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備忘録#17 細川家の日本陶磁―河井寬次郎と茶道具コレクションー
珍しく早起きしてしまった。
ベッドの中でぐだぐだと午前中をすり潰すのが休日の定番なのだが、今朝は7時に目が覚めた。
せっかくだし気になっている展示でも観に行こうということで、朝食と軽い運動を済ませて、文京区の永青文庫へ向かう。
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お目当ては、令和6年度早春展として開催されている「細川家の日本陶磁―河井寬次郎と茶道具コレクション―」だ。
河井寛次郎といえば言わずと知れた著名な陶芸家であり、柳宗悦・濱田庄司と共に民藝運動を提唱した人物でもある。
友人の影響で民藝について興味を持ちはじめている私にとって、河井寛次郎の作品をまとめてみる良い機会ということで足を運んでみる。
表題にある細川家とは熊本藩主であり、日本・東洋の古美術作品を多くコレクションしていた家系だそう。
中でも、茶碗や茶入、茶壺といった「茶陶」を好んで収集しており、そんな流れで今回の展示が開催されている。
館内は写真NGだったので、作品が掲載されているサイトを貼っておく。
美を探求する
展示室には、河井寛次郎の作品がずらっと並べられていた。
第一印象として、作風の幅が広い。
制作年ごとに並べられているが、色や形がだいぶ違う。
彼の作品は初期・中期・後期と大きく3つに分けられる。
初期は、中国古陶磁に倣った技巧的で華麗な作品。
素人にも分かるほどの高い技術力で、非の打ちどころのない完成された1つの作品という印象を受ける。
また、鮮やかな色彩で華麗に表現されており、綺麗な文句なしの作品が多く並んでいる。
中期は、民藝運動と連動し「用の美」を追求した作品。
実用性の中に美しさがあるという思想で作られているため、素朴でシンプルな味わい深い印象を受ける。
個人的にはこの時期の作品が好みだ。
後期は、民藝の枠を超えた自由闊達で独創的な造形の作品。
いままでにない造形で、生命力のようなものを強く感じる。
第二次世界大戦を経て心境の変化があったのだろうか。
それぞれの時期にも多種多様な作品があり、同じものを作り続けるのではなく、新しいものを追い求める姿勢がうかがえた。
河井寛次郎の言葉にこんなものがある。
「新しい自分が見たいのだ──仕事する」
なんと力強い言葉だろうか。
常にこの気持ちで仕事ができているか?と自省する。
材料や技法の研究に明け暮れ、常に手足を動かし自分のやるべき仕事に取り組む。続ける。
表現方法は陶芸に収まらず、彫刻や建築設計、デザイン、書や詩など多岐にわたる。
その原動力は、美への飽くなき探究心だったのだろう。
同じものを繰り返さず、常に少しずつ変化していく。
絵を描いたり、楽器を弾いたり、文章を書くことだけではなく、仕事は全て自分の表現であるということを思い出させてくれた。
日常に美を見出すということ
河井寛次郎の作品の中で、中期の作品が最も好みだった。
私は民藝の思想に強く共感する。
名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語りました。
https://www.nihon-mingeikyoukai.jp/about/
良くも悪くも、現代はいわゆるマーケティング的な思想に支配されている。
資本主義の世の中において、これは避けられないことだとは思う。
誰かがバズれば、隣の人がそのフォーマットをそっくりそのまま転用する。次に続かんとばかりに皆がこぞって味がしなくなるまで擦り、気づいたら同質的な表現で溢れかえる。
オリジナルがなにか分からなくなり、皆がそれぞれ自分の表現であると錯覚する。
インスタグラムでは、皆が同じ服を着て、同じ場所でおしゃれな食事をし、華やかな日常を過ごしている。
本当に美しいものってなんだろうな、と最近結構考える。
暮らしの中にある、何気ないシンプルなものの美しさ。
それは風になびく葉の影だったり、等間隔に並んだビルの窓だったり、玄関に脱ぎ捨てられた靴だったり。
そういうものを美しいと思える感覚を大事にしたい。
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今日は成人式か。
振袖を着て大学の前で写真を撮る親子を横目に、そんなことを考えながら帰る。