砂時計のじかん、紫陽花
砂時計の時間だけ、
いろんなところへとんでゆける。
一度、砂時計を逆さにすると、
今わたしに必要な場所で必要なものをみせてくれる。
今日から梅雨入り、
外では小雨が少しばかり音をたてている。
わたしは砂時計を静かにひっくり返した
万華鏡の中のような場所を通り、
すぅと何かにのまれていく
気づくと、
隣には大きなカタツムリがいた。
わたしは大きな紫陽花の一つに尻餅をついたみたい。
椿柄の着物を着た女性が、黒い着物を着た男性の持つ洒落た海松茶の番傘の中で楽しそうにしている。
血色のいい薄紅の唇が彼女の色白な手のすきま風から見え隠れする。
黒い着物の男性は、話を合わせながら椿柄着物の女性と距離を縮めてゆく。
わたしの首筋にこそばゆい何かを感じて、ふと上を見上げた。
雨粒がついて宝石のようにキラキラと光る大きなクモの巣がみえた。
少し手前に目をやると大きな蜘蛛が鋭い目と歯をこちらに向けている。
ジリジリとこちらに歩み寄る、
そこに先ほどの大きなカタツムリが殻で壁を作ろうとしてくれていた。
あめの音が大きくなる。
色とりどりの紫陽花がまた万華鏡のような模様になって、わたしに覆い被さる
目が覚めると、砂時計の砂の最後の一砂がおちるところ。
雨はやっぱり、さっきのまま、少しばかり耳に心地よい音。