女性が全国転勤で働くということ
就活生の「転勤嫌い」という記事を目にした。
約7割が転勤を敬遠しているのだという。
「転勤は悪なのか?!」というインパクトあるタイトルで書かれた記事もあった。
就活生時代の私はというと、全国転勤制度について、そこまで否定的な考えを持っていたわけではなかった。
今となっては、それは私がかなり無知だったがゆえ、あるいはなんとかなるさぁとあんまり考えずにいたからかもしれない、と思うことが多くなった。
特に偉そうに意見するつもりもないけれど、自分が感じていることを正直に綴ってみようと思う。
■「あんた、よー泣かんなぁ」 号泣から始まる新卒配属
私は大学までの約20年間を九州で過ごし、就職を機に、初めて地元を出た。
将来を考えている恋人がいるわけではなかったので、外に出ることを制限する理由も特に無かった。
いずれは地元に戻って、家族を持ちたいという考えも無かったわけではないが、当時誰かに「まだ現れてもいない誰かのことを考えて、自分の選択を制限して良いの??」と言われ、確かにそうだ、とやけに納得した記憶がある。
私の会社は、部署によって勤務制度が異なる。そのため、同じ採用で入社しても、全く転勤がない部署に配属になる人もいれば、私の部署のように全国津々浦々飛ばされる可能性がある人もいる。
部署配属も、新入社員全員が希望どうりになるわけではないので、意図せず、全国転勤がある我が部署に配属になった同期も多数いることになる。
私の部署は、2~3年前から、新卒1年目は必ず営業として、自分とは縁もゆかりもない地方の支社に配属するという方針を取っている(世間の流れとは逆行しているのかもしれない。。。)。
その目的は、地方で営業マンとして活動することで、現場の現状を知り、経験値を高め、視野を広げる。。。。的な感じだった気がするが、そんなことを言っている弊事業部の長が、東京生まれ・東京育ち・転勤経験無しであることは、ちょっとした笑い話だと思っている。
そういうわけで、新卒の中でも、どこに飛ばされるかを非常に恐怖に思っている人も多く、配属式では、号泣する女子が多数の、よく分からない状況になったりする。
私はというと、念願叶っての配属部署であり、最初に「自分とは縁もゆかりもない地方の支社に配属する」と聞いてからは、本社(東京)・地元の九州配属の可能性が無いならどこでもいいやと腹を括っていた。
そのため、九州からは遠く離れた甲信越地方にある支社へ、1人での配属が言い渡たされたときは、もちろん不安もいっぱいにあったが、特段泣くほどでもなかった。
「あんた、よー泣かんなぁ。」と隣にいた同期から大泣きしながら言われたことを今でも覚えている(笑)
そんな経緯で、今の土地で暮らし始めて、ちょうど1年が経った。
最初の配属式では1粒の涙も流さなかった私だが、意外や意外、この1年間で、転勤族であるがゆえに、悔し涙を流すことが多くあった。
■全国転勤者がたった1人 配属先の支社の環境
私が配属になった支社は、
という環境であった。
支社の先輩方は、感謝してもしきれないほど素敵な方々ばかりで、良い雰囲気ではあるが、それでもやはり、総合職の私とエリア社員の先輩方とでは温度差があることは否めない。
「いいじゃない、Kikiはその分たくさんお給料もらってるんだから。」と、軽い気持ちで言われることも少なくない。
また、私以外、皆、現地採用の社員であるため、私と同じように、県外から来た転勤族コミュニティへのタッチポイントが得られにくい。当然元からの知り合いなんて、1人もいないので、プライベートで交友関係を広げようと思えば、必然的に、地元のコミュニティに入っていく必要が出てくる。
先に出た「あんた、よー泣かんなぁ。」と私に号泣しながら投げかけた同期はというと、他部署から同じ支社に同期が何人も配属され、週末の度に同期達と遊びに出かけ、楽しそうに暮らしているのが、インスタグラムのストーリーでよく流れてくる。(そりゃあ、仕事で行っている以上、彼女も彼女なりに悩んでいることがたくさんあると思うが。)
■女性×全国転勤からの連想ゲーム
そういう背景で、私は歳の近い先輩に連れられて、先輩の地元のコミュニティに顔を出したり、友達つくろうイベント的なやつに1人で乗り込んで行ったりするのだが、そこで悔しい思いをすることが多々あった。
転勤で来た当初は、先輩も良い話の種だと、「この子、九州から来た子なんですよー」と紹介してくれたり、初対面だとどうしても出身地の話になるので「九州から来たんです」と自己紹介していたのだが、この最初の瞬間から、どうも冷たい反応をされることが多かった。特に男性から、だ。
と、なぜか私の人生の選択が失敗とでも言わんばかりの嫌味っぽい言い方をしてくる男性たち。
と、自分も転勤族であるのに、なぜか「女の子」をやたら強調して、哀れな目で私を見てくる男性。
と、何を勘弁したらよいのかよく分からないが、やたら突っかかってくる男性。
つまり、冷たい反応の真相は、私が九州というかなり離れたよく分からない土地から来ているという理由からではない。「九州から仕事で来た→全国転勤→女性なのに転勤がある規模の会社に勤めている→しかもあえて一般職じゃなくて、転勤を選んでばりばり働いている」というところから来た嫌悪感みたいなものがあるようだった。
「男女平等社会」なんていうけれど、所詮、実際のところはこんなもんだよなあと思ったりする。
念のため言っておくと、上記の発言は、男女の出会いの場とか婚活の場の話では無い(将来を真剣に考える婚活の場となると、相手が転勤族じゃ、不安になる、、、みたいな感情も理解できなくはないので)。なのに、なぜこんな言われ方をされなければならないのか。
まあ、そんなに気にしなければ良いだけの話なのだが、彼らの発言によって、私のこれまでの人生でしてきた努力や選択が間違っていると言われているような気がして、悔しくて仕方がなくなる。
頑張って高校・大学に進学したのも、全国転勤がある会社でも良いと腹を括って就職したのも、色んな経験を積んで自立した素敵な女性になりたいと思ったからである。
ずっと仕事一本で働いて行きたいと思っているわけではないし、いずれは結婚出来たら良いなぁなんて考えているし、女性として子供も授かれたら幸せなことだろうと思う。
上記、発言者の男性たちから見れば、所謂「バリキャリ」に見えたのかもしれないが、良い人が見つかれば仕事をきっぱり辞めて、家庭に入っても良いなぁと思っているくらいには、実は中途半端な奴なのである。
ただ、もし自分に子供が生まれたときには、自分が経験してきた仕事や様々な人・場所の話をたくさんしてあげられるような女性になりたいなぁとそのために必死で努力してきただけである。
別に褒められたいわけではないが、批判されるような人生を送ってきたはずはないのに、女というばかりに、初対面の男性に人生を否定されるようなことを言われるのは悔しくてたまらなかった。
1人でこんなところにやってきて、毎日一生懸命生活してるだけなのに、なんでこんなこと言われないかんのや、と泣きながら帰るのである。
自分が転勤が嫌だと思っていなくても、周りが転勤者を受け入れてくれない。そういう場合もあるのだ。
■「転勤」するということ
そんなこともあり、最近はどうも社交の場に顔を出すのが億劫になり、
家で1人の時間を過ごしがちである。
先日、男性上司との面談で、「この地にやってきて、やっと1年が経ちました。1年経ってみたからこそ、分かってきたこともあり、地元に戻って仕事をしたいと思う時間も増えています。」とうっかり弱音を漏らしてしまったところ、
「なに意識の低いことを言っているんだ。やっと1年ではなくて、もう1年経ったんだぞ、自分がどうだとか、個人レベルじゃなくて、会社全体のことをかんがえろ! 俺だって、同じような経験をしてきたから気持ちは分かる、、、だがな、、、云々」と結構厳しめに叱られた。
その上司も、同じように新卒で、「現場の現状を知り、経験値を高め、視野を広げる。。。。」ために、地方配属になる経験をしてきた1人なので、状況を分かっている「つもり」だからこそ、そんな発言になったと思うが、
女性に対する地方での風当たりの強さを本当に理解できるのだろうか、この人は本当に地方で働くということを経験したのだろうかと疑問に思った。同じ「転勤」でも、1つ条件が違えば、仕事上でもプライベートでも全く生活が変わってくるということを本当に理解しているのだろうか。
人間が1人、生活の場を移動するということは、「仕事・業務」の一面だけでなく、「プライベート・将来」も含めたその人すべてが移動する必要があることを常に忘れてはいけないと思う。「仕事のために・会社のために」である。(そんなの当たり前だろ、分かってるわって突っ込みが入るかもしれないが。)
これは仕事を選ぶ私個人の立場からでもそうだし(就活生時代の私は上記の意識が薄かったのかもしれない。。。)、転勤をさせる会社の立場からもそうである。分かってるようで、実はみんな分かっていないから、問題になっているんじゃないかと思う。
「転勤は悪なのか」という問いかけに応えるとするならば、善か悪かなんて決まっているはずもないと私は思う。異動したくないという懇願する人を異動させればその人にとっては転勤制度は極悪にもなるだろう。私のように、今のところ、異動が制限される条件は何もなく、なんとかなるさーでやってきた者にとっては、別に転勤をすること自体は悪ではない。
あくまで弊社の場合であるが、上司と面談をするときに、仕事上の相談と、プライベートの相談はかなり切り離して考えなければいけない雰囲気がある気がしている。
「仕事のために・会社のために」、「仕事・業務」の一面だけでなく、「プライベート・将来」も含めたその人すべてを異動させた以上、上記二つの相談・悩みは本来切り離せないものではないのだろうか。
転勤先でコミュニティを形成しやすいような配慮であったり、その後のキャリアを考えやすいように、同じ境遇の先輩と配属をしたり、面談の機会を設けたり、業務内で出来る配慮というものが少なすぎるんじゃないか、と感じることがある。
■見知らぬ土地での生活1年で私が得ているもの
と、かなりつたない文章でつらつらと愚痴をさらしてしまったが、
もちろん転勤生活を楽しんでいる部分もかなりある。
エリア限定の社員さんが多いからこそ、地元の方の生活・感覚に近いところで情報を入れることが出来る。
様々な経験を積んで中途で入社している人が多いので、他の企業の働き方・考え方を1つの会社に居ながらにして知ることが出来る。
意を決して、1人で乗り込んで行った飲み会で仲良くなった歳の近い地元のお姉さん。高卒で、地元の工場で働いていて、社会人としては、大先輩。共通することの方が少ないような気がするけれど、それでも可愛がって、いつも現地の色んなところに連れて行ってくれる。(お姉さんにとっては何のメリットもなさそうな気がするが、人間、メリット・デメリットだけで動いているわけではないんだなーと思う。)
転勤者飲み会にこれまた1人で乗り込んでいき、知り合ったお姉さん。お姉さんも私と同じような悩みを抱えながら過ごしているが、私が今の生活が嫌になり、逃げだしたくなった時、支えてくれたのは、会社の上司でも、先輩でもなく、お姉さんだった。「Kiki、1年で分かってきたこともあるだろうけど、1年じゃ分からないことだって山ほどあるよ。ほら、あそこにも、あのイベントにも、あれも、まだいろいろやってないことあるじゃない。一緒に楽しもうよ。今までいろんなところに行ってきた私だから分かるけど、1年じゃ絶対に足りないよ」と。
「Kiki、九州から来たんや、親御さんも心配したやろ、大変よなぁ。ラーメン好きなら、せっかくならこっちのラーメンもいっぱい食べて帰んないとなー。」県外から大学進学してきて、そのまま現地で働いているお兄さん。おもろい子やなぁといつもラーメンに誘って連れて行ってくれる。
「Kikiはこっちで恋人作らないの??」「いやぁ、転勤がある、いつまでこっちに居るかも分からないって言ったらみんな嫌がるしねぇ。。。」
「ん????転勤あるかないかとか関係ある??ほんとに好きなら遠距離でもいいじゃん。そんな気にする???」と地元のお兄さんと恋の予感もあったり、無かったり。。。(笑)
なにより、ありきたりなことかもしれないが、地元を離れてみたことで、地元の魅力を再発見し、将来は地元のために貢献したいなぁと新たな夢が出来たりもした。
さみしくて、悔しくて、涙が止まらなくなるようなこともあるけれど、よくも悪くも転勤が無いと分からなかった経験をさせてもらえていると思って感謝もしている。
KIKI
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