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「色の甘み」掌編小説
飴色の縞模様が目立つチークの机に、青と紫の点々が散りばめられた硝子皿をそっと置いた。
白の棚から、金平糖が入った小袋と、琥珀糖が詰められた瓶をそれぞれ手に取る。
琥珀糖を硝子皿に十数個ほどカラカラと並べた後、小袋が空になるまで金平糖を注いだ。
ただ皿の上に乗っかっているお菓子を眺めるだけで満足してしまいそうになる。
アメジストやサファイア、ピンクの水晶、エメラルドなどを模した琥珀糖の周りをこれまた色鮮やかな、小粒の金平糖が取り囲んでいる。
私はそれらをしばらく眺めたあと、硝子皿に手を伸ばした。縁を人差し指で押さえ、ズズズと胸元へ引き寄せる。
そのまま適当に金平糖を三粒摘み、鑑定するかのようにまず目で味わった。水色、桃色、白、そのどれもがとても愛おしかった。
少し惜しい気持ちを抱えながら、金平糖を口へ運んだ。三粒はどれも違う色なのに、一度舌で溶かすと、みんな同じ味がした。強い甘みと硬いものが砕けた感触が口の中で広がる。
もっと、この幸せな感覚を味わいたいと思った。
結局、少し経っただけで、金平糖はとても小さな砂糖粒を残して消えてしまった。残ったのは宝石に似た琥珀糖だけになった。
金平糖よりも、この透き通るか透き通らないか絶妙な加減の琥珀糖の方がずっと愛おしく思えてくる。出来ることならば、食べることなく一生残していたい。そう考えるほど美しい色合いをしていた。
澄んだ海をそのまま六面体の形に切りとったかのような琥珀糖をまず摘んだ。爽やかなセルリアンブルーが目立って、中身がどんな色をしているか気になった。
半分ほど口にくわえて、前歯でゆっくりと切り取った。シャクッとした感覚が歯から伝わり、金平糖よりもしつこい甘みが口の中全体を覆った。
半分に切り取られた断面を見ると、表面と同じように透き通った色をしている。相変わらず綺麗だった。
他の琥珀糖も同じように味わい、気づいた頃には砂糖のカスのみが皿の上で散らばっていた。
どこか物寂しく感じ、皿を片付けないままドアを開けて外に出た。
小雨が降っている。
この雨も甘ければいいのに。そう思って、顔にかかった雨粒を指でなぞって舐めた。
虚しい味がした。