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見城徹著「たった一人の熱狂」を読んで

あまり、普段からビジネス本を読まないのですが、そもそもこの本をビジネス本としていいのか、自伝のカテゴリーに入れていいのかわかりませんが、元気がないときに読み返す本、それが、見城徹さんの「たった一人の熱狂」です。
作者は、言うまでもなく、幻冬舎の創業者、担当したのが有名編集者の箕輪さんです。

YouTubeで、見城さんと箕輪さんの直接対談等で、この本が出来上がったエピソードをいろいろ聞くのも楽しいですが、やはり、本を読むとその熱量をダイレクトに感じることができます。

今は、見城さんは幻冬舎の創業者として有名ですが、私個人としては、どうしても角川書店の「野生時代」、「月刊カドカワ」の印象が強くあります。そもそも、これらを夢中になって読んでいた世代ということもありますが、特に坂本龍一さんや、尾崎豊さんの特集があった号の切り抜きは、今でも大切に持っています。

当時、あまり売れていなかった月刊カドカワを、一気に何倍の売り上げの、メガ雑誌に育てたのが、見城さんでした。

私が読んでいたころは、面白い雑誌だなあと思いながらも、まだ見城さんのことはまったく知りもしなかったのですが、前述した「たった一人の熱狂」を読むと、そこらへんの経緯がわかって、今さらながら、それは当然ヒットするなあと思ってしまいます。

今の幻冬舎は、総合出版社となっていますが、やはりその根本には見城社長の文芸への限りない愛があります。

見城さんが編集長だったころ、五木寛之さんや、石原慎太郎さんの小説を読んでいるだけではなく、文章のすべてを暗記していて、原稿依頼するために、目の前で諳んじてみせたというのは有名な話です。

たぶん、これをされて、気持ちが揺らがなかった小説家はまずいなかったと思います。見城さんに圧倒的な熱狂を感じて、必ず心を許したはずです。何しろ、これ以上の作家冥利に尽きることはないですから。

私もこの見城社長の本を読んで、特に起業する参考にするとか、働くための熱意を補うとかではなく、ただ単純にいち作家として、真剣に作品と向き合わなければならないなと思って、襟を正されます。

それこそ、作家なら一文も無駄にしないように書き、一文を諳んじたくなるような熱狂的な読者を得ること。それが文芸をやろうと思う者の最低限の心意気だと思えるからです。

と、いいつつもやはり、どうしてもそこには才能という壁が存在します。「歌える鳥と、歌えない鳥がいる」。という残酷な現実が存在します。

それを前にして、ついめげてしまう。雑な文章で妥協してしまう。とりあえず書いて出せば(応募等)いいやと思いがちです。

しかし、作者が自分の作品にまず熱狂できなくては、他人を熱狂させることなんてできません。その熱狂のエキスを吸い取りがたいために、この本をつい読み返してしまうのです。

「たった一人だけの熱狂」
どの芸術分野でも作者は孤独です。そして、自分の作品は、自分しかわかりません。自分を含めての熱狂の渦を作ること、その大切さは、この本は教えてくれます。

そして、単純に書き続けることが勇気づけられます。もちろん、文芸の創作者だけではなく、どうやって働いていったらいいのか、わからなくなっている人にもおすすめです。


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夢はウォルト・ディズニーです。いつか仲村比呂ランドを作ります。 必ず・・たぶん・・おそらく・・奇跡が起きればですが。 最新刊は「救世主にはなれなくて」https://amzn.to/3JeaEOY English Site https://nakahi-works.com