【挿絵あり】№10_召喚術の授業は××な魔物と、 (月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生)
【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジーです。
この№2~№●まではBL版・ブロマンス版、共通になります。
「……、」
僕の答えは魔物が話し終える前から決まっていた。
「…契約をしても、僕ではあなたを抑えることは出来ません。
だから契約を結ぶこともできないと思っています…」
”契約を結ぶまで、お前をここから帰すつもりはない”
魔物はそう言っていた。
つまり僕は、”帰れない”選択をした。
「………」
帰れない。
ここで、魔界で、魔物に魔力を搾取されながら生きていく…
「っ”!……っ、…ッ」
家族にも会えなくなる。
色々な事を、無理やり諦めなければいけなくなる。
想像した冷たく暗い未来に怖気づき、息が乱れ手が震えた。
こんな選択、本当はしたくない。
魔物の言う通り本当に僕の魔力が特殊でそれだけが狙いなら、僕が恐れている悲劇は起きない可能性だってある。
「…、……………。」
ダメだ。
呼吸を深くし、動揺した息と心を宥める。
感情に流されてはいけない。自分の都合のいいように考えてはいけない。
甘い考えを握りつぶすように、拳に力を込めた。
”格上の魔物と召喚契約を結んだ結果起こる被害は甚大です”
諦めるんだ。諦めて、受け入れるしかない。
火の海と化した国、魔物が跋扈する都市、一飲みに食われていく人間、魔力や精魂を根こそぎ奪われた屍の山…
自分一人の命で到底贖えない災厄。
それを引き起こす可能性が少しでもあるなら、僕がすべき選択は一つしかないだろう。
(仕方ないんだ…これは、どうしようもない事なんだ)
僕は知っていたじゃないか、どうしようもない事が降りかかることを。
だから決めてたじゃないか、その時が来たら家族や周りにできるだけ迷惑をかけないようにしようって。
そのためにはまず、どれだけ辛くても現実を受け入れ諦めることから始めなければいけない。
(あー…こんな形で居なくなるなんて、とんでもなく迷惑な子供だよな…)
思わず天を仰いでいたら、つい未練がましい考えまで浮かんできてしまった。
…ああ。
ぼっち生活のお供にしてたシリーズ本の続きも、もう読めないのか。
こんなことなら楽しみにしてたあのお菓子、早く買って食べとけばよかった。
母さんと父さん、そしてあいつに「さよなら」くらい言いたかったな…
「っ"……、……」
俯いた僕の耳に、軽い溜息が届いた。
「仕方ないな…」
否と答えても魔物は悠然とした姿勢を崩さなかった。どちらでも構わなかったのだろう。
「では、これを使って魔力をお前から奪う。」
魔物はそう言って、ローブの内ポケットから一つ小瓶を取り出した。
紫に近いピンク色の透明な液体が、瓶の中で揺れる。
なんだろう。嫌な予感しかしない。
「これは、他の魔物から魔力を奪う植物が使う毒だ。
魔力の制御を狂わせ、植物が魔力を奪いやすくするために使われる。
…多少気分が悪くなるが、のたうち回るような酷い作用はない。」
と言われても安心などできるはずもなかった。
どうせ無意味だろうけども、体は魔物の手から逃れようとした。
しかし、見えない何かに阻まれて動けなかった。
それらは僕の唇もさわさわと擽って、口を開けと催促してくる。
口の中にまで入ってきそうな毛糸みたいなものに諦めて口を開けると、魔物が瓶の蓋を外すのが見えた。
そして僕の舌の上に不気味な液体を、ゆっくりと垂らした。
「!?」
今回はここまでにします~
ではまた~
1話目はそれぞれこちら↓
BL版↓
ブロマンス版↓
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