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團十郎白猿の助六は期待以上だった

十三代目團十郎白猿の襲名披露、夜の部を見てきた。お目当ては当然「助六」で、期待以上の舞台だった。

以前はただひたすら抜き身のギラギラした若者(それはそれで好きだった)だったけれど、今回の助六は大人の男になった。曽我五郎は18歳だから本当は「大人の男」というのはおかしいのかもしれない。けれど、私のいう大人というのは團十郎白猿が大人の男になった、という感触に近い。

芸に余裕と幅が感じられて、それが助六に優美さを与えている。以前はただただ力一杯足を踏み鳴らしていた花道の出端も、不自然に力んだりすることがない。足を踏むのも乱暴に力を込めるのではなく、トンっと澄んだ音が歌舞伎座に響く。
それでいて踊りになることは決してなく、一つずつの動きに意味が込められていて、河東節(旦那芸なので大して上手くないのに)の詞章がよく聞こえてくる。

本舞台に来てからの芝居もそうで、チンピラではなく、吉原で大勢の遊女たちが嬌声をあげる漢の魅力が溢れている。全てに余裕が感じられるからで、改めて團十郎白猿が一皮剥けたんだな、と思った。

対する菊之助の揚巻と松緑の意休も素晴らしい。やはり菊之助は女方を演じている時に光り輝く人のような気がする。
松緑は生まれ変わったかのようにセリフの癖がなくなっていて、この役に真摯に取り組んでいることが伝わってきた。

白酒売は私にとっては菊五郎があまりに好きすぎるので、梅玉は淡白に過ぎる気もするけれど若々しさ、柔らかさでさすがにベテランの味。
仁左衛門のかんぺらが大御馳走で舞台を締める。鴈治郎もふざけ過ぎず襲名に華を添える役割に徹していて嬉しい。新之助のかつぎは9歳とは思えない堂々たるもの。この子は本当に期待したい。
全部書くと長くなるのでここまでにしておくけれど、取りこぼしのない配役で本当に2時間があっという間だった。十二月も楽しみ。

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