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『下北沢について』吉本ばなな
四月から、関東で住む家が決まった。
会社の最寄り駅まで30分で行けて、まるで私の地元かのようなローカル感があって、駅から家までの道のりに一通り揃った商店街があって、日当たりが良くてコンロが三口もあって、内見してすぐに気に入って契約した。
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家具見るのも好き
☺️
契約時に担当のお姉さんとは別に、宅建を持っているという人が登場して、なんだか難しい説明をたくさんしてくれたけれど全然わからなかった。
「これってこういうことですか?」と発言したら「違います」と一蹴されて、泣くかと思った。
小一時間かけて説明してくれた後に「質問はありますか?」と聞かれて、「壁に画鋲は刺していいですか?」と質問したら「大丈夫です」と答えてくれた。
壁に画鋲を刺していいことだけは理解できた。
吉本ばななさんが作家業をしつつ子育てをして、生活を営んだ記録、『下北沢について』。
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朝から大井競馬場のフリーマーケットに出向いた後に、紀伊国屋書店の本店で購入して、疲労困憊の中たどり着いたルノアールで開いた。
姉と二人で死んだ顔でコーヒーを啜っていたけれど、本の中でとても力強く嫋やかな文章に出会えて、チュクミを食べに新大久保まで移動するだけの元気が出た。
選べなかったほうの人生を夢見ることはできない。でも、選べなかった人生が私に微笑みかけてくれるとき、いつでもその人生に恥じないようにあることはできるかもしれない。
就職活動を経て、本社が東京に、支社が7ヶ所ある会社に入社すること。
内見に出向いて、自分で住む街と部屋を決めたこと。
毎日誰と会って、何をして、何をしないのか。
人生は選択の連続だ。
私はよく間違えるし、要領は悪いし、できないことも多いけれど、自分が選択しなかった方の自分に、胸を張れるような自分でいたいと思う。
下北沢で吉本ばななさんが住む家の上階に、ウルフルズのトータス松本さん一家が住んでいたと言う。
なんて贅沢な世界線。
私は高くて住めないけど。
知っているすばらしい人の中でも五本の指に入るほどの、なにがあっても動じない美人の奥さま(君に会えてよかったとバンザイする歌ができるほどの)がはじめにタオルを持って「上に越してきました」とご挨拶にいらしたとき、当時いた奈良出身のアシスタントが「関西人で松本さんっていったら、もう間違いなくトータスですよ!」と言い、「まさか、そんなはずないでしょ」と私は言ったが、なんと、ほんとうにそうだったのだ。
好きになったことをバンザイと歌ってくれて、このままずっと死ぬまでハッピーと底なしの明るさと能天気さで二人でい続けることを表明してくれる。
めちゃくちゃ素敵な恋愛で憧れるし、大好きな歌。
私も自分の幸せに対して万歳、と素直に表現できるような人になりたいな、と思う。
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帰宅☺︎