【読書録】満願 米澤穂信
あらすじ
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴(ざくろ)」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。
感想
最近TwitterのTLで歴代の本屋大賞のノミネート作品が流れてきたのに触発されて本作を手に取りました。結構前に購入しており、ずっと積み本になっていたので、ようやく読めたという感じです。本当に読書垢の皆様のおかげでこの名作を体験することができたといっても過言ではありません。
あらすじにある通り、本作は全6編の短編集となります。それぞれ全く違うテイストでどんでん返しを含む物語となっています。私が特に好きだったのは「柘榴」です。このお話は米澤先生の作品では珍しく、全て女性の目線で描かれています。そのおかげもあってかどこか湊かなえ作品のような雰囲気を感じました。どちら作品も好きな私としては一石二鳥ですね!
6編とも違う技法というかアプローチで書こうという意思が伝わってくるようなくらいに作りこまれていたのもとても印象的でした。直木賞を受賞した「黒牢城」もそうでしたが、米澤先生の常に小説での表現に挑戦し続ける姿勢には本当に圧倒されます。そして表現は異なるものの、そこに描かれているのはどこまでも「人間」であると強く感じました。これは米澤先生の作品に限らず、物語の本質であると思います。優れた物語には様々な「人間」が描かれており、その登場人物たちに共感したり、疑問を抱いたり、はたまた憤慨したり、、、こういったプロセスの一つが読書であると認識させられました。