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書評:清く楽しく美しい推し活 ~推しから愛される術
現在推し活中の #下町ノ夏 さんのリツイートで知った「清く楽しく美しい推し活 ~推しから愛される術」https://www.amazon.co.jp/%E6%B8%85%E3%81%8F%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E7%BE%8E%E3%81%97%E3%81%84%E6%8E%A8%E3%81%97%E6%B4%BB-%E6%8E%A8%E3%81%97%E3%81%8B%E3%82%89%E6%84%9B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E8%A1%93-%E6%B2%B3%E8%A5%BF-%E9%82%A6%E5%89%9B/dp/4809031926
実は現在 #下町ノ夏 さんの推し活の真っ最中です。いつも参加してる夏さんのツイキャスで、この本を紹介していて関心を持って買っちゃいました。ツイキャスではSNS での転載などの注意を中心に紹介していたので、著作権がメインの話かと思ったら、推し活全体で気になるところをツボに届くように網羅しています。特にアイドルやプロダクションの弁護士をしている立場から、アイドルとファン両方の立場に立って、お互いの気持ちの橋渡しができているところが最大の推薦理由です。
2009年から2年間渡米して、サンディエゴ の大学(UC San Diego)で研究員していたんですが、そのとき最も楽しかったものの一つはクルーズ旅行でした。特にアラスカクルーズでは全然知らずに実は世界でも最高級の豪華なCelebrity Cruise に乗ったんですよね。ほんと豪華ですごかったんですが、毎夜一流のショーが見られたのも醍醐味の一つでした。そしてびっくりするほど嬉しかったのが、前日のショーのスターが翌朝ラウンジで、隣の席に座ってたりするんですよ。当時、こういうのは庶民だと有り得なくて、ホントワクワクしたのを覚えてます。現在の推しの #下町ノ夏 さんは結構ファンとの間が近くて、同じような距離感を楽しんでます。特にSNS やツイキャスで、ネットで双方向になっていて、コミュニケーションが頻繁に出来るので、ラウンジの目の前に座っているよりも身近に感じられます。
でも人気のアイドルになればなるほど、なかなかファンが推しに近づく機会が少ないし、ファンも多いので、全員に目配せできないですよね。そうするとどうしても間の心理的な距離も大きくなりますし、また、認知されようとして無理な推し活をしようとするようになります。また、現在の私状況のように、推しに近ければ近いほどわきまえなければならない一線が更に大切になりますよね。本書はどういうところに超えてはいけない一線があるかを、単に結果だけでなく、それがファンだけでなく、推しにとってなぜ大事なのかを、推しの気持ちを代弁しながら、法的な観点も含めて説明しています。そういう意味では非常に共感が持てて、読んで良かった本です。
以下、ネタバレにならないようにちょっとだけ概要を。ちなみに著作権の話がこの本でも、今後私も多用しますが、著作権の大原則は著作権は内容ではなく、表現を保護するものです。なので、表現を変更する書評は著作権にならないのが大原則です。と言っても表現と内容を分離するのはほぼ不可能なので、内容も関わってくるし、またオリジナルを毀損するような改変はむしろ問題になります。
case1 推しに近づきたい!? 出待ちは脅威?推しの本心
タレントはパーソナリティ全てが売り。これは芸能活動をしているアーティストと一般の職業との1番の違いかもしれません。タレントはプライベートも含めてその人自身すべてが人気に影響します。ほんとにプライベートの確保が難しい職業だと思うんですよね。なので、プライベートをいかに守ってあげるかが、ファンの最大の役目じゃないでしょうか。
case2 当落で一喜一憂!?推しに会いたい! チケット転売で刑務所行き!?
チケットの不正転売の禁止。これは経済学者的にはより詳しい議論をしたいところです(ポイントは転売できるということは、推しのチケット価格が安いんですよね。なのでもっと高くつけてもいいんですってことなんですが)。それはまた別の機会に。ただ、絶対転売できないかというとそうではなくて、推しに許諾を取ればいいんですね。実はそういう転売を許可する仕組みも最近の法改正で実は義務付けられたとか。
case3 愛の言葉を推しに届けたい! 愚痴垢炎上!?許すな誹謗中傷
推し活で誹謗中傷とかありえないですが、叱咤激励だと思ってきつい言葉を言ってしまう場合がありますよね。そういう場合は相手の受け止めなので、そこは注意ですかね。特に本書では、「上から目線のダメ出しはちょっとね」とあります(p103)。でも下町ノ夏さんどちらかというとキレ芸のボケツッコミだから、ちょっと冒険したいんですよね。限界に挑戦(違。
case4 全通上等!?推しに認知されたい! みんなで作る楽しい現場
過激な応援行為など、握手会等のイベントやライブでの迷惑行為等について解説。見かけた場合の対処法も紹介しています。撮影禁止のところでの撮影は当然ご法度ですが、過激な活動で、他のファンに迷惑をかけるのも注意しましょう。
case5 推しの最高ビジュを見てほしい! 推しの「布教画像」は違法!?
基本著作物のコピーはダメです。使っている場合は著作料を払っている場合がほとんどで、少なくとも許諾をとる必要があります。推しの写真と一緒に写っている場合(写り込みといいます)も、推しの写真がメインだとまずいみたいです。
ここについては、実はSNSやデジタル著作権隆盛の現在、著作物(推しの写真や推しを自分で撮った写真も含む)を自由に利用して良い範囲が拡大しています。これをフェアユースといいます。たとえば、コロナ禍では大学のテキストをコピーしてオンラインで配布することも特例で2年間だけ認められていました(今後延長を期待したいところです)。たとえば、SNSの場合、SNSに備わっているシェア機能を使う場合は問題ないという弁護士ドットコムの記事で見たことがあります。たとえば、インスタは基本シェアができないですが、ストーリーでシェアは認められています。24時間ならば大丈夫ということでしょう。
case6 推しのグッズに囲まれたい! 欲しいグッズが買えない!
グッズに関しても著作権がありますし、特に自分でグッズを作る場合、それを転売するのは違法です。当然自分で作って楽しむ分は問題ないですけど。
おわりに。
実はこういうデジタルの著作権の話は2008年くらいに研究してまして、成果は以下の本の4章に纏めています。「著作権保護期間 延長は文化を振興するか?田中辰雄 林紘一郎 編著(https://www.keisoshobo.co.jp/book/b25920.html )」この本をきっかけに福井健作弁護士他、著作権やデジタル関係の研究をしている研究者とも多く知り合って現在も交流があります。ないのは津田大介くらいかなw。ただ、いろんなことやってるので、その後渡米して、帰国したらJICAからパキスタンへの派遣の要請があり、国際貢献のほうに研究がシフトしていたので、10年ぶりに推し活に押されてフォローアップするかなあと。ということで、買ったのがこの本ですが、なんと当時お世話になった、東大名誉教授の大御所の中山信弘先生の著作権法の第3版(http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243330)がさらに分厚くなって、出てるんですね。ということで、この改訂版から始めようかなあと。