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患者を救うために医師・看護師になったんでしょ?! ~バイタルチェックの重要性について~
内視鏡処置につくスタッフの皆様へ。
あまりにもモニター管理ずさんじゃないですか?
そもそもバイタルの意味、ちゃんと理解してますか?
この言葉が刺さってしまったあなたへ。このままなんとなくのバイタル管理・モニター管理ではいつか重大な医療事故を起こしかねません。
すこしでもドキッとする方には是非読んで頂きたい内容です。
内視鏡におけるバイタル管理、モニター管理
そもそも内視鏡検査・処置を行う根本的な目的は患者さんを救うためです。
決して内視鏡を行うこと自体が目的になってはいけません。
バイタル管理を行うことは、患者さんを救うことを見失わないためにとても大切なことです。決して学生・研修医に任せていい内容ではありませんので勘違いしないでください。
バイタルとはABC、つまり
A:airway 気道
B:breathing 呼吸
C:circulation 循環
上記、3つを管理することです。
気道が開通していて、
呼吸が行えていて、
血圧が保たれている
この状態を保つことは医療のスタートです。
逆に、医療行為によってこのいずれもが崩れることは非常にまずいことであり、万が一崩れてしまった場合には即座に修復することが必須です。
修復する方法は基本的にはBLS、ACLSに基づいた対処になります。もしBLS、ACLSがよく分からない、という方はなるべく早くそちらのコースを受講することを強くオススメします。(日本ACLS協会 https://www.acls.jp/)
コースの受講費用は高く、内容も分かってしまえば退屈で単調なコースですが、分からない状態で臨床の現場にいること自体が非常に危険であることは自覚すべきです。
A,B,Cそれぞれの管理については以下の記事を参照ください。
検査を中止する覚悟
呼吸状態が良くなる見込みがない場合、
あるいは検査によって呼吸状態がさらに悪化した結果、急変する可能性があると予測される場合には検査中止を検討する必要があります。
内視鏡医が全く気にとめていない場合にはあなたから進言する必要があるかもしれません。
進言しなかったからといって責任に問われる事はないかもしれませんが、いつまでも後悔することになりかねません。
予定されている検査を直前で止めることは、他部署の職員には理解・想像できないほど大変なプレッシャーや労力があると思いますが、時には必要なことです。
あなたのチカラで患者さんを救ってください。
本当に内視鏡処置をすべきなのか?
消化管内の出血や胆道閉塞に対するERCPなどは内視鏡の重要性が非常に大きいです。
極端な話、消化管出血に対しては動脈に対してカテーテル処置で止血できるかもしれません。胆道閉塞からの胆管炎、そこからの敗血症性ショックに対してはPTCDで対応出来るかもしれません。あるいはいずれも手術でなんとかなるかもしれません。
ですが、一般的には侵襲を考えれば内視鏡処置が比較的低侵襲であり、ほかの処置よりも後遺症を残さないようにできる可能性が高いと考えます。
カテーテル処置であれば止血すべきでない血管も一緒に詰めてしまう可能性があり、それによって腸管壊死→穿孔をもたらすかもしれません。
PTCDは根本治療にならず、総胆管結石の場合には採石ができません。
一方で内視鏡特有の合併症リスクもあり、状況や患者さんの基礎疾患次第ではカテーテルや手術の方が全身管理がしやすい、内視鏡処置の方が高侵襲になる場合もあり得ます。
例えば憩室出血で極端に血圧が乱高下する患者さんに対しては、
大腸カメラで止血しに行こうにも、内視鏡挿入によって腸管が刺激され迷走神経反射を来してしまい、そこからショックを引き起こす可能性もあるため、補液等で血圧が維持できない症例に対しては大腸カメラを早々に引き上げて、あるいは最初からカテーテルで動脈塞栓に臨む症例もあると思います。
内視鏡のリスク評価をしよう
内視鏡処置が高リスクか考える上でのポイントは、
・迷走神経反射が起きやすいか、起きた時にどれだけ危険か
・処置が完了するまでの見込み時間はどれくらいか
・処置の成功確率はどれくらいか
です。
処置の難易度・処置に要する時間
特に挿入難渋している症例、あるいは処置が難しい症例ほど、
無意識に送気量が増えやすく、無意識に腸管も伸ばしやすい傾向にあるため迷走神経反射が起きやすくなります。
処置が難しくなる要因は様々ですが、
例えば、
複数回の腹部の手術後で腸管癒着していることが予想される場合には、
通常通りの内視鏡の動きにはならないため、
必然的に処置の難易度が高くなりやすい、と容易に予想がつきます。
その他にも、
処置時間が長くなるにつれて鎮静剤を要する量も多くなってしまうため、
当然、
血圧は下がりやすく、
鎮静は浅くかかりづらく
なっていきます。
実際に処置を行うべきか決めるのは内視鏡医ですが、
それをサポートするあなたも状況に納得できていないと気持ちがモヤモヤして処置に全力で臨めないのではないでしょうか。
危険な状態であっても、それを乗り越える価値が理解できて初めて処置の重要性、技術を高める責任、内視鏡処置の楽しさなどが理解できるようになると思います。
介助につくあなたも「私には関係無いからどうでもいいわ」と思わず、内視鏡処置の適応についても考えて見て頂ければ幸いです。