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ィイ・ヤシロ・チvol.67 天狗の御使い旅その6 富士山⑥
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青空に輝く河口湖畔を順調に進んでいくツアー一行。相変わらずお天気運は絶好調である。
お昼には、山梨名物のほうとうを、天下茶屋さんで美味しくおなかいっぱい頂いた。わたくしは、初めて口にするこの麺類メニューについてアレコレ質問したりするほど、元気になってきた自分に内心安堵していた。午前中に浴びた御神気のおかげだろうか、郷土料理をしっかりと堪能できた。
程よいマイルドなみそ味で、平たい麺に大きなジャガイモやキノコ、人参、菊菜、白菜がたっぷり入っている。おなかに優しく、心身がほっこりするものだった。
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エネルギーチャージのあとは、富士山の旅を全国に広めた御師の住宅を訪れた。御師は有名な神社につきものの職業だったのだけれど、明治政府に廃業されて今では現存する住宅などは貴重な歴史的存在になっている。
そのうちの一つが、河口浅間神社のすぐそばに在った。
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其処には様々な刷り物も置かれていて、御神像が描かれているものを分けていただいた。この図が富士信仰の在り方を示しているように感じた。ひとしきり展示を見学して学んだあとは、いざ神社へ。
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午後の1社目となる河口浅間神社は大きな鳥居を構え、その背後に大樹繁る神域が在る。こちらは「かわぐちあさまじんじゃ」と読み、歴史の深い古社だとのこと。
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境内には、多くの木々が繁り、何本もの大樹が聳え立ち、荘厳な空気を醸し出していた。御神気も鋭く、心身が引き締まる感じがすると同時に、生命力を賦活する心地よさも充満している。
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この社が富士山の大きな噴火の被害があった後の祭祀から始まった歴史を知ると、自然の脅威への畏怖と恭謙な心持ちが、此処を調えて保つ信仰心を長い時を経て醸成してきたのだと納得できる。
拝殿や本殿の設えからも、自然を制圧するのではなく、鎮めてもらうためには人の仔としてどう生きるかを、この地に暮らす人々が真剣に考え続けた賜物だろうと感じる。
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美麗な本殿を後方に回って見上げると、虹色の昼下がりの日光が降り注いでいた。本日の曇天の天気予報はいったい何処へ行ったのだろうか?
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神苑全体の木々がすべて巨木であるために、サイズ感覚が少しおかしくなってきていると自覚するわたくし。その木立の中に諏訪社や出雲社が存在感半端なく建っていた。
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本日2社目の諏訪社。諏訪の神様とはどんな存在なのだろう?出雲由来の龍蛇神信仰に武家社会の価値観などが付加していったという説。なるほど、そばに出雲社もおいでなのも、そのためか。
森林浴、御神気浴で旅の疲れも癒されたわたくしたちは、最後の社に向かった。冨士御室浅間神社である。
桜花に飾られる表参道は大変に有名らしいのだけれど、当日はまだ蕾のままであった。が、青空を背に立つ鳥居は十分に歴史の深さを感じさ、参道は清らかだった。
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表参道を、参道沿いの神様方にご挨拶しながら里宮に近づいていく。
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里宮は剛健な造りでありながら、カジュアルな雰囲気の境内。背後の河口湖からの開放感が感じられた。拝殿の後方に回ると、大事そうな祠がたくさん祀られていた。
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特に気になったのが、しめ縄で何重にも巻かれている此方↓後で調べてみると、瘧癘社。つまり「流行り病」のことなので、しっかりと封じ込めているということか。このような社は初めて見るので、興味深い。世の中を騒がせている疫病退治もこちらに是非お願いしたい。
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全体をじっくりとまわって、入口に戻った。たくさんの龍が彫り付けられている↓の宝珠をまじまじと眺めてから、本宮に向かう。
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本宮に着くと、なぜかフィナーレという言葉が頭に浮かんだ。赤い社殿が女神様らしく、お山をイメージさせる。
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縄文の遺跡もあるというこの社の祭祀は、元々石柱で囲まれた場所(おむろ)の中で執り行われたという、とんでもなく古い歴史を抱えている。確かにしめ縄の形も雨と雷を表しているようで、上古代人の祭祀観を示している気がする。現代に至ってこのような美麗な社殿に祀られている神様は、面映ゆく思われていないかしら?などと、余計な心配をしてみたり。
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こうして、二日目の旅のメニューも目出度く完了した。そうして翌朝、やはり雨の予報であったのに、帰路の新幹線からは見送り顔の富士山(ヘッダー写真)とほんの少し相まみえることができた。この三日間、天狗さんが団扇で雨雲を払ってくれたのか、いただいた御神水を何処に運ぼうかと思案しながら、大満足の富士山巡拝は完了となった。
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最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。