謹賀ホルモン!「正月は肉を食べてはいけない」だとぉ!?
謹賀ホルモン!
あけましておめでとうございマルチョウ!
今年もよろしくお願いシマチョウ!
日本には、古くから伝わる「正月にやってはいけないこと」、つまりタブーが、いくつかあることをご存知だろうか。「三が日は掃除をしない」「元旦は風呂に入らない」など、一度は聞いたことがあるだろう。日本の伝統的なしきたりで、良い運気や福を呼び込む風習だ。
これらを厳密に守っていたら、なんと「肉」が食べられない事態に!?
今回は、肉にまつわる「正月のタブー」を考察してみた。
正月は「四足の動物」を食べてはいけない
正月のタブー、いわゆる「三が日にはやってはいけないこと」に、「牛・豚・馬など四足の動物を食べてはいけない」というものがある。
これは「肉食禁止令」から生まれた風習だ。
日本では、仏教伝来以降、明治時代まで肉食がタブーとされていた。仏教の教えにある「殺生禁断」に基づき、「新年においては、殺生を避けるべき」と考えられていたのだ。
◎ 人のために働く牛馬を殺して食べるなんて!
明治時代以降、文明開化とともに、時代は一変して肉食化となるが、それでも正月・三が日は、肉食を避ける風習は続いていた。
かつて、牛や馬は農耕と運搬に必要不可欠な使役動物だった。それだけに「新年早々、人のために働く牛馬を殺して食べるなんて、けしからん!」という考えもあったようだ。
なぜ、鶏は例外なのか?
しかしこのタブー、なぜか「四足の動物」に限られている。つまり「鶏」は食べても良かったのだ。「肉食禁止令」には、牛や馬などの四足獣だけでなく「鶏」や「魚」も含まれていたはずだ。
「鶏」が例外だった理由は、なんだろう?
◎ 鶏は「四足ではない」ので良し!
鶏の足は二本。四足ではないので食べて良し! という理屈だ。
日本の獣肉食の歴史を見ると「足が多いほど禁忌(哺乳類>鳥>魚)」と考えられていた。
おせち料理は魚が中心。地域性のある「お雑煮」の具で使われる肉が、ほぼ「鶏肉」だということにも納得できる。
ちなみに、おせちでは「酢だこ」も定番だ。「タコは、足がいっぱいあるじゃないか!」とツッコミたいところだが、タコ・イカは毛が生えていない小型海産動物の魚介類とみなし、例外となる。
◎ 鶏をさばくことは簡単だから
鶏をさばくのが簡単だということも、大きな理由だろう。
牛や馬を解体することは、誰もができる作業ではない。しかし鳥類なら、自分で狩ることも、さばくことも簡単だ。肉食を禁じられても、鶏を食べる習慣は、ひっそりと続いていたのだ。
消えなかった「肉食の習慣」
仏教伝来から明治時代まで約1200年もの間、肉食が禁止されていたことになるが、厳密に守られていたわけでもなかった。
人類は、縄文時代から狩猟をして肉を食べ、肉食の味に親しんでいた。ある日突然、禁止されたところで、この習慣をなくすことは難しい。
肉食禁止令が発令されてからも、「薬猟」などと称して、鳥獣の肉を楽しむ風習が続いていた。肉は貴重なたんぱく源だ。健康維持や病人の体力回復のために、薬代わりとして肉を食べていたのだ。
◎ イノシシは「山くじら」という魚だ!
江戸時代後期には、猪の肉を提供する店では「山くじら」という看板を堂々と掲げて営業していた。当時の人々は、くじら(鯨)は、海にいる魚だと認識していたので、食べて良し、としていた。
◎ ウサギは鳥なので「一羽二羽」と数えて食べよう!
ウサギも「鳥の仲間」として食べられていたが、その理屈も強引だ。
鳥と狩猟方法が同じだから
鳥と同じように、網に追い込んで狩猟したから、鳥の仲間とした鳥と骨格が似てるから
皮を剥いて肉にした骨格が鳥にそっくりで、大きさもほぼ同じだから二本足で立つから
鳥と同じように、兎も二本足で立つから(四足動物ではない)飛ぶから
大きく長い耳が鳥の羽のようで、ぴょんぴょん飛び跳ねる姿が、空を飛ぶ鳥のようだから「ウサギ」=「鵜(ウ)」+「鷺(サギ)」だから
「鵜(ウ)」と「鷺(サギ)」に当てはめて、鳥の仲間とした
ウサギは「一匹二匹」ではなく「一羽二羽」と数えよう。
現代にも引き継がれているこの数え方は、肉食禁止令の名残なのだ。
なんだかんだ理由をつけて、肉を食べていたという話だが、肉食の習慣は、肉好きの人たちによって、先祖代々ずっと守られ続けていたのだ。
そのおかげで、約1200年も肉食が禁止された時代を乗り越えて、おいしく肉が食べられる現代がある。食べるなと言われても、肉を食べたい気持ちは消せない。肉を欲する遺伝子は、ずっと受け継がれているのだろう。
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正月のタブーは、肉料理がつくれないものばかり!
三が日にやってはいけないこと、正月のタブーはいろいろある。ここでは「料理にまつわる正月のタブー」を、いくつか見てみよう。
1: 刃物を使ってはいけない
刃物を使うと「縁を切る」ことにつながるとされ、縁起が悪いと考えられていた。三が日に刃物を使わなければ「怪我をせず、一年を無事に過ごすことができる」「いつも使う包丁を休ませてあげる」などの理由もある。
食肉市場も休みなので、私もホルモンを切ることは、お休みしよう。
2: 火を使ってはいけない
台所や竃には、火の神様「荒神様」がいる。正月から火を使うと、荒神様を怒らせかねない。せめて元日くらいは、荒神様にもゆっくり休んでもらい、火を使うことを控えようという考え方だ。
そう。
こういうのは、もってのほかだ。
3: 鍋物をしてはいけない
煮炊きをすると「灰汁(あく)」が出る。「悪(あく)」に通じるので、縁起が悪いといわれている。
大好きな「豚しゃぶ大根おろし鍋」も、三が日はお休みだ。
正月のタブーは「肉料理どころか、料理自体ができないじゃないか!」と思うだろう。これが「おせち料理」を事前につくり、三が日に少しづつ食べるという風習につながっているのだ。
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肉が自由に食べられる現代に感謝!
肉にまつわる「正月のタブー」を、初めて知ったという人も多いだろう。現代は、しきたりなんて忘れてしまうくらい、新年早々、肉にあふれている。むしろ、肉の入っていない料理を選ぶほうが難しいくらいだ。
◎ 「ハム」は、お歳暮の定番!
お歳暮の定番「ハム」は、保存性が高く、切ってすぐに食べられる。のんびり過ごしたい正月に、喜ばれる贈り物だ。
実はこの習慣、明治天皇による「肉食解禁」に由来している。
日本にハムが伝わったのは、幕末の頃。オランダ人によってもたらされ、明治天皇に献上された。「特別な相手への贈り物」として認識されたハムは、その後、お中元やお歳暮のギフトとして定着したのだ。
日本でハムの製造がはじまったのは、1872(明治5)年。これは、明治天皇が初めて牛肉を食され、肉食を解禁した年でもある。ハムの歴史をさかのぼると、肉食文化の源流までたどりつくのだ。
◎ おせちを彩る「ローストビーフ」
時代の流れとともに「洋風おせち」が登場し、ローストビーフや生ハムが楽しめるようになった。これも、正月に牛肉や豚肉を食べることを気にしない家庭が増えている証拠だろう。
いきなりステーキには、肉だらけの「肉おせち」があるくらいだし、KFCもチキンのおせち『ケンタお重』を販売している。
「ケンタお重」は、鶏(チキン)・魚(えびぷりぷりフライ)・野菜(ポテト)で構成されているので、正月のタブーを破らずに食べられるね。
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今年も肉を食べまくるぞ!
みんなの「肉はじめ」は、何だろうか?
正月からコッテリしたホルモンを喰らったっていい。寒いからコタツに入って、冷たいビールとモツ鍋もいいだろう。
日本の伝統的なしきたりも大切だが、おめでたい新年こそ、好きな肉料理を、好きなように食べようじゃないか。
2025年も、肉を食べまくるぞ!