会社の価格を決めるのは、M&A仲介会社でも税理士でもない
M&A(譲渡)の相談を受けると、必ず、「うちの会社はいくらぐらいになりそうですか?」という話が出る。
株主としてはそれが一番大事なことなので、知りたいのも当然。
決算書などの財務関連資料を色々頂いて、色々と質問にもお答え頂いた上で、私として考える現実的な価格感を提示する。
〇円~〇円ぐらいですかね、という感じ。
このように価格感を提示すると、その会社の顧問税理士が出てくることがたまにある。
数字のことは税理士がプロフェッショナルだと思われている経営者が多く、私からお伝えした価格が正しいのかを確認されたりする。
税理士は、株価算定で一般的な3つの分類、コスト・マーケット・インカムに沿って、教科書通りの計算をする。
また、社長のところは良い会社だから高く売れるんじゃないですか、なんてことを言ったりする。
そうして出てくる株価が、私が提示するものより高いと、売主は当然「なんだ安く売ろうとしているのか?」となってしまう。
しかし、これは全く違う。
結論から言えば、会社の価格を決めるのは買い手だ。
買い手がいくらなら欲しい、という条件を提示する。
売り手はそれでよければ受けて、安いと感じるなら受けないだけ。
会社の価値に決まった金額があるわけはなく、外部環境の影響も大いに受けながら、買収したいという人が金額を決めていくのだ。
じゃあ買い手はどのように価格を決めるのか。
これは買い手によって全く違う。文字通り、全く違う。
同じ会社に対して10億円という会社もあれば、3億円という会社もある(実話)。
それぐらい、買い手によって、全く違う。
何故変わるのかと言えば、モノの価値が人によって変わるように、会社の価値も会社によって変わる。
例えば、買収することで自分の会社の売上が20%伸びる見込みの会社と、買収によって特に自分の会社は影響を受けない会社とでは、前者の方が高い価値を感じるのは当然だ。
価値を高く感じれば、より高い値付けも可能となる。
とはいえ、相場というものはある。
あまりに安すぎれば、売主からすれば全く売るメリットがなくなってしまうし、高すぎれば買い手にとってのメリットがなくなってしまう。
双方の意向を踏まえて、〇円~〇円ぐらい、というような相場ができる。
そして、この相場は、業界によって異なる。
なので、業界のことを知っていないと、相場から外れた見当違いの価格を出してしまう。
このように、その業界の特徴と、買収候補企業の過去の買収実績や株価算定の実績などを踏まえて、私としては〇円~〇円、というように価格を提示する。
残念ながらこのような内容は書籍に載っているものではなく、経験値や同業者間の情報交換などによってしか、手に入らない。
お金のプロフェッショナルである税理士だが、M&Aの実務経験のある人は、実は殆どいない。
調べたことはないが、99・99%経験ないと言ってもおそらく過言でないと思う。
なので、教科書通りに計算した株価は現実と乖離してしまうことが少なくなく、またどういう会社が高く売れるかなんていうことは分かりようもない。
ということなので、M&Aの相談に関しては、とにかくM&A実務の経験がある人に相談されることを推奨する。
M&Aに関する本はたくさん出版されているが、書籍と現実は大きく違う。
但し、営業色の非常に強い業界に近年変わってきてしまっているので、営業トークに絆されずに、信頼できると思えるような担当者を是非探してほしいと思う。