【読書録】名探偵のままでいて 小西マサテル
あらすじ
「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか?
孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。
日々の出来事の果てにある真相とは――?
認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー!
感想
今年のこのミス大賞受賞作である本作。短編集ではあるものの、時系列順に話がつながっているので、連続短編集といって良いと思います。
正直なところ本作は後半の畳みかけは結構のめりこんでしまいましたが、純粋なミステリの質はそこまで高くはないと感じました。本作の一番の見どころはミステリではなく、「謎」を通して描かれる主人公(孫娘)と祖父の心の交流にあると思います。特に人間消失の話は、行方不明者が出たちゃんとした事件なのですが、真相はとてもほっこりするものでした。
登場人物たちにミステリ好きが多く、ミステリ談義かなり分量を割いていることから、著者のミステリ愛が伝わってきました。それでいて今まで読んだことない新しいタイプのミステリであると感じました。ラジオの構成作家さんということですが、とても小説デビュー作とは思えませんでした!
さいごに
私は社会人になる前に祖父を二人とも亡くしています。そのせいもあってか最近祖父が現役働いていたころの話を聞いてみたかったなと感じるようになりました。
私の祖父たちは本作の探偵ほど頭が切れるわけでも、ミステリ好きでもありませんでしたが、たくさん優しくしてもらったことは覚えています。ミステリを読んでここまでノスタルジックになることも中々ないと思います。
新しい才能を発掘するというこのミステリーがすごい!大賞にふさわしい作品だと思います。