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般若心経を理解したら阿含経典の仙尼経を読むことを推奨

般若心経の概要を理解したならば、次は阿含経典の仙尼経を読むことを強く推奨します。

仙尼経を理解すると、アビダルマ仏教、ナーガルジュナを含む初期大乗の連中が極めて重要な事項を失伝していた、あるいは理解できていなかったということを知ることができます

前提知識として知っておくべき時系列があります。

  1. お釈迦さまが仙尼さんというバラモンの質問に返答したエピソードが存在する

  2. その時の話が、阿含経典の仙尼経として残された

  3. 数百年経過して、アビダルマや説一切有部というグループが変なことを言い始めた

  4. 変なことを言い始めた連中への反論としてナーガルジュナが「空」を説いた

  5. 般若心経ができた

阿含経典の仙尼経が先にあって、その後にナーガルジュナと般若心経の順番です。歴史的事実の成立順序です。

そして阿含経典の仙尼経と般若心経の内容の相違点について押さえるべきポイントはこれです。

  • 仙尼経では五蘊を用いて輪廻転生を説いていて、輪廻転生からの超越の必要性を述べている

  • 般若心経では現世の自分の心と体の構成要素を五蘊から開始して要素を更に細分化して語っているだけである

御存知の通り般若心経には輪廻転生の概念は無い。
また般若心経は「空」の理論を述べているけど、人生における何かの解決手段は無い。

最後の段で「ぎゃーていぎゃーてい・・・」という梵語の大神呪を唱えることで「一切苦」を除去できると述べているけれど、その梵語の意味は「良い境界のあの世(彼岸)に連れて行ってください!」という内容であって、現世の我々の人生を好転させるための内容ではない。ということは、今生はあきらめてあの世に期待するという南無阿弥陀仏と唱えれば極楽往生間違いなしという思想と同じになってしまう。

仙尼経では般若心経と同様に人間は五蘊でできていると述べています。
また煩悩、カルマ、タンハーを「慢」という言葉で説明しています。
仙尼経でのお釈迦様の説明の要旨は下記の3点です。

①五蘊は「常(恒常不変)」ではない。
②「慢」があるから五蘊が集まって娑婆世界に生まれてくる
③「慢」を断ち切ったならば娑婆世界に生まれ変わってこない

①については仙尼経と般若心経は同じ。

②は般若心経には無い。「空」がどのような原理で五蘊を生み出すかについては般若心経では説明していないけれど、仙尼経では死後に「慢」が残っていれば「慢」を「相続」して新たに五蘊を生じて再び現世に生まれ変わってくると説明しています。「空」の現象を発生させる原動力は「慢」であると仙尼経は述べているわけです。

②のポイント
・般若心経は、この世の法則は「空」であると述べているだけ
・仙尼経は五蘊を生み出す原動力は「慢」であると説明

だから③仏道修行をして「慢」を断滅したら、再び凡夫としてこの娑婆世界に生じることはないと解決手段の道筋を述べています。専門的には、この段階になると四沙門果という別の境界の話に入るのですが仙尼経では、この説明は割愛されています。

この相違点がわかると「ナーガルジュナが原始仏教やアビダルマをよく理解していた」という現代の仏教学者たちによる人物評が、とても怪しいものとなります。

ナーガルジュナは「お釈迦様は輪廻転生をあるとも無いとも述べていない」と書き残しているらしいのですが、本当にそうだとするならば、「いやいやお釈迦様は明確に輪廻転生を述べてますよ、あなた一体何を学んだのですか?」という痛烈なツッコミを入れなければならない。

実際にはナーガルジュナが悪いというより、その前段階のアビダルマの連中がクソみたいな屁理屈合戦を繰り広げているうちに、仙尼経に書かれているような最も重要な本質的内容が埋もれて失伝したのだと思う。

「般若心経を正しく理解している」人には、このような歴史的経緯を理解したうえで阿含経典の仙尼経を読むと、アビダルマと初期大乗が何を失伝したのか、何を全く理解できていなかったのか、非常によく理解できるはずです。「お前たち、本当にこれを理解できなかったのか?」という呆れた思いと、これらを理解できていなかった偉大とされる古代仏教者の仕事のアウトプットに対して疑問を持ち、そんな仕事の延長線上に東アジアの仏教があることについて考えることもあるでしょう。
ですので、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

ちなみに「般若心経を正しく理解している」の判断基準ですが、例えばこのリンク先のnoteを読んで理解できることです。アビダルマ・説一切有部の流れから般若心経の「空」が生まれてくる経緯について、学問的な用語で説明してくれています。

漢訳阿含を学ぶ

下記に紹介する書籍は阿含宗開祖が極めて重要と考えている阿含経の解説本です。漢籍原文の阿含経、書き下し文、阿含宗開祖の解説という構成になっています。

上巻

阿含宗開祖がまず最初に知ってほしい「八法十六法」という修行法について書かれた経典がトップバッターとして掲載されています。もしどこかの仏教者が「仏教は自分が瞑想して自分が救われることであり、他者を変えることはできない」と主張していた場合、その説明は完全に誤りであるということを堂々と指摘できる阿含経典です。是非、読んでほしい仏教の本当の教えです。
また、今回のnoteで取り上げた「仙尼経」の解説はこの書籍にあります

中巻

「意生身」という、現代の我々が一般的に幽霊と思う存在をお釈迦様がはっきりと認めている経典が掲載されています。お釈迦様は霊魂を説かなかったという一部の人の説明は誤りです。それをこの書籍でご確認いただければ幸いです。

下巻

仏教は道徳・哲学であって、お釈迦様は輪廻転生も死後の存在も認めていないと本気で考えている人は、この本を読んで、今までの自分が何を学んできたのか、改めて考え直してみる機会を持ってほしいです。この書籍は、お釈迦様が認識している輪廻や死生観をテーマにした阿含経典が多く掲載されています。


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