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ゴールデンウィーク

ガブリとメロンパンに齧り付き、ふむふむふむと頭をゆらしながらおいしい牛乳を流し込み、ベトついた指で打ちづらそうにこれを書いている。

ゴールデンウィーク何してたのと200パーその話題が出るだろう。イギリスに行ってくる、なんて同僚もいる中で、ちょこまかした予定とやるべきだけどやりたくないことと向き合う事で9連休はあっという間に過ぎる事実を何度も経験してきてしまった。
「最近は友達も捕まりにくくなってきたなぁと言う肌感覚を得ましたねぇ」そう答えるつもりだ。赤羽のここ行こうぜと馴染みの店のURLを送ったものの、今月金欠なんだよなぁと返ってきてしまった。彼が彼女との交際費に注ぎ込んでるのも聞いていたが、そんな大学生みたいな断り方しなくてもいいじゃないか。オレが出すよー、と言うこともできるが、そういうことではないのだということも、悲しいかな勘づいてしまう人生となってしまった。少なくとも5日後に集まって飲む約束をしているし、今日明日の暇人相手をするほど暇ではないらしい。
私はその場その場で話が展開していく生活が好きなので、今日今すぐとか、夜中にとか、明日急にとか、そういうのにワクワクするたちなのだ。シェアハウスではよくあったけど、普通の感覚ではないらしい。

やるべきことはたくさんあるが、率先してこれがしたいということじゃない。言い換えれば平和なのだが、いずれやらなければいけないことなのに、やりたくなくて暇状態になっている。
お腹が空いていれば飯でも作るかとなるが、カロリーの高そうな美味しいカレーとカロリーの高そうなチーズケーキを昼時に食べてしまったせいか胃も重いままだ。
ピアノにもギターにも触りたい気分でもないしましてや声も出したくない。
いつの間にか暗くなってしまった。
走りに行くのがベストなことはわかっている。
シャワーも浴びて、やっぱ運動だよねーと気分が軽くなりそのままピアノの前に座ることができる。でも走りたくない。雨の後の湿った空気に触れたくないのだ。
見たいドラマもYouTubeもみた。観たいけど体力を使うアニメはちょっと今はノーサンキュー。そういえばさっき「推しの子」のアニメを一話だけ観て、大変感銘を受けたけど、こりゃ心して観ないとだなぁと思ってそっ閉じしてしまった。水星の魔女のシーズン2もみなき、、ゃ、、春樹、、村上春樹、、そうだ!

村上春樹の新作が読みたい!!

そうです、先月発売されたはずの村上春樹の長編新作を、まだ買っていなかったのです。ぶち上がる身体、溢れる脳汁、これだ、今やりたいことはそれだ!!
読みかけの本もあるし、ラジオ聴くので忙しいしどうちようかなあと思ってスルーしていた新刊がここで堂々の興味関心第一位を掴みにきたのです!
お外は寒いかもしれないからセーターをきて、スニーカーをはいてお外に出るとなんなんですかこの湿気。ちょうど良い気温なのにジメジメジメジメと、湿度100%を超えていそうなサウナ感。それにしてもあれですね、みなさん装いが夏ですね。

それはさておき最寄の本屋に勢いよく駆け込む私。そこにあるに決まっている、だってポスター貼ってあるもん。でもないんですねぇ。ん?村上春樹の新しい本ないの?売り切れ?売れ過ぎて切れた?メルカリで高値で買わなきゃいけないやつ?発売前?
まぁ駅前の小さい本屋ですから、まぁそんなこともありましょう。仕方なく、もう一つの辛気臭いあんまり行きたくない方の本屋に向かいましょう。なんだか駅前も普段の日曜日とは違った連休独特の雰囲気がありますね。
暗い夜道を歩き辛気臭い本屋に向かう、あ、こんなところにゴルフショップが、、用事はあるけどめんどくせぇ、とかなんとか言っている間に、辛気臭い本屋は日曜定休!

こうなったら、隣の駅まで歩く人間ですよ私は。一駅電車乗って本買ってまた一駅乗ったら350円くらいかかりますね?ということは一駅歩いて本買って一駅歩いたらその本は350円割引になりますね?30分の有酸素運動付きですね?そりゃ歩きますよね?

隣駅は大好きな本屋が2軒もあるのでそこに村上春樹が無かったら何かが起こっているに違いない。ニュースになってて然るべき。ちなみに必然性のない歩きは嫌いなので、村上春樹スペース新刊とかで検索してみる。んー特に在庫がどうこうのニュースはなさそう。本屋の営業時間もまだ大丈夫そう。一旦家に戻ってイヤホンを取りに帰る選択肢もずっとありましたが、たぶん横になってしまうのでそのまま歩く。

こうやって、本一冊買うのに何いろいろ考えてんだって感じで歩く。段々とエッセイの構成とか考えちゃって、いやいやこれから本読むんだけどなぁと思いつつ読み始めちゃったら本の内容に頭は占領されるに決まってるし、んー帰ったら書くー?なんて考えながらエスカレーターを登るともうホント書店の1番目立つところにドーン!村上春樹!新刊!ドーン!って、そりゃそうだよこれが見たかったのよ、と、店にも入る必要なく購入。こんなに分厚いとは、、今日中に4時間で読もうと思ってたけどこりゃ10時間コースかも、、。

好きなCDとか本とか漫画とか新しいの買って読む時ってお菓子とか飲み物とか揃えたくなるじゃないですか。最近あんまお菓子食べないからコーヒーゼリーかなーでもスプーンめんどくさいからなぁと思っていると、お店を閉めそうなパン屋が。パンって美味しいじゃないですか。いちごのタルトが呼んでいたので入って、チョコのデニッシュもいいなーってトレイも持たずに物色していると、店員さんが小声で「〜トになりますー、、店内のパン20%オフになりますー、、てん」っていうわけですよ。20%オフって嬉しいじゃないですか。なのでトレイとトングをとってそのチョコデニッシュと、視界の片隅に入っていたメロンパンにトングを向けたんですね。メロンパン、サクサク系のが良かったんですけど、トングで掴んだらムニュっとしてて、あー!やめたい!これじゃない!と思ったんだけど、トング、刺さっちゃってて、店員さんもすぐ目の前にいたし、んー!仕方ない!刺さってるし!そのメロンパンにして、イチジクのパイも迷ったけど別にお腹空いてないから!と思ってそれらを購入。上の階ではPayPay使えたのに、ここでは使えないんですね。。

相変わらずジメジメした空気のなか、分厚い本とパン、すぐ近くの薬局で買った牛乳をぶら下げながら最短のシンプルコースで帰宅。推しの子は、目の輝きの表現が素晴らしくて、光を失ったりするとその心象がよく伝わってくる。日常の目の光と、ステージ上の目の輝きは別物で、たとえそれが嘘の輝きだとしても、それを目の当たりにした人の心を鷲掴みにしてしまう。小さい子供がキックボードに乗っていて、お父さんがスケボーで追いかける。それを私は大丈夫かなと思いながら見ていたんだけど、ちょっと後ろをベビーカーを押すお母さん(美人)が歩いてて、私と目が合うなりニコッとして彼らを追って行った時、私の目は大丈夫だっただろうか、ちゃんと光が灯っていたかなと思う。大学生のとき、シェアハウスのとき、日常のほぼすべてが私のステージであったように思う。全方位に気を張って、アンテナも張って、先のことは何もわからないからそれを知りたくて、たくさんの初めましてを全力でやる、中井です!!みたいな。それはめちゃくちゃ疲れる。今は明確にステージと、その他の時間っていうのがハッキリしてて、とにかく疲れたくないみたいな、結局疲れるんだけど、そんな感じ。

サクサクを狙ってないメロンパンをオーブンでちょっと焼いて、ちょっとのつもりがアーモンドが黒焦げになってしまったチョコデニッシュと牛乳を並べて、目の前にある村上春樹「街とその不確かな壁」を、これから読みます。

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