マイクロノベル集「ほんものの話」
マイクロノベルNo.2012
ねえ、飼ってもいいでしょ。この虫はね、クツ飛ばしをしているぼくに、こう言ったんだ。「やあ、ぼくはクツの中にすむ虫。エサはクツ下の穴だよ」あれからずっとぼくの靴に棲んでいる。いまではすっかり成長が止まってしまったけれど、靴下に穴は開かない。
マイクロノベルNo.2013
どっちが生き残るか、勝負だ！ 「カラスに荒らされて困っている？ なら、我が社の『たたかうゴミ袋』。カラスごとき、右ストレートで一撃ノックアウト！」……という触れ込みだったのだが、類似商品がゴミ捨て場で潰し合う事態に。どうやって収集しようね？
マイクロノベルNo.2014
ちょっとロマンチックな話だったんだ。とある男が夜の湖面に映り込んだ星空を見て、家の池に星明かりに似せた灯籠を……。これがまずかった。偽物には本物を呼び寄せる性質がある。煙が雲を、蛙の声が雨を呼ぶように、湖と池の間に星の雨の川が架かったのさ。