能の秘曲「道成寺」⑧
鐘が上がるとここからは勢いの勝負!地謡が終わると「祈(いのり)」と言う舞(ではないのですが・・・)になります。
立ち上がったシテが前シテで着ていた唐織を身体に巻き付けます。これが慣れないとなかなか上手くいかない・・・打杖が暴れたり唐織が垂れ下がったりすると興醒めです。しかしあまり時間を掛けすぎると舞台がダレてしまいます。
この作業が終わり、シテが打杖を横に出すとそれが合図で囃子がテンポアップします。此処からは太鼓がシテの方に合わせて囃子をリードしていきます。襲いかかる蛇身!それを数珠を揉み法力で退ける僧との息詰まる攻防、一度目は舞台で、二度目は橋懸かりでワキに近づきながら押し返されるシテ。するとシテは橋懸かり付け根にある「シテ柱」に取りすがって柱を巻くように半周します。これを「柱巻」と言います。
更に舞台でワキに詰め寄りますが力及ばず蛇身は鐘の下で祈り伏せられますが、最後の力を振り絞って立ち上がり今一度ワキに襲いかかります。しかし最後は自らが日高川に飛び込んで姿を消し、僧は鐘の供養を無事に成し遂げ、晴れやかに本坊に帰っていきます。
最後の幕入りは幕の直前で飛び込むようにジャンプし、後見も幕で巻き込むように一瞬でシテが見えなくなるのが最高と言われました。幕の裏側で正座したまま滑っていったのを覚えています。(後で見たら青痣になっていました)
その後ワキが幕に入ると狂言の後見が登場し鐘を舞台に下ろして綱をきちんと鐘に巻き付けていきます。綱が笛柱の環(かん)を抜け、後見が綱を狂言に渡すと鐘後見の仕事は終わりで、切戸に引きます。
その鐘を太い竹の棒で持ち上げて幕に引き、最後に囃子方と地謡が退場してこの曲は終わりになります。舞台がシーンとなってから優に10分近くかかりますが、この間はまだ「道成寺」の曲中です。出来ましたらここまで静かに見守っていて頂きたいとお願いするばかりです。
◇公益財団法人鎌倉能舞台HP http://www.nohbutai.com/
◇「能を知る会東京公演-道成寺」
◆日時 2021年6月20日(日)13:00
◆会場 国立能楽堂(JR千駄ヶ谷駅下車徒歩5分)
◆入場料 正面自由席13,200円/脇中自由席9,900円
◆演目
講演「隔てるもの・乗り越える力」葛西聖司
仕舞「清経」津村禮次郎
「海士」永島忠侈
「融」 駒瀬直也
狂言「樋の酒」野村萬斎
仕舞「砧」 観世喜正
「卒都婆小町」観世喜之
能 「道成寺」中森健之介
詳細 https://blog.canpan.info/nohbutai/archive/816