近代という時代区分
近代という時代区分
中世→近世→近代→現代という時代区分は、その定義の仕方が諸説あり、地域によっても変わるので、細かく語るのは案外難しいものだが、しかし、歴史をざっくり理解するにはとても便利なものである。
そして、僕は近代という時代に注目することが多い。それは現代人類社会での矛盾や不合理、諸課題の元凶が近代にあることが多いからだ。一方で、近代の成果を忘れてしまったことで、現代が退化しているという事象もある。近代が全て悪ということでも無い。歴史には必ず二面性がある。
近代→現代の境界線がどこかと言われればそれは第二次世界大戦終結時である。と、思っていたが、欧米では第一次世界大戦のほうを境界線とする認識のほうが多いらしい。しかし「現代」というものは年々長くなっていく訳で、近代と現代の境界線も後ろへ移動していく傾向にあるらしい。
近世→近代の境界線は地域によってかなり違いがある。まずはここから注目してみたい。近世から近代に変わるエポックメイキングは産業革命と市民革命である。
イギリスにおける最初の産業革命は18世紀から19世紀にかけてゆっくりと進展したものである。技術革新が工業化につながるが、その変化のスピードは、当事国イギリスよりも、あとから導入した他国のほうが、より劇的であり、「革命」と呼ぶに相応しい現象であった。
市民革命のほうは、言わずと知れたフランス革命が発端となる。その後ナポレオンが欧州全土を席巻することで、その「意識」が欧州全体に広がり、国民国家という概念が広がる。これは近代が戦争に明け暮れる要因にもなった。
アメリカでは建国そのものが市民革命と位置付けられるので、アメリカ合衆国の歴史は近世が無く、いきなり近代から始まるとも言えるが、近代らしい工業化が進むのは第二の独立戦争とも言われる米英戦争がきっかけとなる。
近世→近代、関連時系列
・1776 アメリカ独立宣言(独立戦争は1783年まで)
・1789 フランス革命開始
・1812 ナポレオンロシア遠征失敗
・1812~1815 米英戦争(アメリカ北部工業化のきっかけ)
・1834 ドイツ関税同盟(ドイツ連邦・プロイセン)
・1868 明治維新
これらの年号を暗記する必要は全く無い。
要点としては、市民革命によって中産階級が台頭し、産業革命によっての格差拡大から大資本家が登場したこと。国家の政体が、帝政や共和政など多様化し流動的になったこと。民族意識の高まり、国民国家という概念が浸透し、それが戦争の要因になったこと。工業化により兵器の性能が高まり、又、戦争が王侯貴族のものから国民自身のものになったことで、戦争被害が甚大になったこと。などが近代の特徴となる。
そして何より、イギリスが世界の覇権国となり、列強がそこに追いつき追い越せと争ったことで、世界中の人々が否応もなく「近代の荒波に巻き込まれた」こと。歴史は常に弱肉強食ではあったが、それが世界規模になり、地域の中では強者でいられた者も容易く蹂躙される側になる事態となり、危機感を抱いた者は自らの国を改革した。明治維新はまさにその成功例と言えた(最終的には敗れることになるが)。
余談ではあるが、多くの現代日本人は「日本の近代を必要以上に否定的に捉える」傾向にあるような気がする。一方で、その反動からなのか、「日本の近代を必要以上に肯定的に捉える」主張も一部で見られる。
これからおそらく何度も繰り返す台詞になろうと思うが、歴史とは必ず二面性がある。これを忘れてはいけない。必要以上に否定することも、必要以上に肯定することも、どちらも正しい姿勢ではない。
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