊かだとみんさんが実感できるでしょうか。特にぼくたちの日常レベルで実情を目の前にすると、画一的で、まあつまらない。今のシステムはどこかに問題があると思わずにはいられません。もちろんその責任は、ぼくたちにもあると思っています。

さあ、ECサービスを進化させるぞ

運用経験を積むことや、周辺テクノロジーへの理解を深めることに日々取り組むさかな一代の大人たちですが、立上げからのこの期間は、惨敗ではあるものの、ECの実践者になるということで、とても大切な期間でした。

惨敗を踏まえ、これからぼくたちがすることは、さかな一代が、みなさんの日常でのファーストチョイスとなる何かしらを探しての挑戦の日々です。「何かしら」とは、飲食品ECとしての「まだないサービス」。まだないのですから、サービスの競争、発明・開発の中で、まだまだもがかないとたどり着けません。

そんな状況の中で、ぼくたちが手を付けていきたいことは、市場メカニズムの良さ、面白さをもっとみなさんに伝えられ、市場の仕組みをECに実装、みなさんの生活で使われる社会を実現していくこと。具体的には、量の調整機能、価格形成機能です。ここをどう打ち出していけるのか、まだまだ挑戦は始まったばかり、ぼくたちの格闘は続きます。

良いものと、改善するもの

市場流通には、大量多品種を効率的に流す良さがあります。

ぼくたちさかな一代の大人たちは、市場流通が、長い年月を経て最適化されてきた、優れたシステムであることに誇りを持っています。

最適化を考えた時に、多様な食材を、大量に扱う市場という仕組みは、もっともっと洗練されて、流通全体の中で競争力を持たなければなりません、多分。しかし、現実はどうなのか、中央市場を通過する取引は全取引量の50%を切ったと言われています。

ITを絡めて高品質化されるていく流通業、物流サービスの中で、どこで分荷するかが効率化のポイントだと考えています。ここが、ECの先輩たちの家電や書籍、アパレルといった業種と、飲食品の違うところだと思います。

基本的に、大規模物流ハブで行われるのが理想です。ECであっても、物の販売である以上、物流の要件に引っ掛かり、時間がかかっても最適化されていくと思います。ネットスーパーや飲食品EC事業者が、莫大な物流投資をしたにも関わらず、せっかく構築したセンターや配送網を手放しているニュースなどを見るに、まだまだこのあたりの最適化のまっ最中なのだと思います。

中間流通をカットすることは、中間機能を使わないことに他ならないので、中間で「いい仕事」をするぼくたち市場の機能は、中央市場といえどもショートカットされるケースがありました。理由はいろいろ考えられます。

これまでは、経済的効率の1点のみで物事が考えられてきましたが、環境負荷への配慮や、働く人の環境に目を向ける時代になっています。それら含め総合的に課題に取り組むこと、また、水産においてはグローバルな競争においての今日の日本の立ち位置の変化から、既存の市場システムの課題がいろいろ見え隠れしていることは、既にみなさんの知るところです。

ぼくたちさかな一代が挑戦する飲食品ECが、お客様にお届けする食材の旅の中で、産地の生産者と大規模消費地をつなぐ中央市場の果たすべき役割が大きく果たせて、市場メカニズムを通じて生産者と消費者の双方の利益を適正にし、消費者接点という終点付近で、多様な荷物を分荷させるという本来の機能を最大に発揮して、飲食品流通フィールドを唯一面白く出来る存在だと信じています。

ますます全体的な効率を考えなければならない現代においては、市場流通の良さをさらに磨いていかなければならないと思っています。ITを絡めて高度に高品質化されるていく流通業、物流サービスの中で、どこが飲食品ECを制するのか。それは中央市場であり、さかな一代なのです!(のはずです。) 

とはいえ、ぼくたちの成績表の1学期は、エンジンが空回り、みごとなまでの落第点でした。エンジンは十分に温まっていますから、この年末は勝負! がぜんやる気が出ますね。みなさん、さかな一代の大人たちを、これからもよろしくお願いします! ではまた次回をお楽しみに。


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