【綿町ダイアリー】#85 ウィングスの頃
18:00。
綿町カフェを閉める頃、辺りはもう暗い。
僕はランの格好に着替えて家へ向け走り出す。
道路沿いの歩道は往来する車のライトで明るいものの、夜の通勤ランはあまり気分爽快ではない。
そういう時は音楽に頼ろう。
スマホをスクロールしていると懐かしいジャケットに手が止まった。
ウィングス・グレイテスト・ヒッツ
1978年発売ポールマッカートニーのバンドアルバム。
中高生の頃、鬼リピしていたアルバムだ。
1曲目の「アナザーデイ」から心を奪われる。
魔法のように一瞬であの頃の僕が蘇る。そして、じわっと涙がこみあげてくる。
音楽ってスゴイな。
地味な夜ランが一気に華やいでいく。
勝原区のあたりで再び1曲目の「アナザーデイ」がリピートされる。
11キロの通勤ラン。
僕はすっかりあの頃に戻っていた。