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旬(10日)で竹になるタケノコ ヌチグスイ*⑲

子どもの頃からのタケノコ好きである。母の作る甘辛い若竹煮が好物で、食べ過ぎて、口の横にプツンと吹き出物ができるのが、わたくしの春から初夏にかけての恒例不調である。

もともと食が細いのに、何の栄養もない(と当時考えられていた)タケノコを食べ過ぎれば、アクやら多すぎる食物繊維で胃腸が荒れる。そのせいだとわかっていながら、食卓に1年ぶりに登場するタケノコの誘惑に抗えないわたくし。さらに、追い打ちをかけるように、母は煮汁がしみ込んだタケノコに衣をつけて、天ぷらにするのだった。油っこさまで加わったこれを翌日口にすれば、虚弱児の肌荒れは、もう必定なのだ。でも、好物だからやめられない。困った魅惑食材である。

そう思っていたが、タケノコは思っていたよりもずっと栄養のある食べ物だった。ここに、最新のタケノコに関する情報がうまくまとまっている。↓
なかなかどうして豊かなタケノコの栄養に改めてヌチグスイと認定したい。

https://miraisozo.mizuhobank.co.jp/wish/80154

特に、チロシンという白い結晶のようなものは、大変健康に資する物質のようで、注目成分とされている。期待される効能として、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防、便秘予防と列記されて、いい感じだ。他にもたんぱく質も豊富であったりと、なるほど、知人が猪にタケノコを横取りされている理由がなんとなく分かった気がした。

更に、タケノコにはたくさんの種類があり、秋に旬を迎えるタケノコもあることを初めて知った!

https://furunavi.jp/discovery/product/202112-bamboo-shoots/

ところで、食材としてのよいタケノコの選び方のポイントは、
ずんぐりとした形で重みがあり、切り口が瑞々しく、皮がツヤツヤしていて、根元のイボが濃赤色になっていないもの」だそうだ。

こうして購入する際のコツも知ったが、選ぶ間もなく、九州から朝採り直後に発送したタケノコ3本が、今朝届いた。まずは、重曹であく抜き(今年初チャレンジしてみたが、米糠よりも洗うのが簡単で助かった)し、台所にあった、干しシイタケのスライスを水に戻したものと、鰹節、小さめに四角く切った昆布と一緒に、酒とみりんと醤油で佃煮を作った。あったかご飯とおいしくいただいた。これがわたくしの本年の初筍である。

あとは、若竹煮、そしてそれのフリッター、筍ご飯も楽しみたい。合わせて、新メニューにも挑戦しようと探してみると、お手軽レシピを発見。↓

https://oceans-nadia.com/user/146865/recipe/410448

話は大きく変わるが、随分昔、戦後の暮らしぶりを表現する「タケノコ生活」という言葉を、耳にしたことがあった。もう久しく聞くことも口にすることも無くなった死語である。けれど、この頃は、戦争の足音のようなものがニュースから流れ始めていると感じたら、ふと思い出したのだ。タケノコの皮をはがすように、着物などの私物をドンドン売り払い、生活必需品を調達する貧しい暮らしぶり、それが「タケノコ生活」だったと。我が国ももちろんのこと、世界中の人々がそのような窮乏に苦しまないように、と心から切に願う。

また別の、タケノコ絡みの言葉。中国・三国時代の呉の国での、冬に孟宗が竹林で母の好きなタケノコを手に入れたという故事に由来する、「雪中の筍」「得がたいものを手に入れること」のたとえである。得難く、深い知恵と地道な努力を要する平和は、冬のタケノコのようだとわたくしは、考える。

平和の意味するところも、国が違えば、変わると聞いたことがある。争いの絶えない場所では、「戦争と戦争の合間のこと」だとか。平和が日常で、戦争が緊急事態とする考えが一般的な日本の感覚とは、真逆なのだ。

これほど認識の違う者同士が、今この瞬間に同じ星に生きていることの意味をかみしめたい。自分だけの尺度や、一方通行の情報を受け取るだけで世界をわかったつもりにならないように、この時ほど慎重であらねばと自戒する。平和と食糧調達についてアレコレ思う、今年のタケノコの季節である。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。




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