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エッセイ集

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自分で書いたエッセイをまとめています。恋愛、生活、音楽などがテーマです。
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#短編

ろくでなしの恋

ろくでなしの恋

ろくでなしに恋をしていた。25歳から5年間。彼には人の心がない。

付き合っていた時期もあるし、そうでなかった時期もある。そうでなかった時期というのはつまり、体の関係だけあったという。ありがちな。しょうもない。わたしの友人たちや妹はみんな私を心配したし、他人には眉を顰められるような、そんな繋がりだ。
このエッセイに筋書や結論はない。ただ今の私が思い出せる彼との出来事と、感情が揺れた時と、恨み、その

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エッセイ「ろくでなしの恋」を有料公開しました

エッセイ「ろくでなしの恋」を有料公開しました

以前書いた記事を有料公開にしました。

たくさんいいね!をいただけて嬉しかった記事なのですが、恋愛のことを表に出したままにしておくのは気恥ずかしく、いったん引っ込めていました。
でも何か新しいことをやってみたくなり、再度公開しました。

わたしの恥と愚かさとあの頃の気持ちを絞り出して書いた、でもそのわりには澱みなく指が動いたエッセイです。

「あの時、あなたの横顔を眺めるのに夢中で、お酒の味がよく

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「真面目」呼ばわりか

「真面目」呼ばわりか

真面目だね、とよく言われる。例えば友人から。上司から。メンタルクリニックの先生から。
はっきり言って、わたしは真面目だと言われるのが嫌いだ。そう評されるのが嫌い。なぜか。自分でもそれがなぜなのか、長らくわからなかった。パートで役所に勤めていた際、与えられる仕事がなさすぎて、棚にしまわれた鉛筆の本数を数える仕事をしながら(信じられないがそれも在庫管理の仕事なのだ)考えてみたことがある。

真面目、と

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いつかは東京タワーの見える家に

いつかは東京タワーの見える家に

いつかは東京タワーの見える家に住みたかったね。

新幹線の座席にもたれる。平日の11時、下り、秋田行き。当然のように空いている。隣には誰も座ってこなかった。今日だけはそのことを心底ラッキーだと思う。
のびやかな車内チャイムが流れる。乗ったことのない人には説明が難しいのだけれど、秋田新幹線の車内チャイムには独特ののどかさがある。わたしはこのメロディが好き。耳にすると、旅の始まりの時はいつもわくわくす

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夏の思い出なんて何もねえ

夏の思い出なんて何もねえ

夏の思い出なんて何にもねえ。2023。

私のことはともかく、妹が結婚した。6月、両家顔合わせのために東京に行った。6月上旬だというのに気温は30度。この日のために買ったベージュのパンプス。会食に参加した全員が緊張していた。

レストランの最寄りは初めて訪れる小さな駅だった。とにかく暑い日だった。電車が来るのを家族と待つ。ホームで2歳くらいの小さな男の子とすれ違う。お母さんに手を引かれてきょろきょ

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