ラーメン業態 繁盛の2:6:2法則。
皆さん、こんにちは。
唐突ですが、皆さんはラーメンは好きですか?
今コロナで飲食店の経営はかなり打撃を受けていますが、ラーメンだけは時々食べたいという方も多いのではないでしょうか。
それだけラーメンという食べ物は趣向性の高い食べ物で、常食性が高いということなのでしょう。
出しやすく失敗しやすいラーメン業態。
実際に日本の飲食店で最も多い店舗はラーメン店。ラーメン業態は日本の飲食店の中で一番店舗数の多い業態です。
そして飲食店での独立開業者が選ぶ業態部門でも1位がラーメン店。
つまり、開業していく飲食店の中で一番多いのもラーメン店。
そして、業績不振で閉店していく飲食店の業態で最も多いのもラーメン店。
つまり最も「手を出しやすいけど 失敗しやすい業態」がラーメン業態だということですね。
このラーメン業態を、簡単そうで繁盛させることが難しいと言われるラーメン店を爆発的に繁盛化させて、全国店舗展開に成功した業態開発秘話をしていこうと思います。実体験です。
流行に乗らず、得意な場所で勝負する意思決定。
私がサラリーマン時代に外食企業のFC本部で仕事をしていた時の話し。
会社で新しい業態を開発することになりました。それがラーメン業態です。
どちらかというと都心型ではなくロードサイド型の大型店を展開していた会社で、ターゲットはファミリー。イメージとしては今のスシローさんのようないつも駐車場がファミリーでいっぱいになるような店舗をいくつも持っていました。
それでもラーメン店を始めると聞いて私が想像したのは「カウンターとテーブルが数席の小規模の駅前型店舗」でした。その頃メディアでは「とんこつ醤油ラーメン」のブームを特集することも多く、こだわりの東京豚骨ラーメンがいろんな地域で繁盛している時代でした。だから「ああ、あんな東京豚骨ラーメン店をやるんだな」と思ったのです。
でも実際に初めてのラーメン業態開発会議に参加した時にそのイメージはぶっ飛びました。社長の口から出た言葉は「ロードサイドの大型ラーメン店をやる!」でした。
慌てていろいろ調べましたが、大阪の神座(かむくら)と京都の横綱ラーメンがその成功事例としてあるだけで、あとはほぼ「そこそこ店舗」で、言い換えればそれほど繁盛しているということはありませんでした。
いわゆる駅前行列型という「流行」に乗らず、今まで成功体験を積み上げてきた地方ロードサイド大型店で勝負する意思決定を、社長は下していたのです。
そこから各部署が役割を与えられました。商品開発部はメニュー開発を。業態開発チームはレイアウトやデザインを。店舗運営チームは接客や調理のオペレーションを組み立てて週一度の会議に臨んでいくことになりました。
その頃の商品開発部長は息巻いていました。「日本一うまいラーメンを作ってやる!」と。そしてその表情にはそれを実現させる自信が自信が溢れているように思えました。
私には「これは相当美味いラーメンが出来上がるんじゃないか」という期待感を抱いた記憶が鮮明にあります。
最高に美味いラーメンが出来上がった。
1ヶ月経ってついに最初の試食会が開かれたのです。商品開発部長のあの自信。そして試食会の日のあの表情。自信に溢れています。
相当美味いんだろうと期待感は高まりました。現に参加した他の幹部8名も相当期待しているようです。
第1試食ラーメンは、一番商品候補の「とんこつ醤油」と「醤油ベースの肉そば」が出てきます。
見た目はとんでもなく美味そう。風味も香りも最高レベル。盛り付けもシズル感も抜群!
まずスープをすすってみる私。その瞬間、口の中に衝撃が!!
「美味すぎる....」
思わず唸った私が周りを見渡すとみんなが目を見開いて私の方を見ています。これは最高に美味いラーメンではないのか!
もちろん「美味しい」という感覚は主観的なものなので、人それぞれ。
特にラーメンなどのように”基本美味しい”食べ物は「美味しい中での勝負」になるので特に主観性が強くなります。「美味しいか不味いか」という判断は簡単だけど、「どっちが美味しいか」という判断は統計を取るのが難しいのです。
今回のラーメンは全員が「最高に美味しい」という10段階の10点という、試食会始まって以来初めての評価点。これは商品開発は走っていくぞ〜、追いつかないとまずいぞ〜と考えていた瞬間、
社長が重い口を開いてこう言ったのです。
「このラーメンはダメだ。美味すぎる。」
美味すぎてダメなラーメン?
全員が「どういうこと???」と目が点になりました。
「美味い」=「Good !」と思っていた私たちは社長の言っている意味がわからず、でも誰も言葉を発せずに沈黙した時間を過ごしました。
重い空気を割いたのは商品開発部長でした。
「このラーメンではダメだということですか」
社長は間髪入れずに「そうだ。このラーメンでは売れん」
そういうと、ホワイトボードの前に移動してその「意図」を説明し出しました。
2:6:2の繁盛法則
社長はこう言いました。
ラーメンは嗜好品という部類に入る食べ物だ。珈琲と同じ。
嗜好品は「美味しい」と思う人の同じ数だけ「私は好きじゃない」と思う人が存在する。つまり、好きな人の数だけアンチができるということだ。
「好きか嫌いか」を仮に半々だとすると、50%の人が「最高に美味い」と感じれば反対に50%に人が「好きじゃない」と言う。つまり、味をとんがらせれば熱狂的なファンは作れるが、アンチも作る。それが人気商売というやつだ。
でもラーメンは芸能人じゃない。そのラーメンを今日も、明日も、来週も来月も食べたいと思ってくれる人を一人でも多くつくることだけが繁盛する方法だ。
だから、20%の人が「美味い!」と思ってくれるラーメンを作れば、アンチは20%。残りの60%は「普通」と言ってくれる。
「普通」はちゃんとした店なら来てくれる。つまり、「美味しいという2割+普通という6割=8割の人が来てくれる店」になるんだよ。
今日のこの最高に美味いラーメンだと、50%の人しか再来店してくれない。
100坪の店を構えて大事なのは、何回でも来て喜んでもらえる店を作ることなんだよ。
ちょっとした衝撃でした。2割:6割:2割という法則。
その比率は社長の感覚なのかもしれないけど、それでもその論理に基づいて開店後の売上をみると実証されました。
商品開発部長はその2:6:2法則に準じたラーメンを開発に成功。大型店なのに店でスープとかえしを作る工程は大変だったけど、オープン初月に月商3,000万円超え。これはおそらく初めて開店したラーメン店の記録なんじゃないかと思うのです。客単価780円で月商 3,000万円。飲食店経営者ならこのすごさがわかると思います。
マーケターとして今、それを思い出すと。
その頃の私は「美味ければ売れる」と思っていました。
いや、「美味いことこそ売れる近道」だとも思っていました。
それは違うのだと、その時に学んだのです。
美味いものを提供するというプライドは絶対に必要でしょう。
それを無くせと言っているのではありません。美味いということは大事なことじゃない。と言っているのでもない。
食べ物屋として「美味しい」は絶対に必要だし、そこにプライドを持つことだって絶対に必要。
でも「美味しいものを出していれば繁盛する」と思っていては足元を掬われます。お客様はもしかしたら「美味しいものを食べるためだけに来る」のではないかもしれないからです。
それはもしかしたら「お祝い」かもしれないし、「旧友との語らい」かもしれない。それを彩るものとして食事があるのかもしれない。
繁盛するということは、たくさんのお客様にとって「利用してみたい店」になることだし、「利用してみたくなる店」だと伝えること、発信することです。
このラーメン店の成功体験は私にとって深いものでした。それは、とんでもない繁盛店を作ったことよりも、「繁盛とは何ぞや」ということを学べたからなのかもしれませんね。
繁盛業態をつくるノウハウを独自で構築して、それを求められるようになった今の自分自身の、でっかいでっかい「経験値」だったのだと、今すごく思い出す出来事でした。
それでは今日はこのへんで。
またお会いしましょう。
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